仮想
そう、ここは0と1に支配された仮面舞踏会。
集まるのは数多くのマリオネット。
美しく、格好よく、可愛らしく。
様々な装いに着飾った彼らが交わすのは虚無な言葉。
性別を、年齢を、職業を。
隠し、偽り、その場かぎりの友好を築き上げて。
その人形越しに夜のひとときを共に過ごす。
元々表情のない顔に、動きの少ない身体に感情を乗せるのは人形から上へと伸びる数多の紐。
目の前に立って話す人形の紐を操る人の素顔は見えなくて。
此処で相手の素性を探るのは、自分の素性を晒すのは禁忌であるから。
自分の素顔を見れる人も、知る人も、この場所には存在しなくて。
だから此処はひどく心地よい。
此処でならば、理想の自分を演じることが出来る。
たとえそれが仮初の身体であったとしても構わない。
この世界なしでは生きていけない。
そう思ってしまうくらいには、もうこの世界に魅力され、この世界に生きる自分に酩酊している。
あぁ、なんて馬鹿らしい。
頭では理解していても、抜け出せない。
否、抜け出す気なんて、毛頭ない。
だって此処は。
私の作り上げた最高のマリオネットが踊る、極上の舞踏会なのだから。