逃避中の想
何とか、悪戦苦闘して続きが出来ました。読んでくれると嬉しいです。
何度も読み返してますが、誤字脱字あったら…… ごめんなさい!!
救出劇を成功させ無事二人をつれだした一団。
万が一の場合に無備えそれぞれ別の方角へと逃走していた、
そして再び仲間たちと合流する為に集合場所へと向かっている最中である。
黒の車から移動した直後はまだ落ち着きが無かったが、黒塗りの2台が去った事とそれとは別方向へと走り始めると博士は何度も礼を繰り返し、少女も身体に抱きついて感謝の意を示した。
主賓の二人を乗せたワゴン車の中では、変装を解いて姿を晒した女が尾行者が後を付けてないか睨み続けていた。ずっと後ろを確認していたが、ここにきてやっとその警戒心を緩める。
奥に座らせた二人の方へと振り向きながら。
「もう大丈夫みたいね、それじゃあこれからの……
セリフが途切れた。
話を振ろうとした相手が二人ともぐっすりと眠っていたのを見て、笑う。
「あら!、まぁ…ふふ」
湾岸線の国道から交差した道路へと移り5キロ程走行した辺りに達した辺りで、
車がゆっくりと減速し左に寄っている、間も無く到着するのか?。
いやそうではなさそうだ。
やがて路肩に停止してギイィ!とサイドブレーキを引く音がすると、助手席から誰か降りて後部へと回り込んでくる影がカーテン越しに見えた。
ドアに手を掛けガチャと開ける音。
半開きのドアからは30代くらいの男が後部席へ顔を覗かせる。
「おぅいミエー、客人と話が……っと寝てんのかぁ」
「そっ、御覧のとおりよぉ━」
男は乗り込んできた。
男の名は北条隆典、女は倉崎三枝。
「連中から離れたので緊張が一度に消えたのねぇきっと」
「くそっ肝心な話聞かれないとは意味ないな使えねえ」
こっちの苦労も知らないでとばかりの言動、三枝は不快感を示す。
「ちょっとお━━、そんなの明日で良くない?」
眉間にしわ寄せ睨見返す三枝!元が綺麗なだけ怒ってもそれはそれで…。
「おいおいー、そんなムキになって怒んなよっー」
「この二人がどんなヤバイ処から逃げてきたのか!、分かってるでしょ!」
「わかっ分かったって、悪かった」
手のひらを三枝に向けて降参の仕草だ!。
ぷいっと顔を背け三枝は中腰のまま移動して少女の真横に腰を下ろす、乱れた髪にその細い五指を差し入れてそっと掻き揚げる…手のひらの上に髪をすくい見つめる。
━━ この子の髪…、羨ましい位に綺麗で柔らかなのね… ━━
男の眼から言わせて貰えば、三枝のそれも綺麗な髪ですねっと、
言われそうなものであるのだが。
しばし髪を梳いてやりながら眺めていたが、ん!と停車したままな事に気づくと。
「それより━、早く車を出してっ!」
「そ、そうだった!、早く合流しないと」
三枝の行動をぼけっと見ていた北条だが、ドアを飛び出し助手席に急ぎ戻っていく。
じきに、バタン!と勢い良くドアを閉める音が聞こえてきた。
助手席に座り、シートベルトを締めようと、右に向くと。
運転席の男はハンドルを握ったまま機嫌良くヘッドホンで曲を聴いている。
その指はリズムに合わせステアリングの外側を叩いている、オマケにシートから少し浮き上がる程に体を縦横無尽に弾ませている。
目を閉じたままでのこの情態、かなりのご機嫌である。
聴いているのはロック系か?、つまりだ…戻ってきたことに気が付いていない…。
北条は右腕を伸ばし頭頂部のガイドを強引に握り引き剥がし、シート後に放り捨てる!。
「何時まで聞いとんだ!!、出るぞ…出発だっ!」
「どわっあ、はっはい!」
「ったく」
急いでキーを回してエンジンを掛けアクセルを踏む、慌てたせいで強めになった。
ジャリ!ジャリ!ジャリッ!と路肩の砂を撒き散らしワゴン車が走り始める。
「……にしても、ミエのやつ!…、自分だって…大してしらねぇだろが!…… 」
「えっとお…、何かいいました?」
先ほどの醜態でばつが悪く、
小声で何か指示されたと勘違いしてちらちらと北条に顔を向ける。
「何でもない!独り言だっ!、ちゃんと前向いて運転してろ!」
勢い良く腕を突き出し真正面へ指す!
