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異世界PAN2!  作者: まじてんし
29/29

魔石の処分方法

「明日の朝に良い依頼が無いかまた見に来ようね。」

「うん、良いのがあるといいねー。」


 アカネちゃんのギルドカードを更新し冒険者ギルドを出た二人。


「そういえば忘れそうになってたけどアカネちゃんのアイテムボックスの中にある魔石の処分も考えないとね。この国で魔石はどういった扱いなの?」

「えっと、それがわからなくって・・。この国にダンジョンがあるなんて聞いた事ないから魔石を売る人も見た事がないの。」

「そうなんだ・・。じゃあ下手に聞くのもトラブルの元になるねぇ。」

「取りあえず消耗品の補充と・・あ、馬具もあるかもしれないよね!」


 と少しがっかりしていたシェリスを励ます様に元気に話すアカネちゃん。


「そうだね、じゃあお店のある方にいこっか?」

「うん!」


 そして街を散策してみると大きめの道具屋さんがあったので入ってみる。


「へい、らっしゃい!」


 中々威勢の良い親父が出て来る。


「携帯食料とか旅の準備を整えたいんですけど・・、後それとは別に馬具を扱ってるところは知りませんか?」

「旅の道具はそっちの棚にまとまってるから見てくんな!・・と馬具はこの辺の小さい鍛冶屋じゃあ作ってないなぁ。どっかの商会に直接注文に行った方が良いんじゃねえかい?」

「そうですか。騎士団の馬具もいつも来てた商会に頼んでたもんなー。ちなみに相場とかはご存知ですか?」

「小ぶりの馬なら金貨10枚しないくらいか・・大きい馬なら12~13枚とか、まあ馬次第だな!」


 たかっ!さすがにシェリスもかんばしくない顔をしている。


「お金に余裕ができたら検討します・・。」

「シェリスさんごめんね。」

「大丈夫だよ、ちょっとお股痛いくらいで足腰の訓練だと思えばそんなに辛くもないしね。」


 こらこら乙女が人前でなんて会話を。道具屋さんの親父の方が少し恥ずかしそうにしてるぞ?

 そしてシェリスがさも思い出したかの様に話を続ける。


「あ、そういえば旅の途中で魔石の話を聞いたんだけど、この辺では魔石も買えるんですか?」

「へー、その小さいお嬢ちゃんは魔石も扱えるのか?この国ではダンジョンが無いから魔石がでない。売りに出すどころか持ってるならぜひ高価で買い取りたいくらいだ。」

「そうでしたか、次の旅で見かけたら手に入れてみようと思います。」

「そん時はうちに来てくれよ。」


 そんな会話をしつつ必要な物を買い込み店を出る。


「シェリスさん、高く買い取ってくれるって言ってたのに売らないの?」

「うん、滅多に出回らない物をあそこで売ったらすぐ噂になって、売ったのがボクらだってわかってしまうかもしれないから。」

「あ、そうだよね。まだ国境を越えたばかりだもんね。」

「それもあるけど女二人で魔石を持っていたら、更に持っていないかとかどこで手に入れたか聞き出そうとする人がでてくるかもしれない。余計な揉め事は避けたいからね?」

「はー、色々怖いね・・。」


 人ってお金の為ならある程度の事は簡単にするからねぇ。怖い怖い。



 そしてその日は適当な宿を探して休む事になった。




 次の日、朝早くから冒険者ギルドに来ていた二人は呆然と立ち尽くしていた。


「まさかこれ程とは・・。」

「・・シェリスさん怖い。」


 鉄火場かっていうくらいの雰囲気であの中にアカネちゃんを差し出す訳には行かない。学食の一日5個限定カレーパンを買いに来ている男子生徒達を思い浮かべて貰えれば近いだろうか・・?

 まあ今回は生徒ではなく成人男性な訳だから更に地獄感がひどい。


 この国は勇者が建国し、その時に冒険者ギルドの前身を作ったと言われていて冒険者ギルド発祥の地を自称している。

 そんな訳で夢見る冒険者がとても多いのだ。みんな良い大人だけども!


「もうほとんど依頼は残ってないね、後は下の方にある塩漬け依頼だけか・・。」

「下の方の依頼は何でみんな取っていかないのかな?」

「ああ、きっと達成が難しかったり採算が取れない物だからさ。」

「依頼する人も受ける人が居ないんじゃ困るはずなのに・・。」

「ずっとあるって事は依頼料を増やす程には困っていないんじゃないかな?」

「でも依頼が受けられないと困ったねー。」

「午後にまた来てみようか?」


 としょんぼりして冒険者ギルドを出る二人。

 そこでちょっと私から話しかけてみる。


【そこで提案なんだけど!】

「わわぁあ、とるい!何だよ急にびっくりしたなー。」

【ごめんごめん。時間が空いたようだったらさ、一度紹介状貰った商会に行ってみるってのはどう?】

【お姉ちゃんはあの商人さんが信用できると思うの?】

【正直まだわかんない。でも商売に関しては真面目な人じゃないかなって思った。】

「うん、るいがそう思ったならボクは良いよ!」

【私も!】

【それに魔石については買い取る準備をしているかもしれない。多分アカネちゃんがアイテムボックスから魔石を間違えて出すところを見られてた気がするから。】

【そんな、すぐ仕舞ったのに・・ごめんなさい。】

【いやいや、むしろそれで興味を引けたのかもしれないから良かったかもしれないよ?】

「よし、そうと決まれば商会がこの街にもあるのか探してみようか!」


 

