油断大敵
【お姉ちゃんシェリスさんに何したんですか?泣いてますけども・・。】
と交代の為に仮眠から起きてきたアカネちゃんが言う。
【違うよ!笑ってるでしょ?あれは喜んでいるんだよ。】
【え、笑ってる・・のかな?・・確かによくわからない表情だけど。】
【お姉さんが楽しんでいる間、私が見張りしてたから眠いんだ。少し寝るねお休みー。】
【あ、ちょ、後でちゃんと説明してくださいね!】
アカネちゃんがお姉さんを寝かしつけているのを横目で見ながら意識を落とす。
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三時間程寝て、目が覚めたらお姉さんも既に起きていた。
【おはよー、お姉さん!】
「おはよう、・・あれ精霊様?」
【あ、ごめんごめん昨日精霊って言ったのは冗談で私の名前は早乙女るい】
【精霊って、お姉ちゃんどんな話をしたんですか?】
お姉さんと話をしてたと思ったらアカネちゃんも普通に話しかけてきた。
【あれ?アカネちゃん話してるの聞こえたの?】
【いえ、シェリスさんが突然独り言を始めたからお姉ちゃんだなって思って。一緒に話したいと思ったら話せる様になりました。】
【そ・そう、まあ三人で話ができるのは楽だからいいか。】
何かアカネちゃんの力技に恐ろしい物を感じるけど、気にせず話を続けよう。
・・と思ったけど、せっかくなのでまずは今までの経緯をアカネちゃんからお姉さんに説明してもらった。
どうも私は説明が下手でねー。脇道にすぐそれちゃうし。
「腑に落ちないところはあるけども大体の状況はわかったよ。その体が本体でアカネちゃんのお兄ちゃんとお姉ちゃんが宿っていて、主にお姉ちゃんが話をしている訳だね。」
【うんうん、大体そんな理解で大丈夫!・・ほんとは一人なんだけど。】
【私はお姉ちゃんの為に何でもしてあげようと思って強くなりたいんです。】
・・なんだかアカネちゃんの思いが重いなぁ。嬉しいんだけどね。
「それでこのパンツはどういった事なの?」
【それを履いてる人とはこうやって話ができたり体の自由を奪う事ができるから、たくさんの人に履いてもらってみんなを下僕にしてしまおうという事なの】
「魔王か!?」
【シェリスさん、お姉ちゃんはこんな言い方しますけども実際私に内緒で体を使ったりした事はないですし、パンツ自体も履いてると体にも良いし楽だしそれ程悪くはないですよ】
「確かにるいに何もされなければ良い事ばっかりなんだけどねぇ・・。」
【ひどい、こんなにもパンツに情熱を捧げて良い物に仕上げたのに!・・あ、シェリスさん。ちゃんとご主人様って呼ばないと何もしてあげないからね?】
「だ・だから何かして欲しい訳じゃないからねっ。」
お姉さんが挙動不審になる。素直になれば良いのにねー。
【お姉ちゃんが望むなら私が・・】
・・・取りあえずお姉さんはパンツを履いていてくれるようなので一安心。
【お姉さん、今日はこの後どうするの?】
「うーん、というか何かるいにお姉さんって言われるのに違和感があるんだけど・・。」
【じゃあシェリスさんでいい?私の事はご主人様ね!】
「ご主人様はおいといて、ボクは呼び捨てでシェリスで構わない。ランランとかもそう呼ぶしね。」
そして続けてお姉さん、もといシェリスが話す。
「もっと気になるのはアカネちゃん!」
【は・はい!】
「アカネちゃんはお姉ちゃんのるいにも敬語で話すんだね。」
【あ、それは思ってた!話しやすいなら良いかと思ってたけどやっぱり壁を感じちゃうよね?】
「そうそう、もう色々共にしてる仲なんだし敬語は必要ないと思うな?」
と突然二人に責められ狼狽えるアカネちゃん。
【う・うん、二人がそう言うなら敬語はやめる様にしま・・する・・ね?】
【すぐ慣れるから大丈夫だよ、照れながら話すアカネちゃんもかわいいし!】
【お姉ちゃん・・ぽっ】
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「じゃあそろそろ行こうか、今日もまずは6階からかな?」
「あ、それなんで・なんだけど、昨日6階を回っててやっぱり強くなるには5階を避けちゃいけないんじゃないかって。」
「うん、アカネちゃんが決めたならボクは一緒に行くよ!」
「ありがとう、よろしくおね・・よろしくね!」
5階に上がって歩くとすぐに黒い影がいた。
壁の端の方にいてまだ距離があった為シェリスの剣は届かない。代わりとばかりにアカネちゃんが先制攻撃!
