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ご病気の調査役  作者: 新庄知慧
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あのエクササイズ美女が?

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音楽が変わる。


 聞いたことがある。これは、病院で体操をやらされたときに流れた音楽だ。


 ストリッパーは、音楽にあわせて、あのトルネード体操を始めた。はじめは、屈伸や腕ふりが多く、そのうち竜巻みたいに回転する奴だ。


 体操の先生は、調査役に教えた通りのエクササイズを行った。音楽は次第に激しく、興奮気味になった。回転しながら、脚をあげる。


 かぶりつきの観客たちは、必死で彼女の股間をのぞきこむ。彼女は汗を流し、それが飛び散り、観客の頭にまでかかった。


 そのうち、彼女は、ステージの上で、ブリッジの姿勢になった。肩で息をしつつも、そのまま、じっとした。ステージは、ゆっくりと回転する。


 そして、彼女の股間から、潮が吹き上げられた。勢いよく、鯨みたいに潮を吹いた。その液体は、宙に飛び、観客席にまで届いた。


潮をかけられて、ある観客は喜び、歓声をあげ、ある観客は驚いて悲鳴をあげた。あちこちで笑い声がした。


調査役は、そんな観客たちの様子を見た。そして、あんぐりと口をあけたまま、銅像みたいに静止して、舞台のヌードに見入る男に目をとめた。


あいつだ!


放心状態で舞台に見入っている、その口開け男は、紛れもない、調査役を尾行してきた、あの中年男だった。


しかし、もう中年男には、尾行者の面影はなかった。完全にストリップショーの虜になっていた。



 思うに、ここまで奴は調査役を尾行してきたのだ。全く気づかなかったが、あの喫茶店の前で思い出にふけり、尾行に気をつけることを忘れてしまった調査役を執拗に尾行して、ここまで来たのに違いない。


 しかし、ストリップが始まってしまい、それを見て、尾行どころではなくなってしまったのに違いない。


とにかく、だらしない表情で、その中年は舞台に釘付けになっていた。


舞台の上の体操先生は、放尿ショーを完了すると、立ち上がってにっこり笑い、お辞儀した。満場の拍手がわき起こった。そして、ゆっくり、ゆっくり、円盤の上を回り歩き、四方八方の客に投げキッスした。


 そして花道を歩いて、緞帳の方へ向かった。


彼女が花道を歩く間、緞帳は彼女を迎えるようにして、ゆっくり上がっていった。調査役は、その舞台と、かぶりつきに近い席の、あの中年男を交互に観察し、色々の感想を持った。


…まったくどうなってるんだ。あの病院の体操教師は、こんなところでアルバイトしていたのか。面が割れたらどうするんだ。実際、今、この私に面が割れてしまったぞ…


…それに、この中年の尾行者は何だ。まるでスケベそのものだ。警察か暴力団か知らないが、こんなことで、尾行がつとまるわけがない。


緞帳が上がると、そこは、昭和20年代の日本映画に出てくるような、東京の下町の風景だった。もちろん、色は白と黒しかない。モノクロ写真の世界だった。


 空は晴れ渡っていて、白い雲もぽかぽかと浮かんでいる。しかし、カラーではないので、青空は、目一杯の灰色の空だった。


その灰色の青空の下、白黒の下町風景の中へ、すんなりした女性の裸体が、ゆっくり、ゆっくりと歩いていった。女体だけが、天然の色彩で、むき出しの裸が強調され、ヒップの形のよさが目にしみた。


大昔の歌である「マイ・ブルー・ヘブン」が原語で流れた。


いやに凝った演出のストリップだな、と調査役は思った。


 だいたい、裸踊りなんだから、もっと気楽に明るくやってくれればいいじゃないか、と思った。かぶりつきにいる尾行男も、心なしか退屈しているように見えた。


 そして、あたりをきょろきょろと見回し始めた。自分の本来の仕事を思い出したのかもしれない。調査役は勝手にしろと思い、知らぬ顔をして舞台を見ていた。


裸の体操指導士が舞台にたどりついた頃、あたりが急速に赤く染まった。


 照明という照明が真っ赤になったのだ。そして、天井から、何か大きなものが・・・とてつもなく、落下してくる音がした。


 調査役は、度肝をぬかれた。


 ・・・・・つづく





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