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あの空を目指して  作者: 白波
序章 異世界学
1/12

1.磯貝博士と言う人は



 この世には、不思議な現象がたくさんあるものである…


 ここに宣言しよう! 私は、すべての謎を解明すると!


 この言葉は、ある研究者が、名誉ある賞を受賞したときに発した言葉である。この後から、この言葉は、その人物を代名詞として知られるようになる。






 世界的に有名な研究者と知られる磯貝(いそがい)博士の研究所がある緑松(みどりまつ)町…この町に住む少女海花(うみはな)美空(みそら)は、磯貝博士を訪ねて町はずれの研究所へ来ていた。


「磯貝博士! いらっしゃいますか?」


 美空は、ゆっくりと扉を開けて中に入った。

 この研究所は、見た目こそ廃屋を思わせるようなボロなのだが、実際に中へ入ってみれば、最新の機械が並び、真新しい机には山のような資料が積まれている。


「磯貝博士!」


 美空が大声で呼ぶと大量の資料の中から、女性が体を起こした。


「なんだね…人の研究所にずかずか入り込むわ、人が寝ているところを起こすわ、おまけに訪問者が美男子ではなく美空とは…まったく…相変わらず君は、礼儀正しい口調と行動が一致しないのだね…。」

「前の二つは、一万歩譲って私が悪いと認めますが、最後のは少し理不尽に感じます…。」

「何を言っておる…譲る必要などないはずだが?」


 そう言いながら立ち上がったきれいとはいえない白衣を着て、背丈ほどもある長いボサボサの髪の毛をしていて、けだるそうにあくびをしている彼女こそ、ある分野において世界的な権威である磯貝博士である。


「博士…そろそろ髪を切ったらどうですか?」

「まったく…誰に向かって言っているのかね? 私には、そのような行為は不要だ…用はそれだけか?」


 磯貝博士は、基本的に研究所から出ることなく、ひたすら自らの研究に励んでいる関係上、服装やら髪型やらに一切気を使わないというのが基本的なスタンスであるため、髪の毛がボサボサで伸び放題というような結果に陥るのだ。


 美空自身、それはわかっているものの、文句を言わざるを得ない状況にある。一番の問題としては、彼女がこのまま客人と会うことが多いと言うことだ。


 本人曰く「毎日風呂に入ってるから問題ない」だそうだが、そう言う問題ではないと美空は思っていた。


「でも、身だしなみは大切ですよ? 髪の毛を整えるとか、白衣を新調するとか、その程度のことはしたらどうですか?」

「その程度とは、どの程度だ?」

「はぁ…あなたとまともに話そうと思った私が間違いだったようです…この話は置いといて、本題に入らせていただきます…。」


 磯貝博士とまともに話そうとした自分が間違っていたと悟った美空は、本題に入ろうとしたが…


「その程度がどの程度かの答えが出ていないではないか!」


 めんどくさい部分が出てきた…


 この時、美空はそう思っていた。

 磯貝博士は、研究者としての信念からなのか、どんな事柄に対しても明確な答えを求める性格で、それは、日常会話でも同じである。

 つまり、磯貝博士は、美空がどの程度の具体例をあげない限り納得しないと言うことである。


「そうですね…たとえば、髪の毛を切って、整えてみたりとか、先ほど言ったように白衣を新調するというのはどうでしょうか?」


 これだ…この答えなら納得していただけるはず…


 美空は、確信を持っていたのだが、次の言葉であっさりと裏切られることとなる。


「何を言っておる? 私は、失恋などしておらんぞ…だから、髪を切る必要などない!」


 なぜ、恋愛に関する知識が限りなくゼロに近いこの人にそんな知識が…


 思ってもみない返答に美空は、動揺を隠せなかった…

 美空の知る限り、恋愛とか、遊びとか、研究に関すること以外の知識が、皆無に近いこの博士にそんな知識があったとは、思っていなかったのだ。


「なるほどな…その反応を見る限り、宙太(そらた)の言っていることは正しかったようだな…たまには、あいつも面白い話をしてくれるものだな…。」

「そっそうですか…あー磯村(いそむら)君が…。」


 本日二度目となる予想外の答えに、美空は、へなへなと座り込んでしまったのだった。



 読んでいただきありがとうございます。


 これからよろしくお願いします。

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