スタンピード
本当はスタンピードが起きているのに近づくなんて自殺行為も良いところだ。
でもそれが自分の街とあったらそんな事を考えて行くのを止める人なんて居ないよね。
こっちの世界の私の父と母だっているんだから。
シェリスは全力で走りきったんじゃないかという程早く街に急いでくれ夕暮れ前には街が見えるところまで到着した。
「アカネちゃんはここで待っててね。ボクが街の様子を見て来るから。」
「私も一緒に行く!足手まといにはならないから。何かあったら置いて行って構わない。」
「置いていくなんてしないよ、・・・でも。」
【魔物がたくさんいるような気配はしないよ。今なら大丈夫かも。】
「そっか、わかったみんなで行こう!」
みんなって。私を含めてくれている感じがシェリスっぽいね。
再びアカネちゃんを背負い、恐る恐る街に近づく。
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誰もいなかった。文字通り人っ子一人見当たらない。街は廃墟になっていた。
呆然と立ち尽くす二人。
見ると家が壊された跡や燃えた跡がある。これは今日や昨日では無さそう。ひょっとしたら私達が出てすぐだったのかもしれない。
体に鞭打ち、街を見て周る為引きずる様に動かす。
宿のあった辺りも焼け野原になっていたり、どれが宿だったのかも判断できない。
騎士団の宿舎があった場所にも行きたいとシェリスが言い向かってみる。
宿舎は領主や貴族の家が並ぶ方面にあったが、こちらもほとんど家の形も残っていない。
近くに行ってみるとたき火をしている人や何かを運んでいる人達がいた。
運んでいるのは・・遺体みたいだった。
たき火をしている人達は周辺の村の人達みたいで昨日様子を見にきてそのまま手伝ってくれているという。
仏様には悪いけど早く処理しないとゴーストタウンになってしまい付近の村にも影響がでるかららしい。
「あ、シェリスさんあそこに騎士の人達が集まってるみたい。」
「うん。でもこの街の騎士団じゃないね・・。」
それでも何か知っているかもしれないと思いたき火で休んでいる騎士にシェリスが話しかけてみる。
「俺達も今日の昼頃に来たんであまりわからないんだが、途中に会った逃げてきた人の情報からだと恐らくスタンピードの発生は三日前の昼くらいだな。運悪く冒険者もほとんど居ないタイミングだったとかで余り抵抗もできなかったらしい。」
「こ・この街の騎士団は今・・?」
「ああ、街の騎士団は間違いなく全滅だな。街全体をすっぽり囲む程の数で、中にはオーガとかトロルも居たらしい。逃げた切れた人も成人の男ばかりで家族連れや荷物を持って出ようとした人はだめだったらしい。そんな街から逃げ出す騎士なんて居ないだろう?」
「その・・・通りだな・・。」
両肩をがっくりと落としシェリスは俯く。
王様から任命された街を守り切れずに逃げ帰っても騎士に帰る場所はない。恐らく本当に全滅したんだろう。
とうとうアカネちゃんは泣き出してしまった。わかってしまったのだろう、さっきの話からすると母や怪我をしていた父は・・もう。
私も悲しい。けどぽっかり穴が空いたみたいな感じで大泣きする程の感情の揺れはない。
転生して薄情になったのかな。前世の方が長い分少し他人事に感じてしまっているのだろうか・・。アカネちゃんが泣いている中、そんな事を考えている自分が少し嫌いになりそう。
だって私は二人に手を差し伸べてあげる事も涙を拭いてあげることもできない。
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朝になった。アカネちゃんは泣き疲れてまだ眠っている。
昨晩は騎士団の人達(隣町の騎士団らしい)のたき火に混ぜてもらい身を寄せて二人で眠った。私がしっかり見張りはしてたからね、二人の貞操は無事守ったよ!
先にシェリスが起きてきたから、おはようと声をかける。
そういえば、もう少し街で何か残ってないか探そうかと思ってたら騎士の人達から止められた。
この街の状況が付近に伝わったらすぐに盗賊が来るからとても危険になるという。はぁーそういう世界だったよね・・。
落ち込んでいるシェリスに何とか話かける。
【シェリス、まだこんな状況でごめんだけど、早くここも離れないと危険みたいだよね。この後どうする?王都方面に行く?】
街を占拠した魔物達は一昼夜、街中を蹂躙し半分程度が王都方面へ向かい残りは周辺に散ったらしい。正直、今王都に行くのは危険だけれどシェリスの性格からすると行かない訳にはいかないだろう。
「いや、ボクはもう王都に戻っても何もできる事はないから。」
【生き残ってる事を伝えなくってもいいの?】
「うん、伝えても多分責任を取らされるか敵前逃亡と見なされて処刑されると思う。」
敵前逃亡はどんな国でも漏れなく死刑だね・・。しかしシェリスだったら責任を取りに王都に行くくらい言うかと思ったから良かった。
「ボクらしくなくって不思議だーって、心が漏れているよ?」
とくすくす笑われてしまう。ありゃ、伝わってしまったか。
「ボクが居なくなったらアカネちゃんが一人になってしまうからね。るいはいるけど文字通り頼りないしね?」
と元気をアピールする様にてへっと笑う。あーぎゅっとしてあげたい!
少ししてアカネちゃんも起きてきて朝ごはんを食べる。騎士の人達から肉のお裾分けがあって少し豪勢になったよ!
「ごめんなさい、昨日は寝てしまって・・。」
「あ、気にしないでいいよ。実はボクも寝てしまって、るいが夜起きててくれたみたい。」
「そうだったんだ、お姉ちゃんありがとう!」
【おかげで私は二人の寝顔をゆっくり見れたよー、ありがとう!】
「もう、お姉ちゃんったら!」
うんうん、今は無理にでも笑わないと。悲しい顔をずっとしていると笑い方がわからなくなっちゃうからね。
「これからだけど、ボクは隣の国に行くのが良いと思う。」
「えっ、シェリスさん騎士のお仕事は・・?」
「さっき少しるいには話したけど、ボクはこの街の騎士だからね。もう守る人はアカネちゃんだけなんだよ。」
「・・・うっ、ぐす。シェリスさん」
「あーごめん泣かないで、そんなつもりで言ったんじゃないんだ。」
「だぃじょうぶでず。だいでばぜんがだ・・ズズッ」
「うんうん、アカネちゃんは強い子だね!」
と布を出してアカネちゃんの鼻をかんであげるシェリス。
「それで、できればこの街の騎士だった事は隠していきたい。それに魔石の事もこの国で無ければ処分できるだろうし。」
【もちろんそれでいいと思うよ。私達は余りこの国の地理に詳しくないから任せてもいい?】
アカネちゃんも鼻をぐずぐずといいながら頷く。
「うん、じゃあ準備ができたら出発しようか!」
お世話になった隣町の騎士さん達にお礼を言い街を出る。
色々あった街だけど、こんな形で離れる事になるなんてね。
でも世界は広い。まだ私達が幸せになれるところがどっかにあるはずだよね!
一部完といった感じです。




