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2.ゴートとユーノ

 ユーノは旦那さんと一緒にお店を営んでいる。旦那の名前はゴート。あと、可愛い娘のリルと3人で暮らしてるんだ。みんな大好きなオレの家族。


 オレ専用のお皿に魚のほぐし身を入れてユーノは微笑む。


「昨日の残り物、いっぱい残って良かったね。ほら、あんまりくっ付かないの」


 オレはユーノの両足に8の字を描くように体を擦り付けながら早く早く、とその意思を示す。


 意志の疏通が出来ないって大変。その分、いっぱいオレの匂いを染み付けないといけないから本当に大変だ。


 ああ、芳しい魚の香りに興奮が止まんないよ。ずっとお腹がぐーぐー鳴りっ放しだ。ビックリするくらいそれはもう大きな音で。嗚呼、早く早く!


 ユーノが「おまちどうさま」って言うなりご飯にがっついた。んー、美味しい! 最高♪


「ようチビ、うめえか。客の残り物だけどよ。まだあるから落ち着いて食えよ」


 ゴートが2階から降りてきた。耳だけ向けて朝のご挨拶をする。ゴートはこの店の店主でちなみに筋骨粒々の禿げ頭のおっさんだ。とても恐い。すぐ怒るから。


「おはようゴート。違うわ、残りものはそうだけど食べ残しじゃなくて、ちゃんとチビちゃん用に用意したのよ」

「そうだったか、なら安心だな。一応は猫でもまだチビだしな」


 失礼な。体は小さくても心は大人のつもりだよ。それに人間の臭いが付いてないから、この魚はちゃんと食べ残しじゃないって気付いてるよ。




 満腹のお腹に満足して、前足を舐めて目を擦った。充実のひとときだ。


 尻尾を立てて優雅にゴートの前を横切り近くのテーブルに飛び乗ると、早速「 テーブルに乗るんじゃねえ馬鹿野郎!」って怒鳴られた。


 分かっちゃいるんだけどさぁ、高いところって最高じゃんか。本能をくすぐるっていうか。ゴートはあまり構ってくれないから、怒らせるのがスキンシップのつもりでもあったり、するけど。


 チラッとゴートを見やると、「オイ!」てまた怒鳴ったから、慌てて飛び退き店の裏口まで走った。こわっ。おっかないよー。


 ゴートってば怒った蛸みたい。蛸は美味しいけど、ゴートを食べたらお腹下しちゃうな。


 筋肉もりもりの大きなタコみたいなゴートに、なんでユーノみたいに美人で優しい奥さんがいるのかな。よく分からないや。


 安全地帯へ退避して店の裏口から眺めてると、少しだけユーノの表情に陰が射していた。ゴートもどこか神妙な気配だ。


「でも昨日のお客さん大丈夫だったかしら。何でも相当手強い魔物が出たって聞いたから私心配だわ」

「らしいな。確かに、この辺りじゃそうそう聞かない話だよな。襲われたのは商人だろ。場所は聞いたか?」

「村の外のどこかって話だけど、私怖いわ」

「でもよ、やっとのことで命からがら逃げてきたんだ。そこでメシ食って体力回復ってもんだろうよ。

それがオレの作った料理を残したんだ。こりゃあよっぽどのこったぜ。変な毒とか後遺症とかあったりしなきゃいいんだがな」

「コカコ村、しばらく落ち着いてたんだけどね。ちょっと物騒になってきたのかなぁ。嫌ねぇ」


 二人が自身の朝ごはんの準備をしながら話す会話にそっと聞き耳を立てて、オレはマズマなら何か知ってるかもしれないと考えていた。


 マズマはこの辺りのねこ達をしきるボスだ。すっごいケンカが強くてしかも懐のでかい、やり手のねこなのだ。オレの憧れなのだ。


 もっともオレはまだ産まれて一年も経ってないし、弱くてもまだ平気だ。これから大きくなるんだから。




 でも魔物か。オレってばこの店の近所しか出歩かないから外の世界はよく知らない。よし、危ないならこれからもあまり遠くには行かないでおこう。


 オレは尻尾を揺らしながら外に出た。さ、今日は何して遊ぼっかな?



……まだプロローグみたいなお話ですので……

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