第13話 交戦
まったく、何をしているんだろう。
頭を抱えていると、周りに狼犬、王の兵士が集まってきた。
この時ようやく理解することができた。なぜ気が付かなかったのか……。
思い返せば狼犬とこの王の関係性は明らかだったのかもしれない。
あれは、この地下都市に入る時だった。
僕は、この狼犬たちに襲われた。
はじめはこの辺の野生生物かと思った。
だが、あのような生物が自然にいるのだろうか。
様々な文献によると、気候など環境は大きく改善されたそうだ。改善というのは、人の手による大量の木の伐採や二酸化炭素の大量排出が原因にあげられる地球温暖化のこと。それによって、生物がすみやすい環境になったのは確かだ。それでも、新種は確認されていないという。確認されていないがいるかもしれない、という突っ込みが誰かと会話したらありそうだ。そんな相手に対して僕は、こういうだろう。「考えてみろよ。あんな自然界のバランスから離れたような生物がいるか?」とね。
結論――これは品種改良されたものだ。
こいつらが命じられて僕を襲ったんだ。
そんな敵が今目の前にいる。
そして、その奥には黒幕が……いる。
四面楚歌、絶体絶命……。
僕は、日本刀をまたしっかりと握りなおす。ぐっと握っている掌からじんわりと汗がにじむ。いつも不思議なのだが、必ず敵とにらみ合いになってしまう。
ものすごい緊張状態が続く。僕の隣にいるサユキも銃を構えている。彼女からの緊張が僕にも流れ込んでくる。僕の心臓も動きを速め、耳にまでその音が聞こえてくる。その鼓動のせいかはわからないが、日本刀を握っている僕の手が小刻みに震え始めた。
プツンと緊張の糸が切れる音がした気がした。
次の瞬間、狼犬と兵士が飛び込んできた。
コマ送りのようにはっきりと目の前の風景がゆっくりと動いて見える。兵士の刃と僕の日本刀の刃がぶつかり火花を散らせると一気に世界が動き出した。
僕の頭は、今までにないくらいさえていた。
数的には絶対に勝てない。勝つには……
協力、そして技術だ!!
「サユキ、僕の背中は君に任せた」
僕は、敵の攻撃をかわしながら投げかけた。サユキは、驚いたようだった。
「ええ、お前に私の背中を預けて、私がお前の背中を預かるのか?――仕方がないか」
渋々だったが、サユキは僕と背中合わせになった。相手は、5人と10匹、対して僕たちは、2人。これでも相手は減った。
疲れが出たのか、日本刀が弾かれてしまった。すかさず僕は、相手の矛を左手で止める。手から血が噴き出す。痛みが伝わってくる。今僕の顔はどのようなものなんだろう。きっと皺でくしゃくしゃだろう。
痛みに耐えながら腰から拳銃を抜き、発砲する。目の前の兵士の顔が蒼くなっていき、次僕が瞬きするとその兵士は倒れていた。
さすがに、狼犬との対戦3回目ともなると慣れてくる。意外と彼らの攻撃は単純なのだ。飛び組んでくるもの、突進してくるもの、後ろから忍び寄り噛みつくもの……。この場合、一番厄介なのは後ろから噛みついてくるものだが、今は背中はサユキが支えてくれているので大丈夫だろう。
約20分ほど戦っただろうか。大方はかたずいた。もう、戦いとは嫌になってしまう。人の感覚を鈍らせるからだ。
この量の死体を見ても何も感じなくなってしまった。
息を整えていると大きな門がきしみながら開いた――まるで、ようこそいらっしゃいましたとでもいうように。
周りでは、まだ金属の交わる音が鳴り響いていた。




