初めての○○
「悪い!待たせたか?交渉に時間かかっちまった。」
モルゾイさんがやっと帰ってきて軽口を叩く。
待ったよ!中々帰って来ないからテンプレも発生こなしちゃったよ!
「あれだけの規模の盗賊団相手に討伐を手伝ったってのに金貨1枚しか出さないなんてな~」
さもあらん、むしろ報奨金出るのか。やっつけたのは騎士団で私達は逃げただけよ?
それでも部屋にいた盗賊を倒したし置いていったアイテムで潤ったらしく報奨金としてもらえたみたい。
「んじゃ、嬢ちゃんの装備でも買いにいくか?報奨金も嬢ちゃんの為に使って構わないと言われてるし」
【やったねアカネちゃん、ただで買い物ができるよ!】
「うふふ、お姉ちゃんたら現金なんだから。」
「ん、何か面白かったかな?準備できたら移動するぜ」
とモルゾイさんは冒険者ギルドから出て行こうとし、慌ててアカネちゃんも後に続く。
【アカネちゃんも意思疎通で会話した方がいいね】
「・・そんな事できるんですか?(小声)」
【私の体に触ってれば(ほんとは履いていればだけどね)、伝えたいと思った言葉を伝えられるはずだよ。】
【あーっと、お姉ちゃん聞こえますかー?】
【こちら鷹1。感度良好、引き続き任務を遂行せよ。どうぞー。】
「えっ、任務!?あわわ。」
【あははー、アカネちゃんしゃべっちゃってるよ!ぶつぶつ独り言を言う女の子、ちょっと引くなー?】
【もーお姉ちゃんひどいよー!】
ぷんぷんといった感じで怒るアカネちゃんは全く怖くない、何このかわいい生き物。
「おーい、早く来いよー」
と少し離され先を行くモルゾイさんに声をかけられる。
こっちがずっと待ってたのにね。
少し歩いて着いたのは雑貨屋みたいなところ。
「よしここで適当に必需品を買っておくか、っと嬢ちゃんは何のジョブなんだ?」
【ジョブ?お・お姉ちゃんどうしよう?】
【取り敢えず魔術師とか言っておこうか。魔法使いたいし。】
「ま・魔術師・・の予定です。」
「ははは、まぁ何が合うかは追々探せばいいさ。なら、装備は・・どの道嬢ちゃんの体じゃ限られてはくるか」
そして色々悩んだ末にショートスタッフと皮のシューズを購入。
ショートスタッフ
・攻撃力+5
・INT+2
皮のシューズ
・DEX+1
なんでもっと良い物にしないんだとは言わないで欲しい。アカネちゃんはイチタの体を引きずって寄せるのが限界な力の持ち主なのだから。
スタッフてRPGだと初期装備で僧侶とかが使ってるイメージなのに意外に重い!そして長いのでアカネちゃんの体ではどっちが振り回されているかわからなくなる。
そしてブーツとかもあったけど結構皮厚で重たく、歩くどころか引きずってしまうレベル。レベルが上がって能力が上がれば解消できるのかな。
結果この様になりました。でもシューズは足首まであるタイプでワンポイント付いててかわいいんだ、似合うよアカネちゃん!
「後は防具屋と・・魔法屋はどうする?」
「あ、魔法屋は今はいいです。」
「魔法主体でいくんじゃないのか?あぁもう覚えてるのか」
「そ・そんな感じです。」
「ふむ、俺は魔法の事はよくわからないから何か聞くならゾーラの方に言ってみな。」
「わかりました、ありがとうございます。」
ぺこりとお辞儀をしてお礼を言う。
どの道MPが少ないから魔法は使えない。早くレベリングをしなければ・・。
と言ってる間に防具屋に到着。大体お店はこの付近に並んでいるみたいね。
「嬢ちゃんだと、この辺かな?」
と言ってローブを見せてきた。頭からすっぽり被れる所謂魔法使い的なローブ。
値段をちらりと見ると、金貨3枚とある。たかっ!