『コールド』
アカネちゃんの魔法で魔物が凍って・・て、何!?
魔物の手前に光の壁ができてアカネちゃんの魔法が弾かれる。
名前:ハイオーク・メイジ
レベル:10
HP:35/35
MP:7/10
STR:30
DEF:25
DEX:5
INT:10
LUC:1
状態:良好
趣味:覗き見
うわー遂にMPがあるオークきたよ。メイジなのに他のステータスも高いとかチートか!?
「ハイオーク・メイジか、ボクがいくよ!」
と一瞬で距離を詰めハイオーク・メイジを切りつける。
何度か光の壁に防がれた感じがしたけど、すぐに壁は消えてハイオーク・メイジを倒す。ふぅー少し驚いちゃったよ。
落ちた魔石を拾っていたアカネちゃんが何かを見つけたみたい。なんだろー?
・葉水ナイフ 空気中の水分を集め形にする。
「何か落ちてたんだけど、シェリスさんこれなんだろう?」
「すごい、ひょっとしてマジックアイテムじゃないかな?しっかり柄を握ってみてごらん。」
言われて柄を持つアカネちゃん。シュワーっと周りから何かが集まってナイフの形になる。
「ほえー、・・でもこれじゃ攻撃はできないね。」
とアカネちゃんが近くの壁をナイフで突くとパシャと形を失う。結果はちょっと濡れたくらい。
「攻撃力はないかもしれないけど、すごい価値がある物だよ。見て。」
とナイフの先を指さす。ナイフの先からはぽたぽたと水が落ちている。ナイフを下に向けると葉っぱに貯まった水が落ちる様にぼたたたっと地面に水溜まりを作る。
「ね?これがあれば水を大量に持ち運ばなくて良くなるからとっても助かるね。」
ほー、確かに便利だね。私は最悪アカネちゃんにコールドを使ってもらってと思ってたけどMP使うしね、こっちの方が優秀だね。
「あ、じゃあ今度はシェリスさんに使って貰えれば・・。」
と渡そうとするアカネちゃんの前にまた手を出し制す。
「ううん、前にも言ったけどここにはアカネちゃんの為に来ている。だから手に入った物はアカネちゃんが役立ててくれれば良いんだよ。」
「・・シェリスさん。」
「それに多分このドロップもアカネちゃんがPTに居たからじゃないかな?ボクはそんなに運が良くないから今までこんなの出た事ないもの。」
うー、相変わらずシェリスはかっこいいなぁ。絶対これからも一緒に居て欲しい!
「ところでるいは随分静かだね?寝ちゃったの?」
【起きてるよ!・・外では余り話しかけない方が良いかと思って。ほら、居ない人が話してると混乱させちゃうでしょ・・?】
「・・何だよ。そんなの気にする事ないのに。」
【あとシェリス。アカネちゃんは知ってるからいいけど、外で私に話しかけると独り言の多い痛い子になっちゃうから気を付けてね?】
「も・もう、誰のせいだと思って!・・でも他の人にはわかんないんだもんね。しゃべらないで話すって何だか難しいなぁ。」
その後戦利品をゲットして上機嫌な私達はテンポよく魔物を倒して行く。
けれど往々にしてそんな時は落とし穴があるもので・・しばらくすると周りに魔物の姿が見当たらなくなる。
「これは・・近くに上位種がいるね。アカネちゃん気を付けて!」
すると通路から魔物が二匹現れる。そしてもう片方の通路からも一匹現れた!
