がんばったら損をする?
この世界にはいくつものダンジョンが存在していて、最後まで踏破するととっても良いアイテムが手に入るらしい。
私達が潜っているダンジョンは未踏破らしく何階まであるのかもわからないみたい。
それでも先駆者達の努力によっていくつか分かっている事はある。
・基本的に魔物は発生したフロアから上下階には移動しない。
・安全地帯は偶数階の入り口付近にある。
・3階から罠が設置されている。
・5階ごとにダンジョンの特徴が変わり魔物も強くなる。
・5の倍数のフロアには魔物の上級種が発生する。
2階の安全地帯を素通りし少し歩くとオークとゴブリンが一匹ずついた。
すっとお姉さんが前に出てオークを一閃。そしてアカネちゃんに声をかける。
「アカネちゃん、そいつは任せた!」
「えっそんな・・」
突然の事に慌てるアカネちゃん。わー、そんな時間ないよ!?
『こ・コールド!』
と近づいていたゴブリンの顔が霜焼けになり、顔を抑えて暴れだす。
そこへアカネちゃんがショートスタッフを突き出す!
バランスを崩して倒れてしまえば後はいつものえいえいペーストの餌食である。なむー。
「もうゴブリン程度なら一人でも十分だね!」
「突然でしたからびっくりしましたよー。」
と肩で息をしながらゴチるも一人で倒しきった達成感からか嬉しそうな表情。
うんうん、アカネちゃんも確実に成長しているね!
お姉さんが前で切り付け、アカネちゃんもMPが回復してきたら魔法を使って援護する。
そんな感じで2階を周回し、いい時間が経った頃、
「じゃあそろそろ3階を少し見て安全地帯に行こうか?」
「は・はい。」
少し緊張した顔でアカネちゃんが返事をする。
3階への階段は何度も通り過ぎてわかっている。ここから近くだ。
「3階は何が変わるんでしょうか?」
「3階からはコボルトが出るよ。後は前にも言った様に罠が設置されている可能性がある。」
「コボルトと罠。」
「コボルトはそんなに強くないよ。少し素早しっこいけど、外で遭うみたいに大勢仲間を呼ぶとかはここではないしね。」
「罠はどんな物があるんでしょうか?」
「んー、実はボクも罠は引っかかった事がないんで詳しく知らないんだよね。特に3階では「ある」とは言われているけども引っかかったって人の話すら聞いた事もない。」
「それでどうやって3階にもある事がわかったんでしょう?」
「ねぇ?まーそれくらい滅多にないって事なんだけど、注意するとしたら変な壁を触ったりしないとか部屋の端とか変な所を歩かないとか・・?通路から通路を歩いている分にはまず罠はないと思うよ。誰か通ってるはずだからね。」
なるほど、それならそんなに怖がる事も無さそうかな?
「じゃあ行こうか!」
「はい!」
3階に降りるといつもと変わらない壁が続いている。
まー変わるのは6階からって言ってたもんね。
少し歩くとオークが1匹現れた。いつもの様にお姉さんが剣を一閃。
「がこん!」
あれ?オークは持っていたぼろぼろの木の盾の様な物でお姉さんの剣を弾いた。
お姉さんはそれを気にもせず、すぐに返す剣でもう一閃。オークは消えていく。
「やっぱり少し魔物のレベルも上がってるね。多く出てきたら少しアカネちゃんには持ちこたえて貰わないといけないかもしれない。」
あー、それでさっきのゴブリンを一人で任せてみたんだね。あそこでアカネちゃん一人で倒せなかったら今日はまだ3階に行くのを止めていたんだろう。
「はい、任せてください!」
と自分に言い聞かせるかの様に意気込むアカネちゃん。
「無理はしないでいいからね?2匹以上いたら全力で逃げてね。」
「わかりました!」
アカネちゃんは頭良いからね、そこら辺の判断は大丈夫そう。
しばらく進み、途中コボルトも出てきたが問題なくお姉さんが倒していく。
犬の様な顔をした魔物で背はアカネちゃんよりも低いくらいだけど小走りで移動してきて初めて見ると少しびっくりするかもしれない。
「うん、3階もそんなに変わってはいない様だから大丈夫かな。そろそろ2階の安全地帯に移動してご飯でも食べようか?」
「そうですね、少しお腹が減りました。」
そして2階に上がり安全地帯のある階段付近まで戻る。
部屋の中に入ると先客がいた。うわー、またあの三人組だよ・・。
私達が入ってくるのを見つけた三人組は、にやにやしこそこそと三人で話だす。そして、
「よっ、また会ったな嬢ちゃん!」
と驚く程軽い感じで話しかけてくる。
アカネちゃんは速攻でお姉さんの後ろに隠れる。グッジョブ!
「何か?」
とお姉さんが言葉少なに返事を返す。やったれーー!
「いえいえ、俺らはすぐに出ていきますんで。」
と本当に荷物をまとめ出す三人組。長い事居たのか結構ゴミが散乱している。
「そうか、追い出したみたいで済まなかったな。」
「いえ、そろそろ先に進もうと話していた所です。ところで騎士様は今日もお試しで来たのですか?」
「いや、今回はもう少し潜ろうと思っている。」
「そうですか、じゃあ俺らは行きますんでごゆっくり・・。」
と三人組は意外にもあっさりと部屋を出ていく。
「今回は揉めなくって良かったですね。」
「彼らは森には行かなかったみたいだな。」
「あ、そういえば冒険者ギルドで依頼を受けてた筈なのになんで・・。」
「依頼を受けなかったか受けて森に行かないか、恐らく後者だろうね。」
「依頼を受けてやらないなんていいんですか?」
「もちろん良くないし通常なら任務失敗となってペナルティだってある。けれど今回の依頼は特殊だからね。「魔物の間引き」って曖昧な依頼だから。」
「曖昧だと大丈夫なんですか?」
と不思議と言った表情で首をかしげる。
「がんばった。と言ったら確認しようがないだろう?」
「あ、なるほど。」
「でも逆に本当にがんばった人が居てもがんばりに対して報酬は増えない。依頼側の狙いも見えるから何とも言えないね。」
「みんなにとって大事な依頼なはずなのに、お互いが足の引っ張り合いをしているようで悲しいですね・・。」
「そうだね、もう長い事こんな感じだからどこを正せば良いのか誰もわからないんだよ。」
こういうのは日本でもどこでも一緒だね・・。
解決するには大物の鶴の一声か一度全部壊して作り直すしかない。
領主も含まれているんじゃ、残念だけど一人ががんばった程度ではどうしようもないね。
重い空気の中、携帯食料を食べお姉さんと交代しながら仮眠をし初日は終わった。




