運命の輪
遂に、一話に追いつく話です!最期まで読んでくれると嬉しいです。
「今は…コレしか持ってきてなくて…」
椅子に座らせた三枝の脚を持ち上げて、そっと腫れ箇所にシップを張る。
「取り合えずこれでガマンして!お姉さん…」
お姉さん…と口にした訳は、小屋に到着した際に…。
又も、おばさんを言いかけ彼女から袖を引かれ、ぶん!ぶん!っと頭を振って、オバさんは禁句と諭され、あぁ成程と理解した。
室内は、小屋の外見より手入れされている、机や椅子、その他家具、装飾品の類は比較的新しい、。
今度は、薬箱から消毒薬を取り出し机に置き、お互いで消毒し絆創膏を貼ってと告げてから。
こう言って…自分も席に着いた。
「二人とも綺麗な顔してるのに傷だらけじゃん!」
< あら♪お上手♪ >
マヤ きゃ♪…綺麗って♪
二人とも大変にご満悦な笑顔を見せる、が……。
「でね、おばさ………、っんうんっ!…お姉さん達の…」
< あぁ…も-ぉ!>
マヤ あぁっ、ばかぁ
「私は、倉崎三枝!でっ、彼女はマヤ! 年齢は不詳でいいわねっ!!」
「あ!あははっはいっぃ、俺は御鏡総一…」
しまった、やばかったと頭を掻く…。
「それと、っごほん!、御礼を言ってなかった…ありがとう」
マヤ うん、ありがとぅ
お辞儀するマヤ。
「本当に助かったわ、でさぁ……今、何か聞こうとしてた?」
「あっ、うん、えっと!あそこで模擬戦闘してたのってさぁ!」
「うん?」
「嘘でしょ!」
「えぇ?何で、その…嘘って想うの?」
マヤ ええぇ、うそぉ…
ばれちゃってる?
「何で?って、あんな処で模擬戦闘してるのって
見た事も聞いた事も無いし…、
倉崎さんのその服…そんなの普通は着ないでしょ!、
それと…空気銃て言ったけど、それ本物!だし!」
「………………」
「ぶっちゃげ、二人を見つけたのってさ…
銃装備連中が何か捜す処に遭遇して…
俺も捜したっ、んでぇ二人を発見っ、あはは」
「あははって、君…ねぇ…!」
マヤ 呑気に…
笑ってる場合じゃ…
「大丈夫!この辺は私有地だから、連中も来ない筈!」
「いや!そんな甘い連中では……」
「俺ちょっと、本来の目的を済まして来るから休憩してて」
「ちょっ!君!待ちな……」
マヤ 出て、いっちゃった…
三枝の制止を全く聴きもせずに、携帯用ポリタンクを両手に持ったまま肩で勢い良く扉を開け外へ走り去る。
窓際に歩き、桟に手を掛けて走り去る総一を見送りながら。
マヤ あの人、どこ行くのかな?
「もう!何て軽はずみな…話聞きなさいよ!、下手にうろついて連中とまた鉢合わせして捕まりでもしたら……」
そこまで言葉をにした時、ハッと不安が過ぎり深刻な顔付で考え始める。
< ちょっとぉ、雅か、あいつ等に私らの事を…
みっ密告に向かったんじゃ…ないでしょうね…!
あ!、ポリタンク抱えて密告とか、無いか…
ちゃんと怪我の手当をしてくれ…いや其れこそ…
私らを安心させといて足止め…とか?
そもそも、あそに薬を持って来れば済む事で… >
総一を疑う思考が巡る。
< けど、あんな歩き難い処からわざわざ背負って運んでくれた… >
長々とぼーっと考え込む顔が覗かれている。
マヤ じーっとっしてるけど
何を考えてるのかな…?
「あっ!ごめん!、ねえマヤちゃん、彼の事を信用出来ると思う?」
即答で頷く。
「そうね、あなたがそう思うのなら信用しても安心かな」
マヤ うん!うん!
