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お前の精液をわたしにくれ!  作者: おふろあがり
寝取ってダーリン、殺意を愛に替えて
2/18

世界ルール~マニュアル講座~

 一つ、精霊のことをこの世界では『ジン』と呼ぶ。

 一つ、自然現象とは精霊(ジン)が巻き起こすものである。

 一つ、精霊(ジン)(みな)善人というわけではない。

 一つ、精霊(ジン)の召喚は利己的な自殺行為とみなす。

 

 これが世界のルール。マニュアルである。

 一つずつ解説をしていこう。まず、一つ目。


 『精霊のことをこの世界ではジンと呼ぶ』である。まあ、そのまんまである。フリガナをつけると、ジンになるということだ。じゃあ、人間は? となるが、残念ながら人間は「ニンゲン」だ。ただし、精霊がいる人間のことは『マスター』という。


 二つ目『然現象とは精霊が巻き起こすものである』これも、読んでその如く。雨は雨を降らす精霊、風を起こすものは風の精霊。単純なことだ。


 『精霊は皆善人というわけではない』これは少しばかり説明が必要だと思われる。しかし、簡潔にしていこうと思う。まず、身の回りにいる人間を思い浮かべてほしい、クラスメイト、同僚、なんでも構わない。その一人一人には個性があり、善悪があるはずだ。どれを悪とし、どれを善とするかはここの自由だが、精霊の場合は少しばかり違う。

 “人間又は精霊に迷惑をかけた”ということで悪が決められる。しかしこれもある意味では個々によって変わるのだが。まあ、そういうことだ。

 簡単に悪を述べるとなら「大雨」「雷」「大風」「台風」「地震」とかだろうか? 精霊の気分によって、小粒の雨が大粒の雨に変わる、そんな感じだ。長くなったが、三つ目はこれで終わりだ。


 最後に『精霊の召喚は利己的な自殺行為とみなす』まったく持って理解しがたいよ、そんな声が聞こえてくる。安心してくれ、誰もが通る道だ。

 精霊の召喚、それは契約と結びつく。契約とは大体が「自己の利益のため」だから『利己的な』という意味になる。

 『自殺行為とみなす』これは一体……? となる。これは契約についてを示している。精霊はまったく見に覚えのない赤の他人に急に呼び出されて「あれをしろ、これをしろ」と命令をされる。恩もないのに。所謂、雑用(パシリ)をするのだ。だから、その代わりに人間の「命」を契約としてもらうのだ。だから『利己的な自殺行為』となる。


 だが、精霊にも善悪があると書いた通り、契約をしてから人間(マスター)の言動次第では命を要求されない場合があるのだ。その場合は精霊の「望むもの・こと」をあげるのだ。人間界では人間が有利、それを理解しての精霊の行動なのかもしれない。


「チノさん、起きてください」

「……ん?」

 では、例を見ていこう。この二人の契約は仕事を手伝うこと、精液を与えてもらうこと、である。

「れーじ、わたしは寝てなんかないもん」

「そうすか」

 チノ、と呼ばれたのは『チノ・アーサタント』という王女の精霊らしい。れーじ、とは彼女を召喚した人間(マスター)である『聖原零司(きよはられいじ)』という探偵をしている男。

「マナが足りない、せーえき」

「……歯磨きしてきてください」

 マナ、とは精霊でいうと『魔力』。精霊と契約した人間(マスター)の仕事は「精霊に必要なマナを与える」こと。精霊ごとに与えるものは異なっている。間違っても、精霊全員がみな精液を要求しているわけではない。

「しようとした! チノは天才だからね!」

「うす。天才だからしてきてください」

 別に零司は、魔力が必要な契約をしたわけではないから、精液ではなく騙して(、、、、)ヨーグルトを与えている。思い込みでマナは回復するようだ。単純な精霊。

「せーえきって向こうにいた時に聞いてたのより甘いんだね」

「……そうすね」

 精液精液とうるさいから、どんなクソビッチ精霊かと思ったらなんと生娘らしい。王女だからね、と言い訳をしていたが。納得はできる。

 だが、いつまでヨーグルト精液がバレるかは時間の問題である。

「チノさん、精霊って普通は実体化できないのが普通なんじゃないすか」

「ふんっわたしを誰だと思っている! わたしはねえ、人間界の英雄アーサー王と、精霊界の英雄サタン王の間に生まれた娘なんだよ! そんじょそこらの底辺な精霊のマナと一緒にされたくないね!」

 うん、まったくわからない、と零司は頷く。どうやら、マナが多い分実体化できて、マナが少ない(ちの曰く底辺)精霊は人間(マスター)の一部になるらしい。一部なんて聞くと恐ろしいが、イヤリングだったり、指輪だったり、お洒落アイテムに成り代わり、いざとなったら実体化するらしい。

 いざ、というのは物騒なアレだ。人間の中には人間を殺したり、殺したり、殺したり……するアレだ。精霊は人間(マスター)がいないと、人間界では生きれないので死に物狂いで守りぬくのだ。

「アーサタントって、アーサーとサタン……?」

「む! さすが探偵をやっているだけあるな、その通りだよ! 愚民にしてはなかなか頭が回るじゃん! か、顔も好みだしっ」

「照れないでください」

 傍若無人でいて天の邪鬼な精霊を引き当てた可哀想な人間(マスター)と、結構自分好みの人間(マスター)を引き当てた頭が可哀想な精霊(ジン)

 頭の可哀想な精霊がトンでもないやつだった、とはまた次の機会で知ることになるだろう――。

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