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ステータス

 とりあえず、やるべきことはやった。となると、次にやることは能力の確認だ。

 いやー、使おう、使おうと思っていながら、使っていない能力があったんだよな。

『鑑定』

 俺は心の中でそう念じてみる。すると、頭の中にデータが浮かび上がってきた。




【ステータス】

種族:人間

性別:男

名前:高遠 昴

年齢:15

職業:無職

体調:健常

属性:火、水、風、土、雷、木、闇、光、無、精神、時(適合率MAX)

才能:魔法LvMAX、付与魔法LvMAX、格闘術LvMAX、片手剣LvMAX、両手剣LvMAX、

   細剣LvMAX、刺剣LvMAX、刀LvMAX、剣術LvMAX、槍Lv1、斧Lv1、弓Lv1、

   投擲Lv1、サバイバルLvMAX、鍛冶LvMAX、服飾LvMAX、細工LvMAX、

   魔具LvMAX、彫刻LvMAX、絵画LvMAX、大工LvMAX、農業LvMAX、牧畜LvMAX、

   教師LvMAX、薬師LvMAX、翻訳LvMAX、鑑定LvMAX、天才

能力:ウィルス耐性、毒耐性、洗脳耐性、呪い耐性、器用、運動性能上昇、両利き、

   記憶力増強、理解力増強、老化遅延、超人

熟練度:魔法220、隠密525、軽業210、気配察知250




 ……うん、やっぱり、俺チートだったね。こうして形にしてみるとわかる、才能に能力があきらかにおかしい。熟練度も数値が異常だよな。

 普通はこんなんじゃないよな。おれはこっそりと、坊主に向かって鑑定を使ってみる。




【ステータス】

種族:エンシャントゴブリン

性別:女

名前:

年齢:9

職業:無職

体調:健常

属性:水、木、闇、無(適合率高)

才能:魔法LvMAX、双剣LvMAX、弓Lv1、

能力:両利き、半精霊、先祖返り

熟練度:




「な、なんだって!」

 俺はあまりの驚きに思わず、某ミステリーでマガジンなレポーターのように声を上げてしまった。

「お、お前、女だったのか!」

 腹にグーパンがきました。


「……どうして、私が男だと思っていたの?」

「えっ、いや、あの、どうしてでしょう?」

「……質問しているのはこっち」

 えー、正直に言います。怖い、怖すぎる! 

 表情が顔に出ず、言葉も少ないのはいい。けど、気配が違う。さっきまでまとっていたものが、口下手な子供って感じなら、今は無口な殺し屋だ。

 余計なことを口にすれば命は無い、そんなハリウッド映画にでも出てきそうな暗殺者の雰囲気が出ていて、俺の口調も萎縮して敬語になってしまった。

「あの、ホラ、髪短いじゃないですか」

「……髪が短ければ全員男なの?」

 うん、質問の形になっているけど、それ答えは聞いていないよね。

 仕方ないじゃないか! 髪型も服装も男っぽいし、こんな所で生活しているせいだろが、歩き方やら立ち振る舞いからワイルドなんだよ! うん、誤解した、俺は悪くない。……本人には言えないけど。

 黙っていることしかできない俺は、非難気な視線に耐えながら再度鑑定を発動する。

 こいつが女だってことに驚いて色々すっ飛ばしたので、暇つぶしがてら調べてみることにしよう。まずは種族だ。エンシャントゴブリンってなんだ、普通のゴブリンとは違うのかね。



 【エンシャントゴブリン】

 始まりのゴブリン。原初のエルフが精霊と森、原初のドワーフが精霊と大地から生まれた様に、精霊と人から誕生した原初のゴブリン。

 限りなく精霊に近く、限りなく人に近い種族。それゆえ、人の血を持つ分同じ半精霊であるエルフやドワーフより身体能力、繁殖能力に優れる。だが、反面寿命、生命力は劣る。精霊に近いゆえ魔法の才も高い。



 始まりのゴブリンね。なんかよくわからないけど、凄そうだな。しかも、エルフやドワーフと似たような存在なのか。

 意外――でもないか。なにかで読んだことあるが、エルフというのは民話などでは人をたぶらかしたり、赤子を攫い、疫病を広めるような存在だったらしい。けれど、指輪物語で有名なトールキン先生が指輪物語の中でエルフを美しく、文化的で仁義に溢れた知恵者として描き、以降エルフの扱いは変っていったらしい。まあ、その派生で、悪いエルフをダークエルフやらゴブリンやらと言うようになったみたいだけどな。

 さて、次は気になった能力を見てみるか。



 【半精霊】

  エーテル体である精霊の血を濃く引くもの。魔法の才に長け、魔力も多く、属性との親和性も高い。



 【先祖返り】

  古き血が目覚めた状態。種族を原初の存在へと近づける。



 説明から考えるに、先祖返りでエンシャントゴブリンになり、そのついでに半精霊という奴になったという感じだろうか。父親と母親とはきっと、違う種族だったのだろう。まあ身を挺して守っていたのだから、そんなことは些細なことだったのだろうけれど。しかし、先祖返りに原初の種か。なんか、面倒ごとのフラグが立っている気がするな。

 そんなことを漠然と考えていると、冷えた声が耳に届いた。

「……話聞いている?」

 俺は土下座した。


 正座をして聞いていたおかげで、足の感覚が無い。説教、長すぎだろう。まあ、今度はマジメに聞いていたおかげで何とか許してもらえた。今後地雷は踏まないように気をつけよう、マジで。

