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ご病気の調査役  作者: 新庄知慧
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エクササイズの先生も・・・美女?

13



やっぱ、別の病院に入院しなおすか、


 と、言いかけて、パジャマの男は部屋の外を見た。顔がひきつっていた。病院関係者が、外にいるらしい。


すると、窓の外から、調査役の名前を呼ぶ声がした。


「?!」


調査役は驚いて、窓の外を見た。


「いけませんよ。健康診断にきて、たばこなんか吸っちゃあ」


白いトレーナー姿の女性が、病院の制服スーツを着た女性が喫煙室に入ってきた。


 身長は調査役と同じくらい。髪はさっぱりと短く、丸い顔、黒目がちの瞳、口はやや大き目で、まさに赤い唇、歯は真っ白。


 手足はすんなり、しなやかに長く、スマート。健康そのものという印象だった。


喫煙室にいたパジャマ姿の男たちが、まぶしそうに彼女を見上げた。


彼女は両腕を組んで、喫煙室の入り口のところに仁王立ちして、「めっ」という少し怒ったような顔で調査役を、


にらみつけていた。


「どなたです。私をご存知ですか?」調査役はきいた。


「ええ、もちろん」トレーナーの健康女は言った。「さあ、診察室に戻りましょう」


「先生?。今度は、何の先生です。体操ですか」調査役はたばこの火を消し、立ちあがりながら言った。


「体操。そうです。まあ、そんなものです」彼女は調査役を従えて、廊下を歩いた。「運動により、内臓機能の健全化、健康回復をはかります」


彼女は、はきはきと答えた。廊下を歩く彼女の後ろ姿は、たくましいと言ってもよい感じ…運動選手のそれであった。


そして、調査役は、また、この彼女にも見覚えがあるような気がしたのである。


 気味が悪かった。「会えば、すぐに、分かります」という言葉によって、何かの暗示にかけられているのか。会


う人会う人、みんな、過去の知り合いであるような暗示…。


しかし、この現象は、何もこの病院にきてから起こったのではない。


 朝の、あの電車での痴漢事件。


 あの関係者を見たときに、最初にそう思ったのだ。


 …これは知り合いだ。どこかで会ったことがある…。


 そう思うのだが、それが一体誰なのか、ついに思い出せないのだ。


いらいらと調査役は考えていたが、そんなことは知らない彼女は、歩きながらこれから何をするのか説明をした。


 それによれば、つまり、調査役のご病気に対抗するところの、健康に良い、エクササイズ…体操を教えてくれるのだという。


「ただ、あなたの場合、機能不全が著しくて、ちょっとした運動も危険な感じがしないでもないです」彼女は心配そうに言った。


「そうですか」


「そうです。気をつけて。でも、がんばって下さい」


彼女と調査役は、診察室に着いた。


さきほどの、食事療法の診察部屋からは、廊下を隔てた斜め向かいだった。


 診察室…というより、小さなダンス練習場みたいだった。


 床はてかてかと光る明るい茶色のフローリング、壁の1面に大きな鏡があった。


 一方の壁には書棚があり、棚の横には、どこへ通じるのか知らないが、木のドアがあった。


彼女は書棚から一枚の紙を持ってきた。


 それには、生活習慣病の予防に有効だという色々の体操のことがイラストで書かれていた。


「これを、やるわけですか…」調査役はそのイラストと説明を読んだ。


 腕を振り回したり、屈伸したり、首を回したり、わりと単純な運動にみえた。


 どちらかというと、老人ホームの健康体操に見えた。調査役は、自分はもう老人だったのかと少し失望した。


「では、私について、体を、動かして下さい」


エクササイズの彼女は、フローリングの部屋の中央に進み出た。


 運動の1番目をやりますから、と言って、腕をびゅんびゅんと回し始めた。


これが、第一運動…。調査役はイラストと彼女を見比べた。


 イラストでの印象より、よほど激しい運動に思えた。


 ときどき、手をあげたり、床にしゃがんだりする。それが、なかなかのハイ・スピードで行われた。


「…はあ。どうです。簡単でしょう?はあ、はあ」


運動を終えて、彼女は肩で息をしながら、調査役に言った。


「うーん。いや、難しい」調査役は腕組みした。


 じっさい、簡単でも、楽でもない。


 今行われた運動を、再現しろと言われても、とても無理だと思った。


「そんなこと、ありませんよ」彼女は言った。


「うーん。しかし」調査役は体操から話題をずらして質問した。


 「この病院では、健康診断した人に、いつもこんなに色んな診察とかアドバイスをするんですか。医者の問診


と、食事療法と、エクササイズと。ずいぶん丁寧な病院だなあ」


「あなたは特別ですよ」呼吸の整ってきたらしい彼女は言った。


「あなたは特別です。先生から聞いて、びっくりしました」


「何がですか」

「検査結果ですよ、もちろん」


「すごい数字?」


「ええ、まあ。こういう方って、どうしたら健康になってもらえるのか、すごく興味あるし、研究対象として、


ファイトがわきますよ!」


「そうですか。燃えてもらえて、それは良かった」


さっきの女医みたいなこと言ってらあ、と調査役は思った。


 しかし、それにしても、この女性もいい女だな。と調査役は思った。


 さっきの性的女性に対して、清純・健康派である。


 まるで誰かが企画してくれたみたいに、類型の異なる良い女が出てきた。


 最初の女医がおわらい系だったから、完璧に近い布陣ではないか。


…そして、見覚えのある女だ、この人も。どうして思い出せないのだろう。


 こんなにも物覚えが悪くなったのか。ボケが始まったんだろうか。



・・・つづく

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