襲撃~逃走
のどかな山荘で襲われ再び逃亡する場面です。
上手く表現出来たでしょうか?取敢えずは一度読んで感想を頂ければうれしいです。
慌ててテラスから部屋の中へ飛び込んでくる北条と高瀬の二人。
「ちょっ!何事!」
「奴らがきた!」
三枝が素早く立ち上がる。
「マヤ、立って!こっち!」
<奴らがきた>の言葉を聞いて途端、身体全体をビクっとさせるマヤを三枝は立上がらせ手を引っぱっていく。
台に置かれた彫刻の像を押すと床から地下へと進む階段が現れ、なかへと駆け込む。
短い通路の先にある部屋から声が呼ぶ、。
「はやく!こっち!」
最後に降りてきたマヤを奥へと進ませ三枝は階段の入り口をスイッチを入れ閉めてから追う。
小部屋の中には昨日のワゴン車の運転手ともう一人がモニターを見ている、そこへ北条以下三人が入って来る。
「どれだ?タク」
「ほら!これ見て…」
モニターに映された森林の風景だが…何か動いている。
「よし、まだ少し時間あるな…、そのまま監視してくれ上にちょい用がある」
そういって、ロビーへ向かった。
「これ…間違い無く…連中なの?、拡大出来る?」
「待って…これで…」
拡大すると銃装備の迷彩服姿の不審者が数名いるのがはっきり映り、木々の間を移動している。
「間違いない……わね!どうしてここが…?」
昨夜は絶対に尾行はされてなかったはず……と怪訝そうにモニターを見ていると北条が急ぎ戻ってきた。
「何してたのよ!」
「悪いな…ちょっと…」
「コウさん!こっちもだ!」
別のモニターを見ている後ろの男が呼ぶ、くるっと体を反転させ指されたモニターを確認する。
森林の木に埋め込まれている隠しカメラが、ログハウスの全方向から近寄ってくる迷彩服を映している。
「早いなっ、もう囲まれたか…!」
マヤ やだ…あそこには…
戻りたくない
不安げに三枝の後ろに隠れるマヤ、三枝が左腕でしっかりと抱きしめる。
「心配しないで…、渡したりしないから!」
黙っていた高瀬が北条に向く。
「どうするのかね?」
「あの装備と人数では…、まともに迎え撃つのは無理だな…」
「迎え撃つ?…やはり君らも…」
「ええまぁ…それなりには、ね」
ここで三枝が会話に割ってはいる。
「もう悠長に構えてる時間ないわよ!コウテン」
「そうだなっ!、ケン!タク!、データ全部消せ!逃げるぞ急げ!」
そう言われると二人は急ぎキーを叩き操作し始めると、北条は部屋の一番奥の扉を開ける。
「重装備の連中が来る!、余計な武器は捨てていけ無駄だ!」
バタバタと奥に居た数名が動き始める…と。
ドアを片手で開けたまま、振り返ってモニターの部屋へ顔を向ける。
「急いで!早くこっちへ、ミエ!先の誘導頼む!、俺はケツに付く」
「わかった…いそぎましょ!」
三枝がマヤの手を握り、彼の横をマヤを連れてすり抜けて最奥に開けられた非常階段へと向かっていく。
「よし!おわった!」
「こっちも!」
データ消去の操作を終えた二人も北条の横をケースを抱えすり抜けていく、最後に残った高瀬にも急ぎ逃げるように告げる。
「早く!高瀬さんも!」
「あ、ああ分った…」
戸惑いながら高瀬もドアを抜けた。
地上では迷彩服の一団が間近に迫っている。
素早く二人が階段を駆け上がり手早く合図、後続もバラバラと二階部のテラスへと駆け上り四方に散る。
別の一団が一階のテラス側へと廻り込むと、両方がタイミングを計り室内へと雪崩れ込んで来た。
室内を隅々まで捜索し始めるが、一人が無線で連絡する。