「はっはいぃっ!」
窓際に肘を着いて窓の外へ顔向ける、
何を観てるわけでも無いが……じっと視線を飛ばしながら。
《ってか運んでたのは男一人と確か、
そいつが持ってる荷物じゃなかったか?》
再び走り出してから別の国道へ載りそのまま西へ一時間走った頃?位だろうか、ワゴン車は再び国道から外れ一般道に入り進路を北へと転換させる。
どうやら山中へ向かっている。
キツイ上り勾配が終わり無く続いていることで分かる、まだ麓付近では住宅街が続いてたが狭い道に入るとやがて無くなって変わりに連続したカーブが出現した。
数十年前はこのタイトで連続したコーナーを攻めて楽しんでいた若者も大勢居たらしいが、現在ではその影は見られない。
車内で揺られながらじっと少女を見つめている、そして北条と同じ疑問が浮かぶ。
《 高瀬博士は予定通りだけど 》
《 とんでもなく大変な物て…何かしら?、
ポケットにマイクロチップを持ってる? 》
その急な九十九折を走っている内、左右に振られる事で寝ていた老体が目を覚ましたみたいである。
最初は車内を見回していたが監視役が居ない…。
《 こ…ここは?…そうかあの車では無いな…、
そうだ、逃げれたんだったな 》
少女の方を見ていたが、視界の中で動く物に反射的に視点が移り、三枝は博士が目を覚ましたのに気が付いた。
「あ…あら…目が覚めちゃいましたか、
ふふふっ、到着するまで寝ていて良かったんですよ」
高瀬博士は着ていた白衣に目をやり、
もうこれは用が無いと白衣を脱ぎ捨てシートに置くと。
「あらためて礼をしたい、本当にありがとう」
座ったままではあるが両脚に手を着き深々と頭を下げる。
頭を上げ、正面のシートで寝ている少女を優しく見つめながら…。
「この子は…もうしばらく
寝かせて置いてもらえるだろうか?」
「ええ、もちろん構いません、
そうね…着くまで寝かせてあげましょ」
少女の寝顔を見ていると、初めて彼女と顔を合わせた時が思い出された。
━━ 数年前 ━━
床から天井まで一面がガラス張りの部屋、4人の男が近付いていく。
「さてドクター、彼女がそうだ、見たまえ」
一番後方に控えていた黒服の男が白衣の紳士の背中を押し進める。
無理やり押されてよろめく、躓きかけながらガラスに両手を着く。
装置と繋がれたケーブルが床面を蛇の如く這っている、
先に彼女はベットに寝かされている。
年の頃は15歳くらいなのだろうか、はっきりと判断は出来ない。
一体何をされているのか?
「!、まだ、子供じゃないか!」
「そうだが、何か問題でも?」
ベットの上半身部分が起き上がってくる。
ガラス越しに目が逢う…。
ふっと我に返り顔をミエに戻す、いい忘れている事があったのだ。
「あっと、申し訳ない…随分と遅くなってしまったが
…私の名前は高瀬という…」
「はい、存じております、ドクター高瀬」
「!!」
三枝と仲間達は彼の名前を知っていた様子…、あの計画を立て大掛かりな偽装工事までしていたのである、助ける相手の名前を当然知っていても何ら不思議ではない。
「なんで名前を知って…」
「あの施設に潜り込むのに…下調べしたものですから」
「では…何度か接触してきた者は…」
「ええ、仲間の一人です……、
詳しい話は目的地に到着後に私たちのリーダーと一緒に、でどうでしようか?」
断る理由もなどある筈もない、即答する。
「そ、そうだな、分かったそうしよう」
うねった道路を走っていると、市街地の綺麗な夜景が現れ所々で思わず見とれてしまう、言うまでも無いが当然それ目的のスポットが山中にはありアベックが一時の甘い時間を過す。
勿論、そんな場所には用がない!、目もくれずに通り過ぎていく。
その夜景に目が入った時に倉崎三枝の脳裏には、以前の情景がすーっと浮かんでくる…。
━ 5年前 ━
「待てえ!止まりなさぁい!!」
倉崎三枝は刑事で現在手配中の犯人を追っている。
貴金属店や金融機関への強盗を繰返していたが、取り返そうとした店員に発砲し殺害した凶悪犯で拳銃を所持している、その為に追跡は高度な慎重さを要求されていた。
僅かな遺留品から辿り、10ヶ月間かけてようやく犯人を追い詰めた。
逃走犯が夜の繁華街の裏路地を逃走している、何とか振り切ろう!と、看板やらゴミ箱と目に付く物を手当たり次第に倒し追跡を妨害してくる。
脚には自信がある、倒された障害を巧みにかわして……そうあと少しで追いつく、倉崎三枝の手が伸びる、犯人が後ろを瞬間振り向く…。
《いける…あと……少し!!》
指がまさに犯人に届く瞬間に……。
パキっ!
