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プロローグ

転校生は黒板に桐谷壱期と書いた。

なんて読むんだろう。イチキかな・・・?

「桐谷です」


私はちゃんと聞いてるふりをして、別のことを考えていた。

これも内申キープのためだ。

「水守?」

先生の声。

「あ?あ、ああ、何でしょう、先生」

「桐谷がお前の隣に座るから、面倒みてやれよ」

「あぁ、はい。」


私は横に来た桐谷の顔をじっと見た。

うーん、ルックスは微妙かな・・・?


私は、さっきから気になっていた名前の読みを聞いた。

「ん?名前?あぁ、イチゴ」


え?

うそ・・・

「私もイチゴ・・・」

私の名前は水守苺。

ついでに言うと、神崎中学校の2年生。


桐谷は興味無さそうに、

「あ、そ」

と言った。


朝の会が終わって先生が教室から出ていくと、私は読みかけの本を取り出した。

この本は、次々人が殺されていく連続殺人の犯人を主人公が解き明かすという、ありがちな推理小説だ。

おもしろいのだが、かなりエグい。

悪趣味と思われるのも難なので、ブックカバーをつけている。


「何読んでんの?」

桐谷が聞いてきた。

「普通の推理小説。普通の。」

私は普通の、を強調して言うと、桐谷に見えないように背を向けた。

こころなしか、桐谷の目が輝いた気がした。

「えッ、推理小説?何?」


ははーん、読めたぞ。

こいつは推理小説マニアだな・・・

また厄介なのが隣に来たもんだ・・・


桐谷が覗き込んでくる。

私は読ませるものかと角度を変えた。

するとまた桐谷が覗き込む。

私はまた角度を変える。

そんなことが、休み時間中延々続いた。


激闘(?)の末、私がついに息切れして負けた。

「ふーん、『雪の下連続殺人』か・・・

マニアックなの読んでるね。」

「・・・よくわかったね・・・」

私は桐谷をにらんだ。

「だって、俺、推理小説オタクだし」

自分で言ったー!!

桐谷の目がより一層輝いた。


「それ、おもしろいよな」

「うん、そうだね。」

私はなるべく感情を込めずに言った。

「でも、すげーエグいよな・・・」


はぁ・・・

なんでこんな奴の隣になっちゃったんだろう・・・

名前いっしょだし、推理小説オタクだし・・・

ほんと、最悪・・・


「でさぁ、新しい部活作ろうと思うんだけど・・・」

「ふーん・・・ってえぇぇぇッ!?」

こいつは何を考えているんだろう・・・


「しょ・・・正気・・・?」

「まあな」

バカだ・・・

完全なバカだ・・・


本当なら無視するところだが、聞いてやろう。

「何部?」

「探偵部。」

「はぁぁぁぁッ!?

何それぇぇぇッ!?」


私の大声に何人かの生徒が振り向く。


「何それ・・・」

「推理小説を読みあさる部。」

「一人じゃ部になんないよ・・・

誰とやんの?」


桐谷は不意に右手をだして、指をさした。

「わッ私!?」

桐谷がうなずく。

「なんで!?」

「だって、推理もの、好きなんだろ?」


ちなみに私はそんなこと一言も言ってないぞ・・・

「ちょッ・・・」

「雪の下(略)を読んでるってことは、かなりの推理小説オタとみた」


うッ・・・

こいつと同類種なのは気に食わんが、認めよう。

休みの日には古本屋へ行き、中古の推理小説を買いあさる日々・・・


「じゃ、放課後、職員室前で。」

推理オタなのは認めたが、誰も参加するとは言ってないぞオイ!


でも結局参加する私ってどうなの?

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