<<< 一階、二階部とも人影無し…隠し部屋があるかも、捜索続行する >>>
更に捜索しているがどの迷彩服の者も首を横に振り、<居ない>と。
隊長とおぼしき人物が全員に声を飛ばした。
「遠方から屋内に人が居た事は確認済みだ!人影が無いのは隠し部屋から逃走、
もしくは潜んでいるはずだ!…徹底して捜索をつ……… !」
言葉の途中で台上に置かれている像が不自然な感じな事に目を執られた。
隊長が像に近付き舐めるように観察していたが、持ち上げようと両手で掴むと。
ガコン
像に仕組まれたスイッチが入って床の扉が開いた。
「ここだ!、見付けたぞ!!」
散っていた迷彩服の隊員達が隊長の周囲へと続々と集ってくる。
隊長の足元には地下へ続く階段を見た。
「二人いけ」
偵察に行けと隊長が指示すると側近にいた二人が動く。
軍用ライフルを構え階段をゆっくりと両方の壁に別れて降りていく。
真昼間とはいえ深い山の中である、足元が見え難く何度も身体を大きく揺らしながら隊列は進んでいる。
最後尾を歩く北条は頻繁に後方へ目をやりながらの行進であった。
山荘を後にして約20分過ぎた頃、全体の足を止めさせる。
「待てっ、一度止まれ」
「何?こんなとこで…止まってる場合じゃ…」
言葉を遮り時計で時間を確認すると。
「多分…そろそろ地下室が見つかってる筈だ、足止工作もそんな持たない」
「だったら早く先に行かないとっ…」
三枝の意見は極当たり前ではある、ここで北条が提案を出してきた。
「連中はさっきモニターで確認したらざっと、12か3人だった…」
「ええ、12人です、間違い無い」
先程、複数のモニターの方にいたケンと呼ばれたが証言する。
「よし12だ!で恐らく…半分…くらい残して追ってくるハズだ」
「間違いないの?」
「多分…だが…」
「ここから本題だが、俺がマヤを…、ミエはケンと高瀬さんを、タクは俺と、あと残りで3組だ」
「ここから分かれるわけ?」
北条は掛けている鞄の中身を探りながら
「と、いや、…見つかってから…だが、お前これ着ろミエ」
マヤ 私が着てた…服!
マヤが着てた服を三枝に渡す。
「あ、また変装するわけね……あ!さっきの用って、それ取りにいってのね…!」
「うむ、でだ連中は間違い無く、マヤの確保を優先する筈だ」
「変装するのは…問題ないけど……何でマヤの確保優先すると分るの?」
まぁ、当たり前の疑問だが高瀬と約束している以上、馬鹿正直に言う訳にもいかず。
「連中…、女が二人居ると思ってない筈だ…、別人の女が変装して、
連中の多くを釣った方が…、それとも、マヤに又それ着せて走らすか?」
苦し紛れの理由説明だが、<マヤに着せるのか>のセリフで都合良く誤魔化せたようだ。
「そう……ね、わかったわ、私がそれ着て逃げる」
「それと、ケン!お前はこれ着ろ」
高瀬の着ていた白衣を渡すとタクの帽子を剥ぎ取って高瀬に渡す。
「高瀬さんはこれを…」
「う、うむ」
役割が決まったとこで三枝がマヤの服を重ね着しようとすると。
「何してる!、全部脱げ!」
パチーン!!
マヤ きゃーすごいビンタ━━━ぁ
「何考えてんの!変態!!」
「ば馬鹿やロウ勘違いすんなって!そんな色のズボン重ね着だともろバレだろ!!」
「あ、ああぁ…そうねゴメン!……、わ分ったから…みんなアッチ向け!!」
総員一斉に反対を向く……。
「あと…マヤはこれ着て…」
北条は三枝に後ろ向きになったまま、鞄の中から男物の大きな服を取り出し見せる、マヤがそれを取る。
マヤ それ…を着る?
