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PCcontrol  作者: 枕木碧
番外編
27/31

番外編06 第三次世界大戦 其の六

 番外編というオーラをかもし出している話から、現実に戻ろう。

 昔語りは、また今度の機会にしよう。


 私と天童大佐、そして富良野中尉は、見張りの任務を完遂した後、他の二人と朝食をとった。

 朝食といっても、乾パンのような簡単なものだったが、他の人と食べる飯の味は少し違った気がする。

 あくまでも気がするというだけの話だ。

 おそらく、成分は変わっていない。


 私は、ここまででまだ重要なことを言っていない。

 それは、ずばりこの戦争の戦い方の変化だ。

 そう、人は進化する。

 する必要のない、下手するとしてはならない変化かもしれないが。

 第一次世界大戦で人は、戦車、毒ガスなどを開発。

 第二次世界大戦では、高性能の艦載機、軍艦、核爆弾……などを開発した。

 核爆弾というのが、あの悲劇を招いたのだが、今は置いておいて話を進めよう。

 今回、第三次世界大戦では、人々は戦闘用ロボットを開発。

 まだ、人工知能の開発は追いついていないらしい。

 けれども、少しずつではあるが戦闘用ロボットが使用されている。

 実際に私はそれを見たことがなかった。

 なぜ、過去形なのかと聞かれればこう答えるしかあるまい。

 今、見たからだ。

 上国所属と思われる戦闘用ロボットが、先ほど私たちの前を通って行った。

 なぜわかったかって?

 それは、赤をベースにあの……中華のナルトマークが入っていたからだ。

 加えて、名前まで入っていた。

 あれは、上国で間違いないだろう。

 我が国、日本は果たして大丈夫なのだろうか。

 今、戦場になっている地域――アジア。

 その中でも特に熱戦が繰り広げられているのは、上国の首都、北夕鮮の首都、そしてここ名古屋だ。

 はじめ日本の戦線は島根県だった。

 しかし、日本がうまく対応できず、ずるずると戦場は拡大。

 結果、名古屋が今一番ホットな場所となっている。

 アツアツだ。

「羽黒准尉、この通信機で本部と連絡をとれるか?」

 大佐が、私に通信機を渡してくる。

 でも、逆探知とか大丈夫なのだろうか。

「承知しました。電波の周波は?」

「そのままでいい」

 通信機使うの久しぶりだな。

 えっと、これをそうして……と。

 映画などで使われるようなノイズが聞こえてきた。

 そのノイズの中に埋もれている声がある。

 アマゾンから送られてきたとき、中の者がプチプチの包装紙で見えない時のような感じだ。

 もっとも、包装紙、紙ではないけれど。

「……こ、こちらは……に、日本軍本部……」

 ん?

 周波数がうまく合っていないのか?

 いや、そんなことはない。

 ぴったりだ。

 こちらにも、おそらく本部側にもミス、手違いはないだろう。

 そうなると……。

 成る程。

「大佐。通信は一時中断します」

 大佐の目には疑問の色が浮かぶ。

「詳しく説明してくれ、羽黒准尉」

 そういった大佐だったが、その余裕がないことは悟ったようだ。

 なぜなら、目の前に上国の戦闘用有人ロボットがこぶしを振り上げていたからだ。

 私が思うに、こいつが通信を妨害していたのだろう。

「退避! 退避!」

 半分、大佐の声は叫び声のようだった。

 声が裏返っていたのだ。

 まあ、無理はないだろうけれど。

「きゃ!!」

 女性の悲鳴ときたら、私は振り向かずにはいられない。

 振り返ると、わが半唯一の女性兵士、紅一点の富良野中尉の悲鳴だった。

 くっ!

 新しい仲間、仲間と書いて家族を失うわけにはいかない。

 絶対に。

 させてたまるか!!

 私は、ロボットにも詳しくないし、腕があるわけでもない。

 しかし、何とか時間を稼ぐことくらいはできる……はずだ。

 私の脳は信じられないほどにフル回転していた。

 ぐるぐると脳内に血液が回っていくのを感じる。

 全身の膨大な酸素が、私の身体を司る脳へ回される。

「富良野中尉!」

 富良野中尉は、尻餅をついていた。

 というより、腰が抜けていた。

 おそらくこんなものを見たのは初めてだったのだろう。

 私もだ!