そう、丁度右に進む道と左に進む道の分岐点で遭遇してしまったのだ。
二匹の方はハイオークと普通のオーク。ハイオークは弓を持っている。もう一匹の方はレッドコボルト。
迷わずシェリスは二匹の方へ突進する。うん、アカネちゃんに向かって弓を撃たれたら大変だからね。まずハイオークを何とかしないと・・!
シェリスはまず手前のオークに一閃。「ガンッ!」という音が響き盾で弾かれる!あーもう、こんな時に限って倒しきれない!
その間に準備ができたのかハイオークが弓を放つ!危ない!!
「キンッ!」
小気味良い音がし飛んできた矢が落ちる。シェリスが剣で払い落としたみたい。・・そんな事本当にできるんだね。さすがシェリス、何でもありだなー。
そしてシェリスは倒せなかったオークを放置し、奥に居たハイオークの方へ向かう。
一方レッドコボルトはというとアカネちゃんの方へ向かおうとしてるけど近づけないみたい。見るとアカネちゃんの周りの地面がスケートリンクみたいに凍っている。なるほど、当たらないなら確実に当たる所へ魔法を使ったんだね!下手に踏み込んで倒れてくれればアカネちゃんのえいえいペーストの餌食だし、上手いなー。
レッドコボルトがそうやってもたもたしていると二匹を倒したシェリスがこちらへ来て一閃。敢え無くレッドコボルトも黒い霧へと消える。なむー。
「お疲れー、二方向から来たのはちょっと驚いたね。アカネちゃんが上手く時間を稼いでくれて助かったよ。」
「お疲れ様、シェリスさんも弓を剣で落とすとか凄いね!」
戦闘後に和む二人。
ぞくっと何か嫌な感じたする。空間把握で黒い物を一つ見つける。
ハイオーク・メイジが壁から少し顔を覗かせている。まだもう一匹居たんだ!ほんと良い趣味してるよ!
すぐさま二人に伝える。
【レッドコボルトが来た方にもう一匹居る、二人とも気を付けて!】
しかしシェリスは魔石を拾おうとしていたのかしゃがんでいてすぐに反応ができない。ハイオーク・メイジは杖を前に出して何かを打とうとしている!
近くにいたアカネちゃんが先に魔法を放つ。
『コールド!』
これで時間が稼げるかとハイオーク・メイジの方を見ると、昨日も見た光の壁があった。えー、既に壁を展開済みとか!これじゃアカネちゃんの魔法は届かない!!
アカネちゃんの魔法は敢え無く光の壁に阻まれ・・って魔法飛んでいってないな。
・・と思っていると大きな岩の様な氷塊がハイオーク・メイジに落ちて、ぷちっ。ハイオーク・メイジは霧へと変わる。
空間把握で回りを確かめるともう魔物は居ないみたい。
「アカネちゃんすごいね、あれ、どうしたの?」
「えっと、私も夢中で。光の壁があったから魔法は弾かれちゃうから、でもシェリスさんが危ないって思って。氷の塊を出せば邪魔できるかなって。」
とまだ興奮してるのかたどたどしく話すアカネちゃん、かわいい。
でもコールドは氷塊を飛ばす事はできなかったけど、出現する場所を上の方にすれば落とすだけでも十分凶器になるね。
「心配させてごめんね。ちょっと油断しちゃってたかな。」
反省しきりのシェリス。私ももっと早く空間把握で気づいて教えてあげられれば良かった。反省ー。
今度はしっかり早めに伝える事にするよ。
【私達が来た方の道から何か来るよ!人っぽい、二人。】




