優しい嘘
「シェリスさん、次の街まではあとどれくらいあるの?」
「街って程大きくはないかなー、アムルって村なんだけど大体2~3日ってところかな?」
どうがんばっても今日中には着かないみたい。移動って異世界だと絶対ネックになるよね!
「急ぐ旅でも無いしね。天気だけは心配だけど。テントも持って来てないからねぇ。」
そうなのだ。ダンジョンに行くだけのつもりだったから何にも用意がない。アイテムボックスに寝袋が一つのみ。
雨が降ったら困るし女二人とか絡まれる予感しかしない。
「アカネちゃんの足もまだ心配だしゆっくり行こう。天気が崩れそうになったらボクがおぶって全力で移動するよ!」
確かにシェリスなら下手な乗り合い馬車より早そうだよね。
アカネちゃんもレベルが上がっているとはいえシェリスとは比べようもない。
名前:シェリス・ユドナー
性別:女
年齢:20
種族:犬人族
ジョブ:流浪人
レベル:56
HP:203/203
MP:30/30
STR:128
DEF:196
DEX:35
INT:42
LUC:12
状態:空元気
趣味:ご主人様と散歩(妄想)
スキル:ヒール・キュア・クリーン・瞬動
称号:街の甘味処全店制覇
何度見てもすごいね。一体今までどんな生活をしてきたのか気になる。
あと、やっぱりご主人様はまだ居なかったようね。
名前:ヤナギダ アカネ
性別:女
年齢:13
ジョブ:ヤンデレ妹
レベル:8
HP:22/22
MP:21/21
STR:4
DEF:8
DEX:5
INT:85
LUC:240
状態:足が気になる
趣味:G
スキル:コールド 魔法制御(氷)LV2 瞬動
称号:姉信仰
経験値Pなし スキル9P
アカネちゃんはレベル8まで上がった。結構がんばったもんねー。
何よりSTRが上がったのがうれしい!上がらない子なのかと心配しちゃったよ。
スキルが貯まってきたけど魔法とか覚えて貰おうかな?
まぁすぐに決める必要もないしアカネちゃんにも希望を聞いてみよう。
すぐの問題点としてはシェリスだね。
アカネちゃんと比べてPPの実入りが少ない!これから量産していく計画としては一人一人の底上げが重要なんだ!
・履いてもらうと時間ごとにポイント加算1P/1H
・強く意識してもらうとポイント加算5P/1H
・履いているところを他人に見られると加算(自分より少なめ)1P/5H
・何もなくても一日10Pずつ加算
・履くと健康促進。(あせも、腰痛、骨盤矯正等)
・寝ている間は履いている人の体を動かせる。
・起きると履いている人の意識が優先となる。(意思疎通の場合は任意)
・隷属化もしくはそれに準ずる状態であれば履いている人の経験値やスキルを振り分ける事ができる。(オート可)
・振り分けないでPPに変える事もできる。(逆も可能)
・生き物でないと履けない。
・履いている人とは意識で話ができる。(しゃべると頭の中で会話/思考は伝わらない)
これが今のところ分かっている条件ね。
やっぱり二番目の一時間で5Pっていうが最も効率的だよね。
この「強く意識」ていうのが意外にハードルが高い。中々パンツの事だけ考えて一時間過ごせる人っていないもんね。
一時間意識しろって言っても単純に見るだけじゃだめだし言われて達成できる物じゃない。
シェリスにも特訓をする必要があるね。早くご主人様って素直に呼べるようにしてあげないと・・。
人質事件の時に同じ部屋でアカネちゃんや他の人はイチタが履いていた私の体を見てたはずだけど、ぜんぜんPPは増えていなかった。
少なくともアカネちゃんは絶対見ていたはずだけどなぁ。多分、私よりイチタ自身を見ていたって事なんだろう。
・・・いずれパンチラ喫茶でも開こうかしら?
道中は長閑なものだった。魔物が湧いたりしないしね。野良魔物がいるかと警戒はしているけどもいない。
スタンピードの影響でむしろ空白地帯になったのかな?