「羽黒准尉……。私のことなど……」

 もうほとんど日本語になっていなかった。

 声が震えているのが、体から力が抜けて言っているのが伝わってくる。

「富良野中尉! 立ってください! 私が何とか持ちこたえます」

 ロボットと富良野中尉との間に体を入れる。

 しかし、こうして出たがどうしたものだろう。

 この体格差では、私がつぶされるのは確実だ。

 ああ、ここで死ぬのか……。

 まあ、ここで死ぬのも悪くはないか。

 ほかの者が死ぬよりは10倍、いや100倍いい。

 私は、目を閉じ心の整理をする。

 将棋で、「負けました」の一言を言う準備をするように。

 土佐中佐、今いきます……。


 と、次の瞬間――。

 大きな音がした。

 金属と金属がぶつかり削られる音。

 きっと、火花が散っていたのだろうな。

 あれ……?

 誰が……、誰が邪魔をしたのだ!!

 格好よく天に召される予定だったのに……。

 予定がくるってしまった。

 台無しだ。

 目を開けると、大きな機体が目の前にあった。

 上国のそれとは比べ物にならないくらいスリムで、見るからに高性能なものだった。

 機体の色は、和の雰囲気をかもし出しているのは紫色。

 欧米諸国では、紫色とは呪いの色として扱われてきた。

 紫の鏡がいい例になるだろう。

 そうだ。

 子供のころに見た紫の鏡のことを20歳の誕生日に思い出した場合死んでしまうという。

 しかし――紫色は、日本では高貴なものが使う色とされてきた。

 おそらく、そこからヒントを得てこのデザインにしたのだろう。

 ベースの紫の機体に入っている白いラインがまぶしいくらいに目立つ。


 上国の機体を吹っ飛ばしたと思ったら、その紫の機体は腕から強力な電磁砲のようなものを発射した。

 ここでは、絶対効果音が必要になる。

 文字で表すのなら、「バリバリ」という電気系の音だ。

 果たして、敵機体は跡形もなくなくなっていた。

 えぐられたようになっていた。

 えぐられた部分からは、湯気か煙かはわからないが何かがもやとなってゆらゆらとしていた。

 状況にまったくついていけていない私は、しばらく身動きをとれずにいた。

 冷凍されたようになっていた。

 解凍が必要である。

 そんな感じで、私が固まっていると紫の機体から一人の人間が下りてきた。

 焦点がうまく合わない。

 ぼやけていて、見えない。

「君の勇気、私は高く買うよ」

 どこかのアニメキャラの決め台詞みたいになっていた。

 格好良すぎるだろ。

 私の精神は削られただけで、何の役に立たなかった。

 残念。

 残念というより、無念。

 足音を鳴らして、その格好いいやつがこちらに向かってくる。

 はっきりとは見えていないが、それくらいは感覚でわかる。

「私の名前は、桐生奈美きりゅうなみ。日本軍の少将をしている」

「女ー?!」

 叫んだのは私だけではなかった。

 隣で座りこんでいる富良野中尉もだった。

 確かに、機械音で聞こえにくくてわからなかったが女性の声だった。

 女性というか、女の子だった。


 一度、天童大佐の班員は皆集合し安否を確認した。

 一応みな無事だった。

 精神的にどうなっているかわかったことではないが。

「では、改めて。新日本軍国家直属班所属、桐生奈美少将だ」

 目が点になったのは、決して私だけではなかっただろう。

 おそらく、班員みな点になっていたと思う。

「あ、あの……状況がうまく理解できないのですが……少将殿」

 そういったのは、わが班のチャラ男、長野中尉だった。

 私も状況を把握していないのは、確かだった。

 なぜなら、少将の見た目がまだ高校生になっているかいないか、くらいだったからである。

「言いたいことは、大体把握した。他に質問は?」

 パキパキとした性格のようだった。

「では、私から。あの少将殿が乗っておられたその紫色の機体はなんでしょうか」