 探すまでもなくカネゲーラ商会はすぐに見つかった。

 誰もが知っている様で一人に聞いたら場所を教えて貰えた。


「うわー、結構大きな商会だったんだね。これ出すだけで本当に大丈夫なのかな?」


 とシェリスが珍しく入るのに躊躇している。


「大丈夫だよ。行こう?」


 今回はアカネちゃんから入って行き、門番の人に紹介状を見せる。

 すぐさま別室に通されしばし待つ。お茶菓子も万端である。


 30分も待たずに村で会った商人さん本人がやって来る。やっぱり待ってたのかな?


「お待たせして申し訳ありません。おや、今日は巫女様はいらっしゃらないのですな?」

「はい、アリス達は昨日の内に街を出ました。私達だけでは不足でしたか?」

「いえ、もちろん私が取引をしたいのはお二方も同じです。ああ、お茶菓子もぜひどうぞ。この街は如何ですかな?旅の疲れをゆっくり癒せていれば良いのですが。」

「ありがとうございます。はい、良い街ですね。活気があり皆将来に夢を持って暮らしている様です。」


 とシェリスはさすがの応対を見せる。こういうのを見るとやっぱり偉い人相手に騎士様をしてたんだなーって思うよね。


「そうですな、そんな街だからこそ私達商人も商機を見いだせると言ったものです。今日この時みたいに。」


 ・・そろそろ出番かな?私は二人に話かける。


【アカネちゃん、少し代わって話をさせて貰ってもいい?シェリスも少し私に任せて貰っても良いかな?】

【うん、いいよー。】

【むしろ助かるー。実はこういう駆け引きみたいなのは苦手でね?】


 実はもなにも私もアカネちゃんも知ってたよ!

 少し心が軽くなり私は商人さんに話かける。


「やっぱり目星は付いているみたいですね。この間の村で?」


 とさっき私が言った予想が本当か鎌をかけにいく。


「はい、この国では魔石は非常に手に入れにくい物でとても高価なのです。」

「そのようですね。街の店でも聞いてみましたが、だからこそ女二人では売るのに躊躇してしまう物です。」

「でしょうなぁ。売ったのが女だとわかったら有象無象の人が動きだすでしょう。」

「ですが見ての通り私達は別に生活に困っている訳ではなく、これもすぐに売らなければいけない訳でもありません。それでもここに来た意味は分かりますか?」

「ほう、見かけ通りの可愛いお嬢さんという訳ではなさそうですな。つまり私が売るに足るかを判断しに来たという訳ですか?」


 私はそれには直接答えずに話を続ける。


「私達は値段よりも売り手の情報を守って頂けるか、今後安心して取引を続けられるかを重視しています。」


 値段は気にしていないと言いつつも、今後の商談の可能性をちらつかせる事でそれなりの値を付けないと今後の信用が得られないと暗に臭わせる。


「もちろん物や量にも寄りますが、私どもは十分に納得して貰える方法を提示する自信があります。」


 最もだと頷きアイテムボックスから魔石を出す。


「これくらいの量ならどうですか?」

「ふむ、結構大きい物もありますな。まず流通方法ですが、この商会は他国にも支店がありまして魔石技師が数人おります。その者を呼び寄せマジックアイテムにしてから売りに出します。外向けにはマジックアイテムを買って来て販売している風にすれば良いでしょう。」


 説明しながらいくつか手に取り物を確かめる商人さん。そういえばこの人の名前聞いてなかったな・・。


「値段としては・・そうですな、勉強させて貰った事も含めて金貨17枚でどうでしょう?」


 たかっ!もちろん商人さん達は更に利益が出るって事だから遠慮する必要はないんだけども・・本当に高いな魔石!


「・・・どうしてその値段に?」


 と、びびっているのをばれない様にその値段でも不服だくらいの声で言ってみる。


「しかしこの値段で買い取るのに一つ条件があります。金貨12枚分を私ども商会で買い物をして貰いたいのです。」


 不服だアピールは通じなかった模様。元々小市民だからね、仕方ない。


「金貨12枚も買い物する予定ないのですが・・?」

「おや、馬具をお探しでは無かったですかな?うちの商会でオーダーメイド致しませんか?」


 昨日の事なのにもう知ってるのね・・。商会の情報網怖い。

 でも馬具はシェリスが使う物だし聞いてみないと・・。


「少し相談しても?」

「もちろんです。では私は10分程席を外しますので・・。」


 と言って部屋を出る商人さん。


「どう思う?」


 と私はシェリスに尋ねる。


「いやー、魔石があんなに高いなんて驚いちゃったよ!ダンジョンから持ち帰ったら怖い人が来る理由がわかったね。」

「それも確かにそうだけども!馬具についてはシェリスに聞いた方が良いかと思って。どうしようか?」

「料金については別にいいんじゃない?予定外の収入で買う訳だから損する物でもないし。物については、もちろんこちらからの希望は出した上できちんとした物を作ってくれるかが今後の判断にもなるんじゃないかな?」


 確かにね、しかしシェリスはパチンコとかで勝ったら全部景品に代えちゃうタイプだね?


