アリが100
次の日は三人共お疲れだったので、ゆっくり休む事にした。
カエデさん達の馬車は昨日のうちに追いついて村に着いていたみたい。
朝食を食べながら次の目的地について話をする。
「次の関所を超えればジャパニアに入る訳なんだけど、少し関所が厳重になっているらしい。」
あ、やっぱりジャパニアに行くんだ。でも関所が厳重にってちゃんと通れるのかな?
「そういう時こそ妾の出番じゃな、関所の一つや二つ妾が居れば顔パスじゃ!」
「関所は一つなんですから顔は一つで十分ですよ。」
といつかの様に巫女ちゃんが話に入ってくる。
「でもアリスさんは何か目的があったんじゃ・・?」
「うむ、ターレの街を見に行かせた者が戻って来たのじゃ。もう行っても妾に何もできる事はあるまい。」
巫女ちゃんはターレの状況を知ったみたい。
暗くなりそうな雰囲気を察したのか明るい声で巫女ちゃんが話す。
「じゃがいつまで経ってもアカネは他人行儀な話し方じゃのう、妾の事はアリスで良いのじゃ。むしろアリス以外では呼んではいかん!」
「わ、わかった。じゃあ・・・アリス・・ちゃん?」
少し伏目がちに上目使いに巫女ちゃんの事を呼ぶアカネちゃん。
「・・・何か背中がぞくっとしたのじゃ。しかしそれで良いのじゃ!」
巫女ちゃんもあの扉を開きそうになっているな。迷わず行くといい。
「アリスちゃん達も一緒にジャパニアに戻るんだね。じゃあ今日はゆっくり休んで明日の朝出発しようか。」
「うん!」
「わかったのじゃ!」
今日は準備も兼ねてカエデさんと四人で村を周る事になった。
朝食が終わって村に出る準備をする為にそれぞれ部屋に戻る途中、アカネちゃんが巫女ちゃんに声をかけていた。
「アカネちゃん、仲良しになった記念に良かったら・・。」
実はパンツのストックが一枚できたので作ってアイテムボックスに入れておいて貰ったんだ。
しかしここで渡すとは・・。どれだけパンツが良い物かも力説してくれていた。後ろのカエデさんも興味ありそうだったから、カエデさんの分も作っておこうかな・・。
村はアムルとそんなに変わる事もなく、まったりおしゃべりしながら散策をする。
アカネちゃんと巫女ちゃんは気が合ったのかきゃいきゃい楽しそうにおしゃべりをしていた。和むなー。
旅の準備もしながら村を歩く。途中で馬具はないかと聞いてもらったけど無いみたい。
この時代で馬具は高級品らしく特注の一品物になるみたい。申し訳ないけどシェリスには今のままがんばって貰おう。
歩いていたら甘味処を見つけ、シェリスの尻尾がすごい事になっていたので入ってみる事になった。
みんなでお勧めの物を頼んだらすこく美味しかった。
何かの果物を絞った物なのか白っぽい甘い液体の中に桃や苺みたいな果物を切った物が入ったフルーツポンチみたいなデザート。
こういう知らない食べ物が出て来ると異世界って感じがするよねー。
その日は楽しく一日を過ごし、明くる日関所へと出発する。
アカネちゃんは馬車に乗り、シェリスがサクラに乗って脇を行く。
あ、サクラはお馬ちゃんの名前ね。べ・別に美味しそうだからとかじゃないからね?
関所は思ったより近くて昼前には着いた。
聞いた通りに関所は物々しい警備が敷かれていた。村長さんが慎重になってたのもこれが原因だったのかな?
でも巫女ちゃんが顔を見せると簡単に通れた。
まぁ私達も何か後ろめたい事がある訳じゃないけど楽に通れるなら、それに越した事はないしね!
