2.歓迎会
今日、皆に集まってもらったのは言うまでもない。
異世界からのお客様が見えた。
我らは、再び巡り会えたことに感謝し、彼女を歓迎する!
御犬歴1822年 村長(当時)ポチのあいさつより
磯貝博士と美空は、村人(村犬?)の歓迎会に出席していた。
「さて、みなさんに集まっていただいたのは、言うまでもありません。ふたたび、わが村に異世界より友人がやってまいりました! ふたたび巡ってきた出会いに感謝します!」
村長さんがそう言った時、周りから歓声が上がった。
どうやら、この世界の住民は、本当に美空たちのことを歓迎しているようだ。
「磯貝博士。一言頂戴してよろしいでしょうか?」
「わかった…。」
磯貝博士が、先ほどまで村長さんが立っていたところに移動してマイクを握る。
その様子を村民たちはかたずをのんで見守っていた。
「諸君。久方ぶりである…こっちの時間だと、確か8年くらいぶりか…さて、私は長々とした挨拶は嫌いだから、さっそく私の助手を紹介させてもらおうと思う…海花美空君だ。」
村民が一斉に私の方を向いて拍手をする。
私は、おどろきつつも笑顔で手を振ってそれに答えた。
「美空君。こっちへ来ないか! 君も一言言いたまえ!」
ちょっと…いきなりそれは…
美空は、そう思っていたのだが、村民から期待のまなざしで見つめられている以上、拒むことも無理だと考えて壇上に上がる。
「初めまして…海花美空です。私は、異世界へいくと言う経験は初めてなので、何かとご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします。」
とりあえずこんな感じで大丈夫なはず…
「あれ?」
会場は、とんと静まり返っている。何がまずかったのかと美空が必死に思い返しているその時…
パチパチと誰かが手をたたく音がした。それは、次第に大きくなっていき、盛大な拍手となる。
「ありがとうございます!」
美空は、深々と頭を下げる。
「さぁ、磯貝博士と美空さんの訪問を記念して乾杯!」
「乾杯!」
ずいぶんあっさりと終わったあいさつも終わり、村民たちの宴会が始まった。
歓迎の踊りやおいしい料理も出てきたこともあり、楽しい夜だったと美空は感じていた。
宴会の会場となっている村の広場から少し離れたところ…
そこには、いつの間にか会場を抜け出した磯貝博士と村長さんがいた。
「村長さん、あの後どうなんですか?」
「あの後か? ハチからも聞いたと思うが、この村の村長だったポチが王国の宰相となった…あとは…皇太子さまが王位を継承なされたぐらいか…。」
「なるほどな…ところで、私の記憶に間違いがなければ、今年で王国独立から30年になると思うのだが、そのあたりのイベントは、あるのかね?」
磯貝博士の問いに対する答えを考えているのか、村長さんは顎に手を当てて考えるポーズを取っている。
「そう言えば、1週間後に王都で王国独立30年記念式典が行われるはずです…そうだ! もしよかったら磯貝博士もご出席されますか?」
「式典にか? ポチの顔も見たいし、ちょうどいいかもしれんな…。」
「わかりました…それでは、国の方へ連絡を入れておきます…早馬を出しますので、明後日には、招待状が届くと思いますよ。」
村長さんがそう言うと、磯貝博士は満足そうにうなづいた。
それを見て彼は、ホッとしたような顔をする。
「こんなところに呼び出して悪かったな…私は、会場の方に戻らせてもらうよ。」
磯貝博士は、そう言い残して会場の方へ歩いて行った。
「磯貝博士…あなたもお変わりないようで何よりです。」
村長さんの声が聞こえていたのかいないのか、磯貝博士は、立ち止まることなく立ち去って行った。
こうしてこの場には、村長さんだけがいるといった状況になった。
「さてと…王国に連絡を入れないと…。」
村長は、手紙を出すために役場へと向かった。
読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。