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人間を知らない人間は人間を知る人間より人間たりうるのか

作者: ツギハギ

そこに人間が一人いた。そこに育児ロボットが一台あった。それは中々の高性能であり、人間が飲食歩行排泄諸々を覚えるには余るほどの機能を搭載したものであった。

そこは荒廃した世界の一つであった。そこは切り取られた空間でもあった。そこには繁栄を感じさせる溢れる草木が存在した。

人間は十一になった。人間は生活ができた。人間は飲食歩行排泄諸々を覚え、人間は度々思考して度々退屈した。

人間には境界がない。人間は自分の姿形を知らない。人間は何か固い感触に囲まれたこの空間から、外に出ていくことは一度もしなかった。

人間は思考した。人間は育児ロボット以外の存在を知らない。ただ育児ロボットが決まった時間に味のしない何かを運んでくることは理解している。

人間は知らない。人間は人間を知らない。近くで佇む存在が一体何なのかも、知る術は一つもない。

人間は人間を知らず、境界を知らず二十一になり、人間は事切れる。人間は直前に思考した。退屈とは何なのか。自分が二十一年間やってきた飲食歩行排泄諸々に意味はあったのか。

人間は知らない。生きる意味意義理由必要を知らない。人間を知る人間にも分からないそれを、人間を知らない人間が分かることはやはり無かった。

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