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Never Dies、命の代償  作者: 雛人形
序章
1/11

序章、脱出

勇気を出して初めての投稿です、誤字脱字あり文章も拙い物かもしれませんが一生懸命創作したものです、良かったら読んでみてください、お願いします!。



 【 あぁ…これはダメだな━ 俺は死ぬなぁ~ 】


 一つの命がこの世に別れを告げ様としている。

 擦れた声 ━、 穿たれた穴━、流出る赤い血… 。

 主の言葉通り、死者の国へと向いその門に手を掛けようとしている。 

 

 女は懸命に命を吐き続ける箇所を抑える。

 湧き上がる流れに逆らい、必死の抵抗を試みる。

 逆らい続ける━━。

 

 だが…、

 穿たれた穴からは吐血し続け、血流は止まることを知らない。


 「駄目━━、血が止まらない!

    このまんまじゃ、本当に死んでしまう」

 

 男の顔に蒼白の時が訪れてしまった。

 魂の糸が、寸断されようとしている、遂に門の扉を開け始めた。

 

 

 少女顔に強い決意の表情が顕れ出でる。

 蒼白の体へと伸びていく細い腕と真直ぐに延びていく指、開かれる掌。

 方の手を自の胸へと当てる、

 消え行く命に安らぎをと祈りでも?。

 

 糸の切れかけた身体の口は、

 閉じられた唇は、既に動く気配すらない。

 

 蒼白が増し行くその顔は天を仰ぎ向いているだけ、

 それでも、瞼の下の鏡には映しているはず。

 

 吐血し続ける箇所を、今もって抵抗する悲痛に塗れた懇願の面影。

 その鮮血で赤く染まった手。

 

 閉口し手の掌をかざし、祈りを続ける少女を。

 

 だが━━、どちらの姿も、誰なのかさえ認識出来ては居ない。


 止血の行為はもう無駄な抵抗である、

 何の効果も期待出来ない。

 そんな事は、もう分かっている。

 無駄と分っても、理解しても、

 ただ流れに逆らい、抑え続けるしか女に手立てが無い。

 

 「ダメよ━━っ!死なないで!死んじゃだめ!お願い!」

 

 女の懇願する声は既に言葉としては聞こえてはいまい…。

 虚しく男の耳をただ通り過ぎていく。


 床へと流れ落ちる鮮血の川、

 その川を下に滲ませるガラスの破片。

 拡散を止め僅かに吸い込む木片、

 この部屋の全てが、死を意識させ認める。


 唯一人を除いて━━━。 


 手をかざし堅く閉じていた、少女の堅牢な口腔が開く。

 

 美しく透き通った無音の波が一面に広がり拡散して行く、

 波は目には見えぬ羽の様に舞いそれは渦と成る。


 3人を包み込む様に…そして譬えようも無く優しく。

  

 女の逆らい続け、抑え続けていた手に違和感を覚える、

 鮮血に染まった手を指を恐る恐ると退ける。

 手が離れた蒼白の身体。

 その鮮血の湖の奥底から、

 ゆっくりと鉛の塊が浮き上がる━。

 転げ落ちそして傷口が消えていく━━。

 

 「そんな━━ぁ、嘘でしょ━━!」

 

 「嘘でしょ!そんなっ!」

 

目の前に横たわっている彼の胸に手を当てながら。

死の淵に飲み込まれ、死者の国へ向かっていた身体には赤みがゆっくりと戻り始める。

触れている女の身体の表面部分には彼の体温が戻ってきているのを感じ始めた。


 

 




ー 前日 ー 


 両壁に幾つもドアがある廊下を人影があるいてくる。

 白衣を着た初老の男性と、

 10代後半、まだ大人の女性足らずの少女。

 

 その髪は長く何処までも黒い、漆黒。

 服装は、やたら古典めいて古い。

 

 その二人の後ろを黒服にサングラスの、如何にもといった風貌の監視役二人。

 

