第20話 援軍
一時間……。
長いだろそれ。
叫びたい。
無茶だ。
「あの、それ本気で言ってます?」
「本気だ。この場所なら大丈夫だろう」
「し、しかし……。もう、来てますよ」
「ん……?」
目の前には、蛆虫のようにうじゃうじゃと敵兵がいた。
あの入りにくい入り口といっても爆破してしまえば終わりだ。
カル……なんて奴だ。
嘘つけ!
「応戦しますか」
「いや、とりあえず身を隠すぞ」
「しかし、身を隠したとしても熱を感知されればお終いですよ」
「おしまいだな」
何で楽しそうなんだ。この人は。
ということで、とりあえず身を隠すこととなった我々。
幸運なことに、まだ相手は数が多いだけで最先端の機能はついていないらしい。
それでも……彼らは街を焼き払っていくらしい。
焼却の如く、火葬の如く。
死体の腐敗の匂いが煙の香りに上書きされていく。
酸素が薄くなっていくのを感じる。
ロボットである彼らには酸素は必要ない。
だが、我々には必要だ。
なければ死んでしまう。
「ごほっ。やばいですよ」
「やばいね」
微笑ながらも、目は真剣なカルだった。
これが戦場……。
炎のせいで辺りが赤く、暑い。
火の手はどんどん近くなっている。
「応戦しないと、焼け死んでしまいますよ」
「仕方ない。出るぞ」
銃を抱えて外に出る。
出て後悔する。
無茶だ。
「とにかく撃て。じゃないとやられるよ」
「はい!」
まるで機械のように、システマティックに撃つ。
もう当たっているのか外れているのかわからない。
「おっまたせー」
どこかで聞いたことのあるような声と共に、目の前に何者かが現れた。
そこに現れたのはサミダレ。
僕の幼馴染だった。
「お、おい。サミダレ一人か?」
「ああ、一人だ。今のところ俺だけだからな。魔法使えるの」
え……、魔法?
ちょっと待ってほしい。
いや……相当待ってほしい。
魔法って……。
魔法?
アニメか何かじゃあるまいし。
「そうだよ。魔法だ。魔術だ。世界のルールを逸脱したもの」
「えー、信じられない」
「仕方ないね。見せてあげよう。でも、この魔法には仕組みがあって、純粋な魔法じゃないんだ。後で説明するから」
そういうとサミダレはこう唱えて、敵を破壊し始めた。
「我、汝に命ず。我に、力を与えたまえ」
次の瞬間、眩い光と爆発音。
ドーン……と。
酸素がさらに減った。
ただ息苦しいだけじゃないか!!
ん?
僕は、目の前に広がる景色に圧倒された。
視界が開けていたのだ。
土埃が立っている中でもはっきりとわかる。
一掃されている。
枯葉をほうきで掃いて燃やしたの如くだ。
「面白い表現するね、カンジ。相変わらずだ。これはカシでいいのかな?」
「おいおい、やめてくれ。カシにはならないだろう。軍人として当然の義務だ。……でも――ありがとう。助かったよ」
「お前が素直に礼を言うと気持ちが悪いな」
ひどいことをいう奴だ。
先ほどまでいたロボットのモーター音みたいなものが全くないので静まり返っている。
あ、そういえば。
「質問の答えをまだもらっていないのだが」
サミダレは頭の上に「?」が付いたような顔になった。状況を把握していないらしい。
「いやいや、『魔法』とか何とか言っていたじゃないか」
どうやら合点が言ったようだ。
「あー、そうだったな。結論をいます。これは、決して『魔法』などではありません! 以上」
……。きちんとしてほしいものだ。
「あの……、これでは全く納得がいかないのだけれど……。わかるように説明してくれるとありがたい」
僕の言葉を受けて、サミダレに動揺の色が見える。
「どうしたんだよ」
ここぞとばかりに僕はサミダレに追い打ちをかける。
「正直……」
「正直?」
「正直、俺も知らない……」
案の定であった。単純に知らなかっただけだった。
また、沈黙が辺りを占める。
「シーン」と効果音なのかなんなのかわからないが、それが聞こえてくるようだった。
気まずい。
とその時。
「サミダレくーん? 元気ー? 生きてるー?」
今度は誰だ。今度の人は、頭の上に「?」ではなく語尾に「?」をつけてきやがった。
「おーい?」
いやいや、ここでは「?」いらないだろう。
「はいはい、オイチャ博士」
オ、オイチャ……? お茶? 老いちゃ?
あれ、くだらないダジャレみたいになっちゃっている。
「サミダレ、お茶? 博士の紹介をしてくれよ」
我慢できず、僕は口をはさむ。
「お茶じゃないよ。喉かわいているのかい? オイチャ博士だ」
そういえば、博士……。ハカセって博士だよな。博士といえば、「科学」。
「科学」――成る程、今のは「科学技術」か。
「お察しの通り、これは『科学技術』じゃよ」
じゃよ? 素晴らしいキャラ作りだ。
「説明使用可能。あっ、しようかのう」
えー、そんなのあり? ずるい気がする。笑いを狙ってそれ、しらけるパターンだよな。
「では、続きを……。サミダレ君が今身に着けているのは、試作機じゃよ。後ろの翼で宙を舞い、腕につながっている腕装着型エレキガン。パワーが強すぎて使えるのが、サミダレ君しかいなかったのじゃ」
すごいな、あれ。
「そうじゃ、いいことを思いついた。カンジ君とやら、君も試してみたまえ。まだ、試行錯誤が必要じゃが爆発はしない」
「爆発『は』しないんですか」
「そうじゃ、爆発はしないのじゃ」
「本当ですね?」
「本当じゃ」
「ほん……」
「いつまで、そのやり取りしてんだよ。もし、爆発していたら僕は今頃丸焦げだよ。つべこべ言わずやれよはやく」
なんで、サミダレが切れているんだ?
ということで、命がけの試着が始まったのだった。
試着……であっているよな?