ニコニコ笑っているマヤの顔を見て、総一への疑いを払い除けていると見事なタイミングで、当の本人が重そうにポリタンクをぶら下げ戻ってきた。
机の上にゴトン!ギシ、ゴトン!ギシっと机を揺らしながら置かれたポリタンク、中身は水のようで用事とは水汲みだったみたいだ。。
「ふぅー、流石に凄っえ重かった!!」
っと、両肩をごりっ、ごりっとまわしてからドサッと席に座り込む。
<にしても、呑気というか…馬鹿なのか肝が据わってるのか?>
「あっ、そういやぁ連中まだ居たわ!」
「えっ!何処に?見つからなかった?」
机に上半身を乗り出して詰める。
「うん、それは大丈夫!、けどさぁ倉崎さん達て何やらかしたの?」
「えっとそれは……」
「あの装備…、かなり本格的な軍用装備だよ、何処でもある代物じゃない」
<……、この人、誤魔化しきれそうにないか…
正直に言うべき?でもそうすると…巻き込む事になるわ…>
「倉崎さん…俺を巻き込むのを避けようと考えてくれてるしょ!」
「ええまぁ、…正直かなり危険な連中よ!、既に数名が命を…落としてるわ。
命を落としている、この言葉を聞いてマヤが思い出して悲しい顔をする、三枝の周りだけで二人が命を落としている、マヤと別行動をしてる北条達もどうなったことか…、然程に遠くではない場所で水汲みをしていたなら、当然この小屋は安全とは言えない。
「此処まで運んで手当てしてくれた事は本当に感謝してるわ、でもこれ以上は…御鏡君まで危険になってしまう、貴方は離れた方がいいわ…」
マヤ 私、これ以上…、誰かが、
私のため傷付くの見たくない…
三枝の後ろに立ち腕を掴んで総一に、私もと言いたげな顔をする。
これ以上拘ると危険だと倉崎三枝に言われたが、彼は全く動じる事無く二人に言葉を返す。
「俺が離れた後どうするの?その足じゃまだ歩けないでしょ」
「それは……少し休憩したら何とか…」
「その足の腫れ、一日や二日じゃ治んない、歩くとかとても無理だね!」
「ぐぅ…、じゃここで…迎え撃つわ」
ふぅーと息を吐く総一。
「反撃するにしても、何発も残ってないハズ!違う?」
「なっどうして知ってるの…?」
「そりゃあ、あんな装備の連中から逃走してたら、丸腰ならアレだけど反撃の手段有るなら使うだろうし、そうなると一発しか撃たない方のが考え難い!」
「………………」
「最初に俺が近寄ったときに、スライドさせる音が聞こえてたんだよね、なのに座り込んでた場所に薬莢が落ちてなかった。多分癖でやったんでしょ」
マヤ 私っ全然っ
気付かなかった…
「普通そんな事に気が回らないハズなのに、貴方て…」
「何者だ!って質問ならただの喫茶店の代理店長…かな」
「はぁ?喫茶店?……の店長ぉ?」
マヤ テンチョ-?
「親戚が海外へ行っちゃってて、その間の代理の店長、留守番ともいうかも」
「ぷ、御鏡君て、変わってるって友達から言われない?」
「変わってる、ならマシな方かな」
「あはは、やっぱ変わってるわ、で代理の店長さんは此処に何をしに?」
どうも、当初の話と論点とずれてきている…。
「この近くに湧水の箇所が幾つか在って、それを汲みに来ただけなんだけど、まさか女性が二人も湧いてるとは思わなかった。」
「あはははは」
マヤ ぷっ!あはは!
この人おもしろぉ
「って、えっと?何の話してたんだか、忘れちゃったじゃないもぅ」
「俺にこれ以上拘わるとヤバイから此処から離れろ、って話かな」
「そう、そうだった…、私達は大丈夫だから!今は散ってるけど仲間が居るから、恐らく彼らもこっちを捜してる筈、合流できれば反撃しなが…」
「それ…本当に信じてる?」
「え!それどういう意味?」
「んん━っ、悲しませたくなかったから黙っていよって思ったんだけど…」
「言ってよ何か知ってるの?ねぇ! ・ ・っ痛っ!」
マヤ あ……!!