 突き当りの扉まで四人が来て歩きを止める。

 黒服の男は胸元からIDカードを取り出し安全装置(セキュリティ)を解除し扉を開く、

 先には両側に幾つもの監視カメラが設置されそのレンズは通り過ぎる影をまるで生き物のように逃がさず追尾していく。


 広い駐車場に車両は3台、その一台の黒塗りのワゴン車の周辺を囲むように警備の者が幾人も待機している、今最後のセキュリティを解除して4人が現れ白衣の男と少女を先に押し乗せた、監視役は待機していた警備と何かを話し始めた様だ。

 

 その隙を突くように身体を寄せる初老の男性、

 彼女に耳元で外に聞こえないよう小声でさっと囁きかける。

  

 《 ……から…………よう

      …………に…………ね 》


 彼女はハッと顔を向けて驚くが監視が話し終えたのを感じ、

 二人は即座に身体を戻す。


 大柄な監視役は余計な会話をするなとばかりに睨みつけ乗車してくる、続いて細身の監視も乗車すると警備が外からドアを閉めて走り去る。

 後部に設置された対面シートに少女と白衣の老人は並び座っている、監視は二人の正面でしっかりと見据える形を取って鎮座する。

これでは何をしても丸見えで、下手な事はやれそうにない。

  

 全員が乗り終わるとワゴン運転席側と助手席の横に居た警備が乗り込みエンジンを掛ける、他の警備も傍に止めてあるやはり黒塗りの車2台に分かれて次々と乗車を終える。一台が先に動き前に出ると続いてワゴン車が発進するその後方に2台目が付いて車列は動き始めた。


 最下層から目が廻るほどの階を登り、

 3台の黒い車両は地上の道路へと滑り出す。

 直ぐに【左方面】、【右方面】の道路標識が走行車線上方に現れる

 3台の列は速度そのままで左折、西に向かって走行するつもりである。

 

 時刻は22時過ぎ、工場地帯が広がる埋立地に沿って延びる主要道路ではあるが流石に車の通行量は少ない、それでも時折大型のトレーラが追い越し車線をすり抜けていく。速度は恐らく90キロ以上は出して走り追い抜いていく、その車列が進む走行路の上方には都市高速が東西に延びる。高速道、更に高い位置に作られた灯が都市間を繋ぐ空路を明々と照らしている、その高架下を20分程走った頃だろうかワゴン車助手席の男が携帯で何処かに連絡する。

 

 短いコールの回数で相手が出た。

 

 「予定通りでました、1時間弱でそちらへ到着します」

 

 「はい……はい……、分かってます。…では」

 

 短い電話を終え携帯を内ポケットへしまい、

 ふうっと短く吐き運転者の方へ顔を向けて両手を広げる。

 

 「この平和ボケの日本で誰か襲ってくるのか?、

      老人と少女一人にこんな警備付ける必要あるのかね?」


 隣から聞こえる男の愚痴に合わせ、

 運転している男も全くだなっと顔を合わせて苦笑い。


 その呑気な予想は的中する事と成る。

 確かに誰も武器を持っては来ない、襲撃しては来ない。

 

 ワゴン車前後部は仕切られている、そのせいでと言う訳でもないが運転席側の空間と異なり後部は無言の重苦しい空気が漂う…、その中で白衣の男は頭の中で思いを廻らせ不安を募らせる。

 

 《 …たのむ上手くいってくれ…》

 

 《あんな計画が許されて良いはずない!

    …奴らから逃げ出さないと……せめてこの娘だけでも》


 どんな事が進行しようとしているのか?

 言葉にしなくても心痛な想いと云う物は、意に反して表情と成って表へ飛び出してくる。それは厳しい観察眼の持ち主の気を惹く事となり、腰を上げ詰め寄る。

 

「なんだ?いやに落ち着きが無いな!何かあるのか?」

 

「いや何でもないー、ただ昨日から報告をまとめる為に、

   睡眠不足で気分が良くない」

 

 ちっ、と舌打ちした後、訝しげな顔をする。大柄な身体をのそりと後退させ、元のシート位置に腰を落とし腕を組み再び二人をの監視を続ける。

 

 重苦しい空間を運び、暗夜の路上を走る車内には僅かな走行中の微音のみである。

 上手くいくとは何の事か?、彼女に車に乗り込んだ時に彼が囁いた言葉はこう…。

 

 【 助けがくるから脱走しよう…、一所に逃げるんだ!いいね! 】

 