途中でお昼を食べ少し休憩を取ったら、またてくてく歩く。歩くったら歩く。
馬に乗った人や馬車とは時々すれちがうけど徒歩で移動している人は見かけない。
逃げた人などから情報を得て状況は分かっているだろうから歩いてる人なんて私達くらいなものだよね。
そうして日が暮れる前に落ち着ける場所を探し、たき火を作る。
「夕飯食べたら今日はアカネちゃんから順番に仮眠を取ろうか。」
「うん、わかった!時間になったら起こしてね。」
一日中歩いて疲れていたのかすぐに寝息を立て始める。
「今日は・順番になんて言ってアカネちゃんに先に仮眠を取って貰うって決めてたんでしょ?」
「まぁね、でもこればっかりは仕方がないかな・・いる?」
「昼間からずっと付いて来ているのが結構いるけど、すぐに動きそうなのは前に4と後ろに2。」
「一応聞くけど魔物・・じゃないよね?」
とシェリスがアカネちゃんに聞く。
あ、今はアカネちゃんが寝てるから代わりに私が返事をする。
「一ケ所で止まったりしているし、魔物の動きではないと思うよ。」
「だよね。」
「いたた、やっぱりアカネちゃん我慢してた。足まだ結構痛いよ・・。」
「無理させちゃったかな。おんぶするから背中に乗って。」
「はーい。あ、温ったかい。」
「もう、変な事しないでね。じゃあたき火が消えたら一気に動くから。ナビ宜しく!」
「任されました。」
『コールド』
私が魔法を放つと疾風の如く走り出すシェリス。
「あそこの大きい木を右に行って、すぐ先にある大岩を目印に北へ150m。あ、100m付近から下が若干下り坂になるから気を付けて!」
「りょーかいっ!」
魔物も居ないのにたき火をしたのには訳があった。
初めから闇であったら散開し逃げ道を完全に塞ぎながら近づくだろう。
じゃあたき火があったら?そしてその火が突然消えたら?
答えはこの通り。たき火にいるはずの私達を確認しにくるよね。
暗闇の中で一度できた包囲の穴を塞ぐ事は難しい。空間把握で場所を特定し人が居ない場所をひた走る。
「やっぱり女二人じゃ良いカモだと思われるんだろうねぇ。」
「そりゃそうでしょ。私だってアカネちゃんがこんなところに夜居たら襲うわ。」
「なんかるいが言ってるのは違う気がするけど・・。でも危ないのは理解できた!夜移動するのも危ないんだけどそれ以上に早く村に行った方が良さそうだね。」
「私は楽して申し訳ないけども・・。」
「あはは、なるだけ歩き易いところをナビ頼むよ!」
こんな時まで爽やかオーラ全開である。私は元騎士様の背中で周りの警戒を続ける。
朝日が昇った頃にシェリスは歩みを止めアカネちゃんを降ろす。
・・っとアカネちゃんが目を覚ます。
「あれ?もう朝・・。私寝過ぎちゃった!?」
「いや違うよ。ちょっとあそこが個人的に寝にくかったから場所を移動したんだ。やっと満足できそうなところを見つけたから交代しようと思って起こしたんだよ。」
さらっと嘘までつく元騎士様。いや、イタリアンジョークってところかしら?
「そういえば場所が変わってる・・。あ、じゃあ後は私が見張るからゆっくり休んで」
【私が空間把握で警戒してるから】
アカネちゃんに話をしているのを気づかれない様にシェリスは目線を合わせず軽く頷く。
「3~4時間程寝るから起きたらまたボクの背中でゆっくりしてね。」
そうしてシェリスは仮眠を取る。どっちに言った言葉なんだろ・・?
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時間通りに起きてきたシェリスは大丈夫と言うアカネちゃんを無視して背中に乗せ、また歩きだす。
アムルの村にはその日の夕暮れ前に着いた。