「上にそれ着て…、出来るだけ男と誤魔化す、それとその髪を服の中に隠せ!」
マヤ あー、なるほどぉ
受け取った服に袖を通し、後ろ襟の内側へ長い髪を隠し入れた。
「隊長、下の部屋にも人影がみえません」
階段の下から偵察の報告が聞こえてくる。
「二人残って上を見張れ!、後は下へいくぞ」
と、階段を降りて偵察の待つ場所へ着た。
モニターが幾つも外の風景を流している、操作ボードを触りカチャカチャと……。
「隊長!この先に階段が!」
「む!… 一人残ってここを調べろ」
ざっと迷彩服の隊員を見渡して一番奥を指差す
「お前残ってここのPCの中身を探れ!残りは先だ、いくぞ!!」
残り9人が隣の部屋へ移り、最奥にある階段を駆け下りる。
降りた先…、短いトンネル内に走り抜ける追っ手の軍用ブーツの足音が激しく鳴り響く。
洞窟の様な出口を駆け抜けてくると、すかさず散開。
「こっちです!」
一人が逃走した痕跡を発見。
「必ず見つけ出せ、但し、少女は絶対殺すな!最悪でも怪我で止める事!!」
「高瀬博士と他は…どうしますか?」
「高瀬は出来れば確保…もし困難なら射殺だ、そう上からの指示だ!、他は無条件で射殺しろ!」
「以上!急いで追うぞ!!」
「了解!」
ライフルを両手で抱え広範囲に散開し、広く逃亡者達を索敵しながら全速で逃走者を追う。
三枝が無事に着替え終わる。
「よし、その脱いだのこっちへ…」
「何か!…言い方が厭らしいわねっ!」
服を渡すのを躊躇い…両腕で身体にギュッと抱き半身で背を向ける。
「……いいから!早く渡せっ!、こんな所に脱ぎ捨てたら着替がバレルだろっ!」
そういって無理やり三枝から取上げると鞄に押し込む!
「あ!もぅ!…その服…、けっこ高かったんだからねっ!」
「こんな時に…服の心配かよっ!」
「ふん!」
マヤ ぷっ、ミエねえさん…
なんか…かわいいっ
こんな時に笑えるとは意外とマヤは心臓が強いのかもしれない。
一方…、山荘の前に高級車が一台到着していた。
助手席の男が後部ドアを開け、銀髪の男が若いが鋭い目付きの若い男を連れ現れた。
「ほぅ…こんな山荘に逃げ込んでいたのか」
「はい、その様です」
「中々いい造りじゃないか!」
「 …………… 」
銀髪を先頭に次いで若い男が階段をあがっていく。
階段上がりきりテラスに足を踏み入れる、室内から迷彩服の男が一人駆け寄ってきて一礼する。
「報告かね?」
「あ、はい!…、地下に隠し部屋が!、監視装置やPCが在りましたが、
データ等…全て消去され、何もでません!」
「たったそれだけか!」
若い方の男が詰問する。
「いえ!、地下室に何処かへ通じる抜け道が!、隊長以下総員9名が追跡中です!」
「では…あそこで待たせて貰おうか」
ゆっくりとテラスへ移動して、一言。
「此処は実に良い眺めじゃないか!」
テーブルの椅子腰を落としてから風景を一望している。
「いたぞ!!あそこだ!」
遂に追跡者が逃亡中の隊列を捉えた!。
「後ろ…何人来てる?」
振り向き数える三枝。
「多分……9かな…、半分じゃ無い…ハズレたわね!」
障害となる小枝や草むらをかわしながら跳ねる様に走り続ける…。
「そら…悪かった…感だったんだ…たまにゃ…ハズレな時もある!」
プシュ!……… バズッ!
プシュ!、プシュ! ………… バズッ!バズッ!