【アカネちゃんはどう思う?】

【うん、シェリスさんの意見に賛成。知らないお店で取り寄せるより良い気がするよ。】

「わかった、じゃあそれで行こう!」


 と言ったのが聞こえたのか丁度良いタイミングで商人さんが部屋に戻ってきた。本当に聞いてたんじゃないでしょうね?


「お待たせしましたか。相談は決まりましたかな?」

「はい、こちらで魔石の買い取りと馬具の購入をお願いできますか?」

「わかりました。これからのお付き合いの為にも最高の物を作らせましょう。」

「あ、念の為聞いておきますがオーダーメイドですのでこちらの要望に合わせた物を作って頂く必要がありますし、昨日のお店で聞いた話だと馬の大きさによって値段が違うという事でしたが金貨12枚で間違いないのですか?」

「それは申し訳ありませんが、オーダーメイドですので若干高価になってしまうのはご了承下さい。その分ご要望に沿った良い物ができると思います。逆にご要望を伺っても金貨12枚以上は頂きません。」


 にやりと心の中でアカネちゃんの黒い笑顔が見えた気がした。


「では後日職人さんと打ち合わせをする日取りを決めましょうか?」

「それには及びません、おーいキサラ!」


「はい、お父様。」


 と可愛らしい声が返ってきた。



 名前:スティーブ キサラ

 性別:女

 年齢:16

 種族:人族

 ジョブ:商人の娘

 状態:良好

 趣味:あみぐるみ



「私の娘のキサラです。商売のいろはは叩き込んでありますのでご安心ください。」


 む・娘・・だと?あんな悪役商人(偏見)からこんな可愛い子が生まれるのか!?というかスティーブて名前だったの?


「キサラさんが要望を確認して職人さんに伝えてくれるんですか?」

「はい、以前馬具の取引・調整にも関わった事があります。」


「では契約書になりますのでサインをお願いします。こちらが残りの金貨5枚になります。」


 契約書に余計な事が書かれていないか確認しサインをする。


「良い取引でした。また今後とも宜しくお願い致します。・・急ぎで申し訳ないのですが、私はこれから別の取引があるものですから失礼させて頂きますね。何かあればキサラに確認してください。」


 お忙しいんですね。こちらとしても悪徳商人(偏見)よりキサラちゃんの方が精神衛生上も良いですしね?

 ついでに私も引っ込みアカネちゃんに後はお任せする事にした。


 馬具についてはシェリスが中心に要望を伝えていく。

 そして大きさの段になったところでシェリスが人目の無い広めのスペースが無いかキサラちゃんに聞く。

 不思議な顔をしながらも裏庭に案内してくれる。

 シェリスはサクラを伴いついていく。


「じゃあサクラ、サイズを測るから元の大きさに戻って。」


 とアカネちゃんが言うと元の魔物の大きさに戻る。

 目を丸くして驚いているキサラちゃんが言う。


「ちょ、魔物!?こんなに大きいなんて聞いてませんよ!これじゃあ金貨15枚でも採算が取れるか・・。」

「だからさっき三人乗れるくらいの鞍が良いってボクが言ったのに。」

「ぐっ確かに、小さな馬で三人乗りとか何を言ってるんだろうとは思いましたが・・。」

「でも魔物だから蹄とかは大丈夫みたいだよ。」

「はぁ、それでも本当に高い勉強代になってしまいそうですね。」

「ははは、ごめんね!でも多分見返りは大きいと思うよ?」


 と笑うシェリスに毒気を抜かれたのか諦めたのか、やれやれとため息をつくキサラちゃん。



 採寸を終え昼食を一緒にとキサラちゃんを誘うも素気無く断られ、二人で昼食を食べ再び冒険者ギルドへ戻る。



「何も増えてないね。」

「残ってるのは『レッドドラゴンの牙の入手/大きさにより報酬額増減』、『妖精の困り事の解決/報酬は相談』、『オリハルコンゴーレムの捕獲/出現地域不定』等々・・。」

「とても一人、二人で達成できる任務じゃないね。」

「この妖精さんの困り事って何だろうね?」

「んー、これは困り事の内容より報酬じゃないかな?聞いてみたら割に合わないとかだったのかも。」


「いや、そうではない。単純に依頼を達成できなかっただけだ。」


 えっ、と予想外の方向からきた返事に驚いてそちらの方を向くと、

 フードを被った、でも隠しきれない美形の方が一人立っていた。


「こんなところに珍しいね、エルフだよ。」


 とシェリスが言う。エルフきたー!!?


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