 脱走計画である。前後を二台でガードされ、車内では二人の監視がしっかり見張り眼を光らせているこの状態から、どういう手段で接触してきて救助するというのか?。アクション映画さながらの襲撃と派手な銃撃戦でも巻き起こすというのだろうか、しかしそれだと先の的中する予想とは違うので有り得ない。


 二人の監視は、相変わらず微動だにせず正面の監視対象を見据えている。先ほど腰を上げ動いた男は、ガッチリとした体格で髪は短くスポーツ狩りだが、もう一人は細身長髪で、背骨の中心辺りまで髪が届いている。


 その細身の右腕が静かに動きをみせ、左脚太腿の上辺りに移動した。軽く握られた手はスーツと左肘の下側に入り隠れた状態になった。

 

 白衣の老はその動きを見ていた。

 平静を装い大柄な男に言葉を掛ける。

 

 「あとどのくらいで到着かね?」


 面倒くさそうにチッと2回目の舌打ちをすると、大柄な男は腰を動かした。


 前席の警備に聞く為に顔と半身が左を向く、腕を上げ前後部を仕切る壁の小窓をスライドさせようと手を動かしかけた時、無防備な首筋に隣から黒服の右腕が突き刺さる。

 老人と少女、二人の体がビクッと跳ねた。が、刺さって見えたのは何処から取り出したのか隠し持っていたスタンガンの電極部だ。

 

 バチッバチッと青光放電━、火花が散る、太い首が折れて車の内装壁板を叩く。


 小窓が開かれた。

 後方からの物音に気が付き助手席の男が覗いてきたが、死角になって昏倒している顔は見えていない、腕時計の金属バンドが切れて落ちたのだと振って見せる。途端にパタン!と小窓を即座に閉めてフロントガラス越しの夜道のほうに顔を戻し毒舌を吐く。


「高い金で雇われているだろが!、

     ちゃんと高級品くらい身に付けてろよ全く!」


 先の電話後の会話からも見て取れるが、どうやらこの二人は無能で三流以下である、本来なら警護の人数からしても重要な者を移送している事は自明の理である。それを大して確認も取らずにさっさと問題無しと判断してしまっては職務怠慢であると言わざる得ないが、…まぁ、後部に居る3人の者達には幸いとなった。

 

 もし、有能な警護であったなら━━、

        この後の展開は全く別となった。


 小窓が閉まって暫しの後。

 細身の監視役は顔に指の爪を立て皮を剥ぎ取る。変装を解きながら先ずは後続車の様子を後部カーテン脇から、覗き伺い見る。

 振り返って口に指を当てるその素顔は、女性の物と変わっていた。

 

 彼女は今度そっと前部との仕切りの傍に擦り寄って耳を当て、運転席側の様子も伺っている。やがてどちらも動きが無いことを確認すると初めてその口を開いた。


 「これからお二人を連れてこの車から脱出します」


 通行量の疎らな高架下、薄暗い道を一定の間隔を保ち車列は目的地目指して走り過ぎて行く。





 【 歴史は夜創られる 】と言うのは誰の言葉であったか?。

 今夜の脱出劇も歴史の1ぺージに、其処に書かれる文章その一部と成る。

 或はそうは成らないかもしれない、今それが直ぐに確認される事が無いにしても、

 近い将来に措いて誰かの手によって語られる日が訪れるかも…しれない。

 

 さて、ワゴン車の中では計画の全容を説明し終える頃であろうか。


 「今説明したとおりですが、何か質問は?」

 

 「いや、質問はないんだが━、

      本当に上手くのかね?もしバレでもしたら」


 女性の方は冷静に事を運ぼうとしている、に比べ初老の男のほうはかなり不安を隠せてない、今まで何処に居て何をやらされ何を見てきたか、彼らがどういう組織だったか十二分に見てその怖さが身に沁みて分かっているのだ。

少女のは方は━━と、声をかけてみる。

  

 「ねぇあなたは━、どう?」


 是まで一言も発していないが。やはりずっと沈黙を守り続け、一緒に連れて来られた老人の方に顔を向け腕を絡ませ━━、そして袖を掴む。

 

