よーく考えよー、お金は大事だよー?
次の日、早朝から治療の続きをする為に広場に向かうとそこはさながら野戦病院と化していた。
「うわー、思ったより多いですね。」
「はい、村の約1/3くらいの人が居ます。」
「道理で毒消しが足りぬ訳じゃ。」
毒にかかった人は恐らく体力の無い女性や子供の割合が多いだろう。
1/3もの女性や子供を失ったら村は閉じて残りの人は移住を考えるレベルだ。
この人数だと二人でも辛そうだねぇ・・。アカネちゃんにも手伝って貰おうか。
【アカネちゃん、キュアを使える様にしたから二人を手伝ってあげて?】
【わかった!】
そして早速毒を受けた人達を治療する三人。
巫女ちゃんから「お、アカネもキュアが使えたんじゃな。」という言葉も忙しさを言い訳にスルーし治療を続ける。
あ、アカネちゃんに魔法制御を一緒に付けるの忘れてた。
あれ?でも普通に治療をしているな。とアカネちゃんを見てみると、
名前:ヤナギダ アカネ
性別:女
年齢:13
ジョブ:ヤンデレ妹
状態:良好
趣味:G
スキル:コールド キュア 魔法制御(氷)Lv2 魔法制御(回復)Lv1 瞬動
テイマー:ムスタング
称号:姉信仰
経験値Pなし スキル0P
・・・既に魔法制御スキルが生えていた。
聞いてみると「何回か使ったら普通に使える様になった。」との事。しかもシェリスは数回使ったら休憩を入れているのにアカネちゃんは問題無さそうに治療を続けている。
気にしたら負けかな?
辛くなって来た人は回復するまで症状の軽そうな人に毒消しを使って治療をしていく。
巫女ちゃんはリカバリも使って貰わないといけないので、辛くなったら回復に専念してもらっている。
そうして三人でローテーションして治療を行っていると、何やら騒々しい喧噪が聞こえてくる。
村長がいる辺りかな?正直面倒の予感しかしないので関わりたくない・・。
「人命がかかっているのに、お金を優先するとは何事じゃ!」
と言った声がそこから聞こえる。見ればさっきまで休憩してたはずの巫女ちゃんの姿がない。
巫女ちゃんは面倒に飛び込んでいくタイプだよね・・。
アカネちゃんも休憩するみたいなので巫女ちゃんの方へ見に行ってもらう。
村長の前には如何にも悪徳商人といった雰囲気の大柄な男の人が居て、近くに巫女ちゃんもいる。
「なぜ毒消しがあるならすぐに出さないのじゃ!?」
「いや、そんな事を言われてもこちらも商売ですので・・。」
「困っている民衆を盾に暴利を突きつけ儲けを得ようとは・・!」
確かにその通りならひどい話なんだけど、雰囲気を見るとそんな単純な話では無さそうだよ?
落ち着いた巫女ちゃんが両方から話を聞いたところに寄ると、この見るからに悪徳商人な人は隣の国の商人さんで昨日の時点で既に商談はまとまって契約済みであったらしい。
それに毒消し自体の料金も確かに高いけど法外といった値段では無さそう。むしろこの事態だし少しくらい高くても当たり前で、売ってくれるだけ良い気がする。
昨日手元にあった毒消しは先に渡し、今朝になって残りを持って来たら村長から毒消しを返すから契約は破棄したいと言われたという。
うーん、商人さんはむしろ人道的な対応をしているね。というかまた私達が原因なのかな?
「なぁ村長、見れば少々高くはあるが法外という訳でもない様なのじゃ。この事態であれば適正と言ってもおかしくないじゃろう。毒消しはいずれまた必要になる、在庫は必要じゃろう。契約を破棄などせずとも買い取って良いのではないか?」
「いや、どんなお金であっても村のみんなのものです。少しでも無駄にする訳にはいきません。・・それに今後他の取引に影響が出るのも困る。」
ん、今後に影響?何か他にも取引優先権でも付けたのかな?