 さて、説教も無事終わったことだし、さっきお嬢のステータスを見て疑問に思っていたことを聞いてみるとするか。

「なあ、お前の名前、何て言うんだ?」

「……ナマエ?」

 首を傾げ、子供が親にわからない言葉を問いかけるような調子で、質問が質問で返される。

 やはりか。ステータス欄で名前が空白になっていたから気になっていたが、思った通りだった。

 まあ、人とは違う種族なのだから、文化も色々と違っていてもおかしくはない。

 それに理由だって、色々と考えられる。例えば、特定の年齢にならないと名前を与えられないとか。個体数が少なく名前がいらなかった。誰かの名前を継ぐためその間は名無しであるなど。

 しかしまあ、いくら推論を頭でこねくり回していてもしょうがないか。まずはお嬢に名前のことを説明する方が先決だ。

「名前っていうのは、そうだな、誰かを示す言葉だな」

「……誰かを示す?」

「そうだ。例えば俺は人間って種族だ。で、俺以外にも人間はいる。そうした場合、俺と他の人間を見分ける必要がある。その一番簡単なものが名前だな。ちなみに、俺の名前は高遠昴な」

「……タカトウスバル」

 口の中で転がすように、お嬢が俺の名前を口にした。まだこちらに来てたいした時間は経っていないが、ものすごく久々に呼ばれた気がするな。この世界じゃ考えられないようなことばかり、あったせいなんだろうな。

「そうだ。それが俺の名だ。流れで教えたけど、別段口にしなくても良いぞ。今は俺達二人しかいないからな」

 そう、軽い口調で告げた。事実、軽い言葉だった。愛着がないわけではないが、世界が変った今他の名前に変えたところで問題はない。所詮、その程度のものだった。

「それはダメ!」

 けれど、どうやらお嬢には違うようだった。いつになく口調は強く、瞳には怒りの気配が強く込められていた。

「……タカトウスバルは大事な人。父様と母様と、そして、――私を救ってくれた。他に誰もいない。だから、他の誰かと同じようには呼びたくない」

 大事な人、ね。まさか会って数時間なのに、そんなことを言われるとは思ってもいなかった。

 俺を見つめるお嬢の視線は真剣でそこにウソなんて軽薄なものが、入り込める余地は無い様に見える。

 参ったね、こりゃ、本気で言っているよ。大したことしてないんだけどな。まあ、かなり、嬉しいけどね。

「――そっか。じゃあ、スバルって俺のことは呼べ。親しい奴はそう呼ぶからな」

「わかった、スバル」

 笑みを浮かべそう口にしたお嬢は、可愛かった。無表情ばかり見ていたせいもあるのだろうが、その笑顔は透明であたたかくどこからどう見ても、年頃の小さな少女だった。

 そんなことで笑うなよとも、笑ってくれてありがとうとも思った。

 こいつはもっと笑うべきだ。けど、笑えない理由もわかる。なのに、俺なんかのことで簡単に顔を崩すな。お前の笑顔はそんなに、安くはないだろうに。

 俺は自分の頭を強くかき、思う。絶対こいつの笑みを安売りにしてみせると。特別なものになんてしてやるか。お前がいつでも笑っていられるようにしてやるよ、覚えてやがれ。

「んじゃまあ、お前の名前を決めるか」

「……私の名前?」

「そうだ。いつまでも、『お前』じゃ、他人行儀過ぎるしな」

 お嬢の表情こそ変わらないが、嬉しそうに目は細められている。どうやら、期待されているようだ。

 ちょっと、ハードルを上げてしまったが、まあ、いい、それも男の甲斐性というやつだ。それに名前はもう決めてある。

「サクラって、いうのはどうだ」

「……父様と母様の墓標にした木?」

「ああ。春になるときれいな花をつける木だ。俺のいた場所では花の名前を持つ女性というのは、ポピュラーでな。どうだ?」

「……わかった。私の名前は今日から、サクラ。ところで、スバルのタカトウという名前は何なの?」

 心なし弾んだ声で、お嬢――サクラは問うてきた。両親に縁があるせいもなのか、気に入ってもらえたようだ。

「んっ、タカトウか、苗字っていうんだ。まあ、大雑把に言うと一族――家族を表すものだな」

「……私にそれはくれないの?」

 疑問をこめた口調でサクラが上目遣いで、俺を見上げる。

 別段、苗字を上げるくらいはいいんだが、これって俺と家族になりたいってことだよな。

 いや、サクラがそれでいいなら、俺はかまわないんだけどね。子供一人養うくらいの甲斐性はある。……チートのおかげでね!

 だから、問題は一つだけだ。

「やるのは構わない。ただ、サクラ、お前、両親の他に家族はいないのか?」

「……いない。父様も母様もカケオチしたから、身内はいないって言っていた」

 駆落ちか。つまりは色々あったってことだよな。身分とかそういうのかね。まあ、考えたところで意味はないし、サクラには関係ないことだな

 とりあえず、今大事なのはサクラが天涯孤独ってことだ。

 ――俺と同じ、この世界でたった一人だ。

 ……それは寂しいよな。

「――そっか。なら今日からお前は、タカトウサクラだ。一緒にがんばっていこう」

「……うん!」

 サクラが笑い、俺も笑う。

 笑うということは、理屈は色々あるらしいが本来は威嚇なのだと誰かが言っていた。

 ではなぜ、赤ん坊は笑うのだろうか。弱い生物が威嚇をしたところで、マイナスにしかならないんじゃないだろうか。

 笑うということは、一つの儀式じゃなんじゃないだろうか。あなたのそばにいてもいいと、あなたといたいと告げる魔法の言葉じゃないだろうか。だからこそ人は、笑みを見ると心が安らぐのではないだろうか。その気持ちが嬉しくてたまらないから。

 サクラと笑いあいながら、ふとそんなことを思った。

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