 「すまないが、この子は言葉を発する事が出来ない…」


 「そう…ごめんなさい」


 黒服スーツから伸びた両手は少女の肩へと優しく置かれた。

 

 「安心してね、必ず二人とも連れ出して見せるから!」

 

 その言葉に安堵したのか彼女は、

 肩に架かる腕を両手で挟みニコリと微笑む。

 

 思い立ったように少女の肩から両手を外し、窓のカーテンを指でめくり外を確認。振り返るその顔は、僅かに開く隙間から指す光もとで夜目にも美しい。

 まさに絶世の美女━、その綺麗な顔が厳しさを浮かべる。

 

「そろそろ予定の位置に着きます、いいですか」


 コクッと頷く二人、一度は安堵したはずだが鼓動の速さが増すのが分かった。


 先行する車内。

 

「おぅ、後ろの車ー、車内の様子が分るか?どうなってると思う?」

 

 助手席の男が不意に運転席に問いかけた。

 

「後ろってどっちのだ?」

「直ぐ後ろだよ、真ん中だよ真ん中!」

 

 チラッと室内鏡(バックミラー)見る、今度は一瞬だが左に顔が向ける。

 

「そんなの━━っ!、会話が弾んでるとでもおもうか?アレにのって……

 言葉が遮られる。

 

「みっみぎぃ━、あぶねぇ━!!」

 

 運転手の首が即座に右へ回転する、視界が変わる、迫る白の車両。

 

「うおぉ!このぉクソっ馬鹿がぁ━!!」

  

 左に急ハンドルをきるがもう━━遅い!、ブレーキ音とタイヤと路面のスキッド音は女性のあげる悲鳴の如く鳴り渡る、交差点で接触した二台の車は左折する方向へ、後続二台を尻目に中央分離帯付近で止まる。


 白い車のドライバーが飛び出してくる。

 

「すいません!!、前が良く見えなく…」

 

 黒服の方は悠然と車を降り襟首を捕まえ、拳を上げ振り下ろす。

 それを抑える相方の黒服の腕。

 

「馬鹿、周り良く見ろ!」


 この交差点は近接した24H営業の店舗が幾つかあり夜中でも人通りがそれなりに多い、交差点周辺で停車した車からは窓を開け見物している視線がそこらじゅうから飛んでくる。歩行者も足を止め野次馬化しその数は徐々に増えていく、隣では相手ドライバーが携帯で警察に連絡したのも聞き取れた。

 

 「チッ!これは面倒な事に成るなっ!」


 振り上げた拳を下ろし腕を掴んだ男に、少し先の路肩に止まっている仲間の車の方に行くように首を振って指示する。抑えていた腕を放し指示された二台の方へと走る、ワゴン車の後方で停車中の車に到着すると、運転席のドアウインドが開いてくる。


 「此処から先はこの車で先導してくれ、

      あの馬鹿が警察に通報しやがった」

 白い車の運転手を指差す。


 「━━━、こっちはもう動けなくなった」

 

 「了解した、これ以上騒ぎを起こすなよ」


 ウインドが上がり始める

 

 《くそ━ぉ、わかってるわ》

 

 呟くと、今度はワゴン車へと足を向けた。


 ワゴン車の男は降りて待っている、後ろの車が先行する旨伝えると相方が待つ事故現場へと小走りに戻っていく、それを見ながら車内に戻りベルトを閉めながら吐き捨てる。

 

「警察を呼ばれて動けねえんだとよ」


 運転席へ座りながら再び前へと視線を戻す、

 その横を先導車が過ぎていくと続いて発進する。


 予定外の時間を取られた事でどちらのドライバーも苛立ちを隠せない。

 到着が予定時間過ぎる、遅れれば当然処罰も有得る、

 冷静さを失わせるが10分後にそれは頂点に達する事に成る。

 

 【 夜間工事中につきご迷惑をお掛けします 】


 と、ヘルメットをかぶった作業員がお辞儀をする看板が川を渡る橋の脇に立っている。その後方には片側二車線のうち走行車線側に1車線分の幅で2列のパイロンが長々並べられ、作業員の車両が数台止まっているのも見えた。


 先導車が交互通行の路に入ると、通行整理の制服作業員が割って入りお辞儀をされ停車を余儀なくされた。

 