「揉めるならば妾達は治療を止めるのが良いのかの・・。」
「そ・それは困る!今は軽度とはいえ放置すれば治療して貰った者達と同じ様に重症になっていってしまう。」
「しかし妾達は報酬を貰っている訳ではないんじゃが?」
そう、私達は依頼を受け治療をしている訳ではない。別に損した訳ではないんだ。むしろ毒消しの在庫が増えるだけで得をしているとも考えられる。
とすると別の理由なのかな。他国の商人との取引を避けたいってところか。
私達が来るまではそれでも取引をしなければいけない状況に追い詰められていたって事だね。
お互い煮詰まってきたので良い時間だし一度別れてお昼休憩にする事にした。
シェリス達三人も村長が用意してくれたお昼を頂く事にする。
治療をしていて知らないシェリスにアカネちゃんが事情を説明してくれる。
「聞くと商人さんは悪い人じゃ無さそうだし、言っては悪いけど国境際にあるこの村にせっかく来てくれた商人さんなんだし繋がりという意味でも取引するのは悪くないと思うけどなぁ。」
とシェリスが言う。そこへ村長さんが本当の理由を言う。
「ターレの街が被害を受けたのは知っています。村の者はわかっていないが今この村は孤立している状態です。国がターレの街の復興に力を注げばこの村は下手をすると切り捨てられる可能性がある。」
ターレの街は無くなったから違うんだけど、まだそこまではわからないよね。
そして村長さんが続けて話す。
「今また魔物に襲われても当然隣の国が他国を助けに来てくれるはずもないし、下手したら取り込まれたり攻め込むチャンスと思うかもしれません。私達はじっと国の援軍を待つ他はない。切り捨てられる可能性を減らす為にも今は他国と仲良くしていると思われる原因を作りたくはないのです。」
話を聞いてみると村長さんの気持ちも分からなくもない。
私達が首を突っ込んでしまった事が原因でもあるし人肌脱ぎますかーと思ったら巫女ちゃんが言う。
「ならば妾達があの商人から毒消しを買おう。それを同額で村長に買い取って貰うというのはどうじゃ?」
「それならばこの村が他国の商人と取引した事にはなりませんね。もし可能ならばお願いします。」
ただ・・と続けて村長さんが話す。
「更に形の無い取引として今後もあの商人と継続して商談を行うというものも含まれています。」
「うーん、それは何とか諦めて貰うしかないのぅ・・。」
若干の不安材料を残したまま昼食が終わり、もう一度商人さんと話をする事になる。
巫女ちゃんから商人さんに毒消しを買い取りたい事を伝えた。
それでピンと来たのだろう、すぐに話に乗ってきた。
商人として契約は絶対だから破棄はできなかったけど、向こうも妥協点を探していたんだろうな。
巫女ちゃんはカエデさんがお金の管理をしていたみたいでお金を持っていなかった。よくそれで買おうとか言うなぁ・・。
アカネちゃんが毒消しの費用を支払おうと慌ててお金を出そうとし、あ、今間違えて魔石を出した。
毒消し自体はそんなに高価な物ではないので何とか支払い額を出したところで商人さんから突っ込みが入る。
「あー、それで後は継続商談権の話はどうされますかな?」
くっ、その話が出る前にまとめたかったのに・・。困った顔をするアカネちゃん。
そこで巫女ちゃんが商人さんに話しかける。
「そちも妥協点を探していたのであろう?この状況下じゃ、それは今回は諦めてくれんかのう。」
「承知しております。しかし私も商人の端くれ、手ぶらでは帰れません。」
「・・・・・」
ごくりと息を飲む巫女ちゃんに商人さんが意外な提案をしてくる。
「それではどうでしょう、この村とではなく貴女達と今後商談をさせて頂くという事では?」
「いや、妾達はずっとこの村にいる訳ではないし取引する様な物もないのじゃ。」
「そんなに難しく考えて貰う必要はありませんよ。私はジャパニアに本拠を置いている者です。何かあった時にまず私と話をしてみようと思って頂ければそれで十分です。」
「ふむ、妾達と繋がりが欲しいと。」
「まぁそういったところです。」
巫女ちゃんは二人を見る。
何かしろって言われている訳じゃないし、これなら問題ない・・のかな?
「わかったのじゃ、何かあったらじゃが・・その時には相談させて貰うのじゃ。」
「商談成立ですな。ではこれが紹介状ですので、その時にはカネゲーラ商会でお出し下さい。」
顔だけじゃなく商会の名前も悪役そのものだね。どうしてそんな名前にした?
つつがなく毒消しの取引も終わった。
「では、私はこれで・・。」
と言って商人さんは村を出て行った。
村長さんにお礼を言われ毒消しを買い取って貰い、MPも少し回復した三人は再び治療に戻る。
そんなこんなで全ての治療が終わった時には日も落ちて辺りは暗くなっていた。