アカネちゃんも値段を見てびっくりした様子。それを見たモルゾイさんが言う。
「初心者が防御力を上げるのは基本だぜ。ローブ系はマジック装備だから自然と高くなるしな。ケンスケさんからも多めに預かってきてる。」
父グッジョブ!ウチはそんなにお金持ちじゃないのに・・。
というか少し分かりが良過ぎる?普通娘が冒険者になるって言ったらどうだろう・・。
ギルドに行くとは言ったけど冒険者になるとは言っていない。でもお金を持たせたって事はなるだろうと思ってたって事だよね?
一人息子が死んだばっかりなのに・・。
アカネちゃんも後2年で15歳になる。ひょっとしたら見透かされているかもしれないなー。
そして散々悩んだあげく買った物は・・あ、モルゾイさんは向こうで休んでます。
魔法のローブ
・防御力+15
・魔法耐性(小)
・MP消費減(小)
・寒暖差の調整(微)
ブラウンより少し明るめの色で腰辺りにラインが入っている。金貨3枚と銀貨60枚也。
こんなに高いのに性能はぱっとしないよね。
でも良さそうなのは金貨15枚とかする・・いつか買ってやるから!
そういえばお金について説明してなかったね。
小銅貨10枚で銅貨1枚。銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚。その上もあるらしいがまだお会いできる縁がない。白金貨とか言ったかな・・。
大体ランチが小銅貨6~700枚くらいだったから価値としては日本円と余り変わらないので分かり易くて助かる。
なので魔法のローブは36万円くらいだね。しばらく父に足を向けて寝られないわ。(無いけど)
「・・・やっと決まったか!じゃあ少し慣らしにと思ったがもうすぐ日も暮れるか。」
「試してみたいので少しだけお願いできますか?」
「そうだな、わかった!街の周りならすぐ帰って来れるしな。」
街に出る時に衛兵さんがいて冒険者のギルドカードを見せる。
モルゾイさんも何かを見せているようだ。色が違うけど上のランクの冒険者カードかな?
と、出入り口の門の向こう、壁に少し隠れるくらいに人影がみえる。
入る人かな?私達がいるから入りにくいのかもしれない。
アカネちゃんも気づいたのか道を開けようと門の外側に出ようとする。
「危ない!!」
モルゾイさんがアカネちゃんの前に飛び出してきて剣を振るう。
びしゃ!と嫌な音が鳴り、さっき見た人影は肩から腰にかけ斜めに分断されていた。
ソレは人じゃなかった。ゴブリンだった!
こんな近くにいるものなの!?これって街の安全は確保できるんだろうか・・?
「あー悪いね。始末はこっちでするから行ってらっしゃい。」
「わかった、もう日が暮れるからすぐ戻るけどな。」
と衛兵さんにモルゾイさんが声を返す。
門番ではなく衛兵だった事にも納得だね。多分ちょいちょい街から出て近くの魔物を倒してくれているんだろう。
ちなみに置いてきたゴブリンがもったいないと日本人的には思ってしまうけど、この世界では価値がない。
所謂ゲーム的な討伐報酬なるものがないから。ギルドで依頼を受け依頼主がいなければ支払ってくれる人はいない。
でも考えてみれば当たり前だよね・・街の外に出ればほぼ無限とも思われる数の魔物がいて全部に支払っていたらギルドは成り立たない。
むしろゲームではどこから来たお金が支払われていたのか不思議だったし。そういうものなんだろうと思って遊んでたけどね。
外に出て少し歩いたらびっくり!うじゃうじゃいたわ。
もうすぐ日が暮れるから巣から出て来る時間みたい。コワー。
囲まれたら色々終わるのでほんとに少しですぐ街に戻る。
あ、3匹ほどアカネちゃんも倒したよ!
モルゾイさんが1匹ずつ気が引かせて近づいたところを足をばっさり。
倒れたゴブリンに止めをさす簡単なお仕事でした、マル。
半泣きで必死にショートスタッフを何度も振り下ろすアカネちゃんも眼福でした。ゴブリンはペースト状になってたけど、なむー。