 「くそぉ、今度は工事中かよ!!」

 

 ドン!ドン!、二回ハンドルを殴りつけてイラ立ちをもろに顕にした。後方には追ってきたかのように立て続けに車両が数台が停車しだした。


 路面の舗装補修する為に照明が幾つも設置されている、電源供給の発電機の音がバタバタかなり耳障りな音を鳴り響かせる中、数名の作業員が行き来している。3人が脱走をしようとしているワゴン車の横に工事車両の塗装をされた大型ワゴン車が停車して来た。

 

 「おーい、発電機がガス欠しそうだぁ足してくれ!」

 

 作業員が発電機のゲージを見ながら叫んでいる、手を挙げて答えた別の作業員は携帯用燃料タンクを運んで黒ワゴン車の横を通り抜ける━。が、その直後転倒し蓋が外れガソリンをぶちまけた。

 揮発した蒸気の臭いが車内にも侵入する。


 「うわ!このボケがぁ!」

 

 駆け寄ってきて謝罪する作業員。

 

 「申し訳ありません!すぐ処理しますんで安全の為、

      一旦エンジン切ってもらえますか?」

 

 「さっさとしろ間抜けぇ!」

 

 罵倒しながらも、こんなとこて引火でもされては堪った物ではないと、

 言われるとおりに停止する。

 

 転倒した男が工事車両ワゴンへと走り、後部ドアを開き砂袋を取り出して運び砂を撒き始める。

 開かれたドアは黒ワゴン車側部スレスレの位置だ、助手席の男は左ドアミラーで後方を見るが接触していないのを確認すると運転席の方へ顔をやる。

 

 「今日はなんか祟れてるんじゃないか?」

 

 相方であるドライバーが今一度、ハンドルをドンと拳で叩いていた。

 

 砂を撒き始めると対面側の誘導員は旗を振り、合図待ちの車を発進させた。

 

 「くそっ、向こうは進ませるのか!」

 

 ナビ席の方からも怒の言葉を吐き捨てる。

 ゆっくりと前方から車の列が近付いてくる。

 ハイビームにしている車両が多いのか、度々顔を背ける必要があった。

 そして、車両は通過する度に橋を揺らしながら通り過ぎる。

 

 もしも一流の警備が一人でもこの中に居たら、先の接触事故後の工事現場や作業員の露骨な行動を、わざわざ横に止まった不審な作業車、追ってきたかに停車した車、その全てに疑いを向け接触事故以降の全ての不自然さを見抜けたのだろうが、そうはならなかった。

 

 前の二人が怒りと苛立ちを加速させている時、

 後部の室では遂に動きが始まった。

 

 「今です!急いで」

 

 後部ドアを開けて3人が外へと抜け出した。

   

 開かれたドアは工事車両側の大きなドアに隠れて見えない、点灯するはずのランプもエンジン停止で消灯したままなので気が付かない、降りるときのゆっくりとした揺れも橋を通過する際に引起される連続した揺れに掻き消されてこれも誤魔化されていた。

 

 隣で停車している工事車両は偽物だった。

 見事に偽装して警備達を騙しているワゴン車へと、

 無事に3人が乗り移るのが終わる。


 「本当にご迷惑お掛けしました、もうけっこうです

        エンジンお掛け下さい」

 

 深々と頭を下げる作業員達。

 

 チッ、と今夜何度も聞きなれた舌打ちをしエンジンを掛ける。

 向こう側の交通整理員が停車の合図を出すと、

 進めの合図の旗が黒塗りワゴン車の前で振られる。


 急加速気味に発進していく黒のワゴン車、

 先行車と合流するも車内を一度も確認せぬまま再び目的地へと向かって走り去る。

 

 「皆、撤収━!」

  

 現場監督を装っていた男の声で作業員が慌しく動き、

 一般車両を誘導しながらも手際良く片付けていく。



 猛スピードで黒塗り車二台が戻ってきたのは20分後である。、

 

 だが既に時遅い━━━!。

 橋の周囲の道路には工事車両も道具も残されてなく、

 工事現場は跡形も無く消えていたのは言うまでもない。

 

 


 

 




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