鈍い音がして少し離れた木の皮が剥がれ落ちて飛び散った!、威嚇射撃だっ。
《やはり………威嚇か
…マヤに当てるの避けたな…よし》
脚を止め木陰に入った北条は銃を取り出し援護する、数発反撃して目配せでケンに行けと合図を送る。
白衣のケンは頷き三枝を連れ左方向へ走りだす。
「タク行くぞ!、マヤ真ん中で走れ…いいか?」
コクコクと頭を縦に振って答える。
「よし!お前らは右手だ……みんな走れっ!」
別個の方向へと下り斜面を一斉に飛び出す、勢いが付いて扱けそうになるも何とか駆け出す。
行き成り3方に標的が分散したせいで追っ手の脚が鈍る。
隊長がすかさず指示する。
「二人…真ん中を追え!」
二人の隊員が素早く北条を追い始める、次は逃げた2組を凝視して…。
「3人俺に付け左だ、少女を確保する!二人はあっちを追え!」
これで追走者も3方へと分散する、北条が後方と右で二人追ってくるのを確認した。
《よし!いいように散ってくれた…、
ミエ…上手く逃げてくれ》
倉崎三枝は高瀬と白衣のケンの3人で逃走中、
だが急斜面を駆け抜けるのは非常に困難で危険も伴う。
途中何度も、木に身体の各処を打ち付けよろめいては建て直しを繰り返し逃げる。
当然威嚇だが銃撃も受ける、反射的に避ける為蛇行し転倒、体中傷だらけになる三人。
《はぁ…はぁ…はぁ…はぁ、
しつこいなぁ ほんっと!!》
振り向き、振り向きと逃走するが。
「きやっあ!!」
脚を踏み外し斜面を滑降していく!かなり長距離を転がり落ちる。
やっと木に引っかり切り立った崖すぐ傍で辛うじて停止した。
直ぐに起き上がろうとするが。
《い…っ痛っ!!……けど…折れては無さそう…ね》
そこへ二人も跳ねながらが駆け寄ってきた。
「無事かね?」
「あ足が…」
「折れたのか?」
三枝は足を抑えながら答える。
「いえ、たぶん挫いただけ…でも」
この足ではもうさっきのようなバランスを取りながらの逃亡は無理だ。
追っ手が迫って来るのがバギバキと小枝を踏み折る音で分った。
「もーここで覚悟決めるしか…なさそ…、私はここで援護するから二人は逃げて!」
「馬鹿な!残るなら……」
「二人とも…待って!」
ケンが二人を制止して上方の様子を見ている。
「追って来ない…止まってる。」
女が滑り落ちていくのを見た時に、隊長が両腕で止めた。
「む!とまれ!!」
「どうも変だ…、何かおかしい…」
そういうと胸元から少女の写真を取り出す、
睨みながら落ちていった女の姿を想い返すと…。
「くそ騙された!こっちは偽者だ…」
写真をポケットに戻し指令を変えた。
「もうここは俺ひとりでいい!………」
最初に遭遇した地点を頭に浮かべて考えている、
右方向は間違い無く男の顔が見えたのを思い出した。
「真ん中だ!真ん中を逃走した連中をお前達も追え!」
最初に逃げた方向と時間を補正して4人の隊員はそっちへと追走していった。
「どうやら、バレたわね…」
木と小岩の陰から見つめていた三枝がつぶやいた。
「一人なら…なんとか…」
ケンが反撃の為に影から飛び出し銃を抜く…。
「待って!ダメ!戻って相手は…」
プシュ!
ターン!
二つの銃声が…!
眉間を打ち抜かれて斜面に崩れ落ちるケン…白衣に血が滲んでいく…。
「そ、そんなケン…… くっう!!」
「もう逃げれんぞ偽者女め!! 高瀬も出て来い!!」
「素直に出てきたら、助けてやる」
「ダメよ絶対撃たれる!」
高瀬は眼を閉じ何かを考えたが直ぐに開き。
「倉崎君…君達には本当に世話になった…ありがとう、君は逃げてくれ」
木陰から手を挙げ出てくる高瀬。
「だめよ!高瀬さ━━━っ
プシュ!プシュ!
一発目はコメカミをかすめたが二発目が高瀬の胸を撃ちぬいた。
「ぬおぉ!!」
隊長に崩れながらしがみ付き、崖っぷちへ押し込んだ。
「くそぉ!!放せぇ!!
放さんかぁ…うあわあああ」
「マ……ヤをよろ…しくたの………む
最期の言葉は崖下へと落ちながら…。
「そんなっ!! どうしてぇ!!」
挫いた足を引きずり、急な斜面を痛みを我慢し耐えながら落ちていった場所へ。
パラ…パラ…パラ…サザザザザ!ドサッ
小石が落ちた後に何かが滑り落ちてくる音と共に派手に三枝が斜面から転げ落ちた。
起き上がり、辺りを捜索する…居た。
痛みを我慢して必死に高瀬と迷彩服男の処へたどり着いた。
「高瀬さ………」
最期まで呼ばずに、事切れているのが見て取れた。
パラ…パラ……… パラパラバラ
後方で三枝がが落ちてきたのと同じ音が聞こえた。
クッ!!
反射的に銃を脇から抜き、後ろへ銃を構えて引き金を…………引くのを……引くのを止めた。
マヤ・・・!!!
よんでくれた方 ありがとうございました。
感想その他いただけると幸いです。
次は遂に主人公が登場する予定です!!