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ご病気の調査役  作者: 新庄知慧
37/64

その声・・・どの声、何の声?

37


化け物みたいな赤ん坊だった。


本当に頭ばかりが、でかいのだ。しかも、かさぶたが一杯できている。


髪はまばらにしかない。


目や口や鼻もいやらしくて、赤ん坊と言うよりも、死にぞこないのくせに狡猾さだけはしぶとく残っている、老人の顔を思わせた。


いやな赤ん坊だ。


調査役はへきえきした。


よく見ると、父の後ろに素朴な服装の若い女の人がいて、ぴかぴか光るような笑顔を見せている。


母だ。


今はすっかり老人になって、髪は真っ白になってしまった、あの母が、清潔に貧しい笑顔で、とても幸福そうだ。


調査役は、また涙がでた。


なんで、こんな化け物の赤ん坊を、そんなに歓迎してくれたんだ。


いずれ恩知らずの悪魔の弱虫になるのに、父も母も、たいして金もなく、運にもめぐまれず、病気がちだったのに、なんで、そんなに喜んでくれたんだ。



調査役は目を覚ました。


そして、頬をつねった。



痛い。


目を開けて、あたりを見回した。カラーの画面で、物体はみな3次元のものだった。本当に、目が覚めたのだ。


もう昼過ぎだろうか。寝室の窓から、黄色いような暖かい日が差し込んでいた。


なんという夢だったんだろう・・・この間、実家で、未整理の古い写真が山とでてきたのを眺めたり、整理したりしたのを思い出した。


こんな夢を見たのは、きっとあのせいだろう、と思った。


写真のせいで、会ったことのないはずの人や、知らなかった記憶や出来事に、夢の中で遭遇したのだ。


写真のせいで、昼間会った人々が、写真にいた人に見えたのだ・・・・・?


・・・そんなことってあるだろうか。


やはり変な感じがした。


写真の人や、知らなかった過去の記憶が、調査役のもとに押し寄せてきたというのは、一体どういうことなのか。やっぱり変じゃないか。


ベッドから起きて、伸びをした。


とたんに、また、肩に痛み。そして鈍い肩こり。


まだ30代なのに、この体の痛みようは何だろう。調査役は、また嫌な気分になった。


洗面室で顔を洗い、歯を磨いた。



あの夢・・・一体、何だろう?


調査役は考えた。首をかしげた。そして空腹を感じた。


冷蔵庫へ行って、昨日の冷凍食品を出した。


ハムのたぐいだ。ろくに説明書きも見ずに、電子レンジに入れてスイッチを入れた。肉の入ったビニール袋を乗せたターンテーブルが、オレンジ色の光を浴びて回り始めた。


調査役はテーブルの前の椅子に腰掛けて、たばこを吸った。


そして、3分近く過ぎたころ、「その声」がした。



・・・・つづく



 

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