ヒールのカカトが折れる、
無様に崩れる体勢、制御出来ない勢いに逆らえぬまま転倒する。
<< …… っ痛!、いけない!しまったぁ!! ……>>
両腕で身体を起こし立ち上がり再び犯人を追うが、もう先程の速度がでない。
思い切ってヒールを脱ぎ捨て追うが、路地を抜けた所で見失う。
《 なんで?…届いてハズなのに……
そんな…取り逃がしてしまうなんて 》
肩で息をする音がハア…ハアと何時までも続く……。
…… ハッ …… 。
三枝は少しの間寝ていた。
《 もぅ……何て嫌な夢… 》
「大丈夫かね?少し…うなされてた様だが…」
高瀬が心配してくれたが、手のヒラを何度も振り笑って返す。
「ええ、何でも無いです、
昔大好きだった男を追いかけ回してたのをちょっと……フフフフ」
とっさにデタラメな嘘をつく。
「そ、そうかね…」
ふぅ
…… 忘れてたのに……なぁ……
二人が想い廻らせてるうちに山頂まで到達したがワゴン車は止まる事無く更に進む、今度は両側に木々の立ち並ぶ降り坂になっているが外灯は少ない、その為ヘッドライトが頼りの綱っという道を進む、かなりゆっくりと進む。
保養所らしい別荘が深い木々の間から僅かに見える、何建かは灯が点いている。
途中に幾つもわき道があるそのひとつに徐行しながら進入したが、舗装されてない、じゃりじゃり音お立てながら数分後ワゴン車は停車する。
止まるエンジン音と引かれるサイドブレーキの音、車両から何処かへ向かって遠ざかる二人分足音。
そこから推測すると目指していた目的の場所へと到着した。
「目的地に到着です、降りましょ」
「ああ、わかったあの子を起こすから
少し待っててくれ」
「寝かせてあげたいけど、
あっちの方でベッドの中の方がきっと良く寝れるはずです」
ペンション風の建物にミエが指を指している。
「着いたよ、起きなさい」
少女の肩を何度も揺る、揺する。
「起きなさい、起きてくれ……マヤ!」
最後に強く名前を呼び目を開けた。
少女の名前である……マヤと。
「お姫様がやっと目を覚ましたわねっ、
それでは中へ行きましょうか」
軽く笑い顔を残してミエは二人を連れて家の方へと歩き始める、高瀬はマヤの背中に腕を添えて押すようにマヤとミエの後ろを付いて行く。
其処には丸太を惜しみなく使ったログハウスがある、一般的な物と比較すれば間違い無く贅沢な造りになっている。
正面左側に2階部分に上がっていく外付けの階段がある、上った先はぐるっと建物に沿ってテラスになっているらしい手摺が設置されている。
正面のテラスの下は丸太が柱となっているが、車の駐車スペースも兼ねている様だ。
先に入っていた北条が再び現れて、早く中に入れと手招きしてきた。
「もう…、うちのリーダーて、せっかちなのよねっ、ごめんなさい急ぎましょ」
そう言って階段を小走り気味に上がっていく。
「マヤ、私たちも急ごう」
小さく頷いて、二人も駆け上がって行った。
これから中では色々と語られる事だろう、しかし総てでは無い…のだろう。
人の動きの無くなったそのログハウスは、月明かりの下静かにたたずんでいる。
読んでくれてありがとうございます。
如何だったでしょうか?、読んでくれた方に良い事がありますように。
パーソン・オブ・インタレストを裏で聞きながら。