 同性の富良野中尉でさえ、おどおどしてた。

 同性からしても怖い人なのだろうか。

「成る程。まず、私の年齢から言った方がいいのかな。私は、今年で17歳になる」

 17歳……。

 私よりも若い。

 なんということだ。

 それにしては、少将とはずば抜けている。

 飛び級したのだろうか。

「そして、なぜ私がこの年齢で少将などという階級なのか、ということについて説明しよう。ご存じだとは思うが、国家直属班の一員になれるのは大佐以上。つまり簡単に言えば、私が優秀で国家直属班に所属させるために階級を上げた、ということ」

 ほほう。

 大したお嬢様だ。

 自分で優秀というとは、な。

 まあ、確かに優秀だけど……。

 周りの顔色を見ても、納得はしていないようだった。

 当然だけど。

「では、次の質問に行きましょう。この機体について説明しよう」

 といいながら、桐生少将は機体を手で数回たたいた。

 わかってるよ、その機体のことをさしていることくらい!

「この機体は、国家最先端戦闘用有人ロボット『紫苑しおんきゅう号』だ」

 え、なんかめちゃくちゃ格好いいじゃん。

 紫苑……でもちゃんと『紫』という字は入っているんだな。

 桐生少将は、説明を続ける。

「この機体は、純日本製で、日本に20台しかない代物だ」

 おいおい、そんなもの叩いちゃダメだろ。

 突っ込むことは避けておいた。

 下手したら、私の首が飛びかねない。

「この機体は、国家直属班に所属している者しか使用することが許されていない」

 自慢げに胸を張る。

 今気が付いたけど、あんまり少将殿は胸がおありでないようである。

 軽くあるかないかくらいである。

 不意に富良野中尉のほうを見ると、彼女も彼女自身のと少将殿のとを見比べていた。

「おい、そこの男。先ほど、丸腰で戦闘用ロボットに身を投げ出した者だ!」

 あ、それ私しかいないじゃん。

「そうだ。お前だ。名を名乗れ」

 最近、こうして名前を名乗るよう命令されてばかり気がするのは気のせいだろうか。

 けれども、少将直々の命令だ。拒むわけにもいくまい。

「はっ。私は、羽黒准尉であります」

「そうか。羽黒准尉、言いたいことがあるようだがなんだね?」

 こいつ、いちいち頭に来るやつだな。

 言っておくけど、お前が最年少なんだからな。

「いえ、とくにはありません」

 眉間にしわを寄せて、「嘘だろ」という声が聞こえそうな顔を少将殿はしていた。

「まあ、いいだろう。どこまで説明したかな。……ん? もうおおむねわかったからいい? そうか。残念だ。語ろうと思えば、まだまだ語れるぞ」

 もう自慢話は勘弁だ。

 おなかいっぱい。

 ごちそう様。


「さて、貴様らはこれからどこに向かうというのだ?」

 天童大佐がすかさず答える。

「はっ。この先にあります、軍の駐屯地へ参ろうかと思っております」

「そうか。確かに、食料や弾丸も必要だからな……。が、残念なお知らせだ」

 今度はなんだよ……と多くの者が思ったに違いない。

「上国の有人戦闘機が多量に導入されたようだ。今通信が入った」

 あれ?

 そういえば、何でさっき通信がうまくいかなかったんだ?

 まあ、大体の予想がついたが、それは今おいていおこう。

 なんだって?

 先ほどのロボットが大量に導入された?

 もうお終いじゃないか。

 幕が下ろされてお終いだ。

『終』とね。

 冗談じゃない。これからだ。

 きっと班員みな青ざめた顔をしているだろう。

 なぜなら、なすすべがないのだ。

 あのロボットの前では、踏みつぶされないように逃げ惑うありのようだ。

 この状況を察したのかしていないのかわからなかったが、少将殿がこんなことを言った。

「私が、駐屯地まで送り届けてやろう」

 この瞬間、皆の顔がさらに青くなったことだろう。

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