三枝が机に両手を着いて立ち上がるが、足の痛みで床に崩れ落ちた。
総一とマヤが横に廻って三枝の腕を取って席に戻してから自分の椅子へ。
総一は教えるべきか悩むが、黙っていても余り意味ないなと話す。
「湧水の場所からちょっと離れた所で連中見つけて、傍に近付いてみた時に無線が聞こえた。」
「連中は何と?」
「一人は追走中に谷底へ転落、4人ダウン…っと」
「そんな!、嘘よそんな筈は…、、君は嘘つく様な人間じゃないわね…」
「仲間って何人居たの?」
「全部で9人…」
マヤ あの人も?… そんなぁ
「一緒にいた二人て…アレだったよね…って事は」
「私達の、…一緒に逃げた仲間は、全滅したって事ね…… なんて事…」
マヤ 私の……せいだ!私達を
逃がしたせいでぇみんなが…
両手で顔を覆い、更にドンっと両肘着いて悲しみに堪えていたが、マヤの様子が変なのに気が付き、三枝は自分の膝の上に抱き寄せて言い聞かす。
「大丈夫!大丈夫だから、貴女のせいじゃ無いから!
マヤちゃんのせいなんかじゃ絶対にない、だから心配しないで!」
大丈夫と繰返し、言い聞かせる三枝の頬にも
流れ落ちる水の雫を見た。
どの程度の期間を共にしていた仲間だったのか?、総一には知る由もないが、目の前で女二人が抱き合って涙を流しているのを視てしまっては、このまま立去れるハズも無く。
二人が落ち着くまでの暫しの時間を無言で堪えることを強いられた。
< 今何を言っても、慰めに成らないだろし…… >
◇
どのくらい二人で抱き合って悲しみを分け合ってたか?
抱きしめていた腕を解き、二人が席に座りなおした。
「落ち着いた?」
「ご、ごめんなさい!もう大丈夫だから」
マヤも頷いた。
「これで、どう足掻いても反撃は無理だわ」
「此処へは来ない言ってたけど、連中に法なんて意味ないそのうち来るわ」
足が痛みで動かせない以上、ここに居るしか無いが連中はそのうちここを見つける、仲間との合流が絶たれた今となっては応戦のしようがない、マヤが連れ去られるのは多分避けられない。
「駄目だわ、八方塞がり…打つ手無しだわ…」
黙って三枝の言葉を聞いていたが、総一が声をあげる。
「打つ手無しって、俺の存在を無視してるからでしょ」
「でも、君を巻き込むわけには…」
「まあだそんな事言ってる、じゃ彼女を連れ去られて良いんだ?」
「それは……駄目に!」
「駄目だけど、打つ手ないんでしょ?、だったら俺に任せるしかないじゃん!」
年上の言う事は素直に聞きなさい!っと、普通ならいう所なのだろうが、残念ながらというか総一は多分10才くらいは年下の筈だ。
「第一、もし逃げれて行く場所あるの?」
「他の隠れ家…グループの場所はリーダーしか知らない、だから無いわ…」
「じゃ取り合えず、ここを離れた後はうちにくるといい、店の二階に空き部屋在るし其処で暫らく身を隠すってどう?」
既に三枝の中では万策尽きているが、出会ったばかりの年下とは言え男である、マヤも居るし同じ屋根の下にはっと考えなくは無かったが、もう他に手が無い!。
「いいわ、それに従う…マヤちゃん?」
マヤ いいよぉ、一緒に!
御鏡くんのとこ行っぉ!
異議無しとコクリと頷く。
「じゃ決まりだね、取敢えずは何か食べない?腹減った!」
「あはははは!そう言えば朝から何も食べずだった…」
マヤ そうだぁ、
私もお腹すいたぁ!
「じゃ!缶詰しかないけど、これを食べ……
ピシッ! ボズッ!
ピシッ! ポズッ!
「狙撃!! 床に伏せて!隠れて!! 早く奥へ!! 」
小屋の外から狙撃された!水の入ったポリタンクを打ち抜かれ水が流れ出る!
三枝が腕で床を引き窓際に這いよる、壁に背もたれると床がキラッと光る。
銃撃の際に机から転げ落ちた鏡を取り、窓の外を映して見る。
ビシッ! バリッ-ン!
窓ガラスを割り銃弾が鏡を弾き割った!。
「確認できた?何人?」
総一の問いに、指一本立て一人と教える。
こちらには武器が無い!どうする?、だが相手はこっちが丸腰だと分ってない、少なくても一人は銃を持っていると認識している筈、丸腰がわかってたら既に突入されて終わっている。
鏡を弾かれた後からは攻撃が無く、静けさだけが不気味に続く。
ゴトッ!………ゴトッ!………ゴトッ!………ゴトッ!ブーツ音が響く音。
近くに、居る!、みなが、そう確信した!
