第01話 序章
番外編が、すごいボリュームになり本編が影薄になりかけているので、少しずつ加筆などをしていきたいと思います。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。
西暦2298年。地球は荒れ果てていた。
動植物がいるはずもなく、さびれた地となっていた。
いうまでもなく、地球をこんな状態にしたのは人類である。
この原因は、人類が始めた第三次世界大戦であった。
この戦争は、約5年間続いた末ようやく終わりを迎えた。
第三次世界大戦は、懸念されていた通り核爆弾が多く使われた。
核を使われた戦争が残したもので人の利益となることは何一つなかった。
残されたのは、地球上にまかれた放射能。
それは、水に絵の具を垂らした時のようにあっという間に広がり、地球全体を覆ってしまった。
目には見えないそれは、人類をはじめ動植物に大きな悪影響を与えた。
加えて、地球は核爆弾が生む強大な火力によって灰だらけになったのだった。
人口の数は著しく減少。
数で言えば3万人。
もう、国の利益がどうだこうだとはいえる状況ではなくなっていた。
何とかこの状況を改善しなくてはならないと、人類の総力を結集して開発したのが、人工知能「022300型sink-1」とそれの意思で行動するロボット「022311型sink-605」であった。
このロボットは、革新的なものだった。
「このようないいものが作れるのなら、地球が荒廃してしまう前に国同士で協力していればよかった」と開発者の口からちらほらと聞こえたほどだ。
その革新的な機能とは、放射能分解機能である。
原子力発電で出ていた核のゴミでさえどうすることもできなかった人類が、とうとう核のゴミを廃棄する手段を入手したのだった。
しかし、それほどのハイスペックなものを使用するうえでのデメリット、欠点を考えていなかったのが人類の汚点といえるだろう。(その前に、核戦争を引き起こしたことが汚点となっているのだが……)
その汚点が引き起こした悲劇。
それは、人工知能が人類を地球の有害物とみなしてしまったということだ。
実際のところ、昔から自然を破壊してきたのは人類であることは変えられない事実である。
今回の戦争だってそうだ。
そんな醜い状態でも生き残ろうとするのが人類である。
人類は、地上から地下に生活場所を移した。
そして人類約2000人は、特別組織「crawl」を創設し、人工知能に対抗しはじめた。
人工知能との戦いは、目も当てられないようなものであり、それはまだ続いていた。
2000人ほどいた「crawl」のメンバーも500人ほどまで減少していた。
崖っぷち。
尻に火が付いた状態である。
西暦2299年11月
「カンジー!カンジ―!どこにいるんだい?」
僕の名を呼ぶ声がする。
この声はきっとサマだ。
明るくどこまでも響き渡るような澄んだ声。
僕は、この声が嫌いじゃない。
調子が悪い時は少々辛い声だが……。
「カンジ!またこんなところにいて。みんな探していたわよ。」
と怒り気味にサマは言った。
「ごめんごめん。今いくよ。」
僕は、自分の一番好きな場所で休憩していたのだが邪魔をされてしまった。
ここは、地中であるわりにはじめじめしていないのだ。
アリの巣のようなこの施設は、どうしても湿気がたまりやすい。
そのため、機材によくさびて困っている。
地上をロボットに占領されている以上仕方がない……。
そういえば、緊急会議があるとガルジ上官が言っていたな。
「なーにしていたんだ。」
噂をすればなんとかとはこのことだろうか。
もっとも噂さえしていないのだが……。
ガルジ上官のややしゃがれているものの太い声が僕の背中を刺した。
ちなみにガルジ大佐とは「crawl」の戦略主任をしている方だ。
「いえ、少し休憩を……。」
と少し臆した様子で答える。
「じゃぁ。みんなそろったことだし。はじめますか。」
ラショウ最高司令官(元帥)の優しくも落ち着いた声を合図に、ガルジ上官が「起立!気を付け。これから緊急会議を始める。礼!」というような意味の言葉を会議室中に響く声で発した。
情報収集担当のカルが、戦況を報告した。
要約するとこうだ。
『旧東京(本部)』
『旧札幌(第一支部)』
『旧仙台(第二支部)』
『旧名古屋(第三支部)』
『旧京都(第四支部)』
『旧大阪(第五支部)』
『旧福岡(第六支部)』
の7基地あるうち、我々がいる本部『旧東京』、そして第四支部『旧京都』以外、ほぼ機能していない。
ということだった。
主な原因は、ロボット「022311型sink-605」による基地の占拠であった。
ただでさえ人手が足りていないのでそれぞれにいる隊員は約70人ほど。
その状態の中1000機あまりのロボット「022311型sink-605」が基地を襲撃した。無事であるはずがない……。
幸い、『旧仙台(第二支部)』『旧名古屋(第三支部)』『旧大阪(第五支部)』の隊員とは連絡が取れた。
それぞれの基地の隊員によると「例のもの」をもって脱出したようだ。
そのまま本部に向かっているということだった。
例のものとは、人類の最後の希望といえる「スーパーコンピュータ」のことである。
「スーパーコンピュータ」を使っての反抗作戦は、今では必要不可欠だ。
基地が置かれている場所はそれらがある。
ここで問題となるのは、連絡の取れない『旧福岡(第六支部)』である。
もし、隊員がみな殺され「スーパーコンピュータ」が人工知能にわたっていれば人類に勝ち目はない。
ということで、現地視察のため僕たちの班が『旧福岡(第六支部)』に派遣されることとなった。
メンバーは班長のガルジ長官(=大佐)、副班長のサマ准尉、班の情報収集担当であるカル准尉、見張りや経路を確認するいわゆる雑用を行うナジル曹長と僕カンジ伍長である。
出発は、明日。