「はー、やっとジャパニアに入れたね。これで少し安心かな?」
「ふふふ、シェリスさんこれからどうするの?」
アカネちゃんが馬車から顔を出してシェリスに話かける。
「うーん、後は特別決めてる事はないんだけど・・アカネちゃんのご実家に行く?」
「あれ、この国の出身ってお話したっけ?」
「いや、名前で多分ここかなって思ったんだけど違った?」
「ううん、あってる。そうだよね、分かるよね。・・・けど実家か。お爺様には報告はしないとかな・・置いてきた物も持ってきたいし。」
「取りあえず近くの街まで行ってから考えると良いのじゃ。妾は街まででお別れじゃが・・。」
「アリスちゃんはすぐに行っちゃうの?」
「うむ、関所を越えた事はすぐに連絡がいくじゃろうから神殿に戻って報告しなければいけないのじゃ。」
と今後の話をしながら最寄りの街への進む。
【実家には戻らない方が良いんじゃないかな?】
突然イチタが私に話しかけてきた。
【うぉい!何普通に話かけてきてるのよ!?】
【いやいや、あの時からとっくに気づいてたでしょ?】
【これってアカネちゃん達には聞こえてないの?】
【うん、るいだけに話かけてるけど・・。アカネには気づかれなければ聞こえないんじゃないかな?】
そう、ダンジョンでアカネちゃんが無双した後から私のスキルに「並列思考Lv1」が増えていた。
並列思考
・複数の思考を同時に行う事ができる。
このスキルが増えてから、るいとして考えている時にイチタの思考が入ってくる事が無くなった。
ひょっとして・・とは思ってたけど、ずっとしゃべらないから確信がなかったのよ。
【それで実家に戻らない方が良いって?必要だったのはイチタだし、あの爺さんはアカネちゃんに興味ないんじゃない?】
【だと良いんだけど・・父さんと母さんは僕だけじゃなくアカネもこの国から離したいと思ってたのかもしれない。】
まぁ色々きな臭い国ではあるしね。両親の気持ちは分からないでもない。
【今更だけどアカネちゃんとはイチタとして話はしないの?】
【うん、るいのおかげで落ち着いているけど、まだ結構危うい精神状態じゃないかと思うんだ。ボクが話しかけたら自分を納得させていた心のバランスが崩れるかもしれない。】
【そうかもしれないね。】
【今まで通りでるいに任せるよ。】
【りょーかい。】
と内々で話をしていたら馬車が止まっていて、何かを見つけたみたい。
「ジャイアントアントの行列だ!」
馬車の御者をしていた護衛の一人が叫んでいる。どれどれ・・
名前:ジャイアントアント
性別:男
ジョブ:探検家
レベル:5
HP:13/13
MP:0/0
STR:12
DEF:5
DEX:10
INT:2
LUC:1
状態:良好
趣味:甘い物探し
ジャイアントアントはちょっとした子犬くらいの大きさで、一匹ずつなら大した事はなさそうだけど数が多いなー。
「この方向は街に向かっているな。」
「カエデ様、これは街へは向かわずに直接神殿へ帰られた方が良いのでは・・?」
「馬鹿者!それでは街が大損害を受けるかもしれぬのじゃぞ!?」
と巫女ちゃんが護衛の人に言う。
そこへサクラに乗ってジャイアントアントの行列の先頭を見に行ってたらしいシェリスが戻って来た。
「ダメだね、方向を逸らせるかと思って先頭に大きめの木を置いてみたけど迂回して街へ進んでいっちゃう。」
どうしたものかと悩んでいるとシェリスが意思疎通を使って話しかけてくる。
【るい、ジャイアントアントはどれくらいいるの?何か他にもいる?】
【大体だけど百匹くらいはいそう、あと後ろの方に大きいのが一匹いるね。】
【女王かな?それを倒せば何とかなるかも・・。】
「アカネちゃん、女王がいるかもしれない。サクラで一緒に近くに行って魔法を放って貰って良いかな?」
「うん、わかった!」
とシェリスが言い、元気よく答えたアカネちゃんが馬車からサクラに飛び移る。
すぐさま行列の後方に行き、
『コールド!』
氷の塊がジャイアントアントの上に出現する。
しかし気づいたジャイアントアントはすぐ横に移動し避けてしまう。
名前:ジャイアントアント
性別:女
ジョブ:引きこもり
レベル:20
HP:60/60
MP:5/5
STR:45
DEF:32
DEX:5
INT:20
LUC:4
状態:良好
趣味:食っちゃ寝
称号:女王
ちっ、そんなに素早くもないのに!
と女王への攻撃を察知したのか行列の後ろの方の数十匹が一斉にアカネちゃんに向かってくる。こわっ!きもっ!!
急いでサクラに乗って逃げる。と思ったらシェリスが飛び降りた。
「サクラ、アカネちゃんを頼んだよ!」
了解!とばかりに一鳴きしてサクラが駆けていく。
アカネちゃんを追いかけてジャイアントアントが居なくなった後には女王が一匹。
一対一ならシェリスが負けようもない。一閃し倒れるジャイアントアント(女王)。
女王が倒れたのが分かったのかアカネちゃんを追いかけていた分のジャイアントアントは皆動きを止めた。
先頭の方の列はまだ街に向かっていたけど、気づいたアカネちゃんがサクラで進路の先に向かい地面の広い範囲をコールドで薄く凍らせたら進めなくなったのか三々五々(サンサンゴウゴウ)散っていった。
きーんこーんかーんこーん。かーんきーんかーんこーん!
「【鑑定】の経験値が貯まりました。まだ校舎に残っている生徒は気を付けてお帰りください。」
下校の挨拶か!!?最早レベルアップ告知でも無くなってるじゃない。
【鑑定がレベル5に到達しました。並列思考Lv2の一部と併合し上級スキルに移行が可能です。yes/はい】
おーーいっ!どっちも同じで選択肢無いじゃない!?
上級スキルならどの道移行はするけどさ・・。ポチ
【上級スキル識者への移行処理を行います。】