張り詰めた空気が、流れ、心臓の音が体内で木霊する…。
ゴトッン!!………
入り口から進入する様な音が聞こえ、三枝がとっさに膝を着き銃を構えた!
ドガ!!ガシャン!!
窓枠ごと押し割り迷彩服が転げ入り、即!ライフルを構えた!
銃口は三枝を捕らえている、右手で短銃を男に向けて指を引く。
カシャン!カシャン!
銃弾の発射されない軽い音。
軍用ライフルの引き金に掛かる指に、グッと力が入り!
マヤ だめぇ!!
マヤが三枝をかばい前に出た!
引金の指が引かれた! プシュ!ブシュ!プシュ!
「マヤちゃん!!」
叫ぶ三枝に、崩れ倒れ掛かるハズが真横に転げ倒れた。
総一がギリギリのタイミングでマヤに飛びついていた。
「このおぉぉ!!!」
落ちていたガラス片を握り締め!迷彩服の左に深々と胸突き立てた!!
「ぐがぁ!」
短く吼えて倒れた、男は二度と動く事はなかった。
慌てふためき狂った様に二人に這いずり寄る三枝。
マヤの身体には異常が無かった、ホッとしたのも束の間、手が赤い!
< まさか!! >
横向きに倒れている総一の身体を返す。
三発の銃創が赤く染まっている、撃たれたのは総一である……。
「嘘、嘘、嘘、嘘、嘘!! 起きてしっかりしてぇ!」
服を引きちぎり銃創に当て、必死で傷口を抑える三枝…。
マヤ うそっ!私を庇って?
また…だ!いやだぁ!!
「俺…死ん…じゃう…の…かな…」
瀕死の重傷を負っている総一、擦れ声の衣服を開かれ
その身体には銃創が三発…。
三枝が懸命に傷口を抑え止血してるが、溢れ出る赤い血液は止まらない。
「駄目……血が止まらない…、このまんまじゃ…本当に死んでしまう」
御鏡総一の顔から血の気が無くなってくる…、傍に居たマヤが動きく
そっと片手を総一の胸に向かってひらき、もう片方の手を自分の胸に当てる。
マヤ 嫌だ!!、もう二度と私の為に!
マヤの姿はまるで、祈りを捧げて居る様な。
総一の口はもう動かない、顔は上を向いているだけで目に映っている筈の、
三枝の顔とその血で赤く染まった手、身体上に手のヒラをかざしているマヤ
その姿も認識出来なくなってきている。
止血の行為はもう何の効果も期待出来ない事はもう分かっている、それでも
ただ傷を抑え続けるしか手立てが無い…。
「ダメよ!死なないで!死んじゃだめ!お願い!」
三枝の懇願する声は既に言葉としては聞こえてはいまい…。
手をかざしていたマヤが閉じていた口を開いた。
マヤ もう…死なせない!
私の為に命を失わせる事は
もう二度とさせない!!
美しく透き通った音の波が辺りに拡がって行く…、
波は目には見えない羽の様に舞いそれは渦と成り…
3人を包み込む様に…そして譬えようも無く優しく。
出血を止め様と抑えていた手に違和感を覚えた三枝が鮮血に染まった手を退ける、手が離れた身体の血溜まりの中からゆっくりと鉛の塊が抜け落ちそして傷口が消えていく。
「そんな…嘘でしょ!」
繰り返す。
「嘘でしょ!そんなっ!こんな事が!」
目の前に横たわって死の淵に飲み込まれ間際だった総一の身体には赤みがゆっくりと戻り、触れている彼女の身体の表面部分には彼の体温が戻ってきているのを感じ始めていたのだ。
彼の胸に手を当てながら。
三枝はこの時、初めてマヤの秘密を垣間見たのだ。
< これが、マヤの隠された、秘密………なのね!
死に行く命に、再び火を灯す……
組織が必死に捕まえようとむする理由って
これだったのね……!!
三枝はマヤの方を再びみた。
一瞬!マヤの姿が美しい純白の羽を
拡げている天使の姿にみえた!。
読んでくれてありがとうございます!
次もよろしくお願いします。