転生準備完了しました
進むべき道は決まった。となると、次は才能の取得だ。
俺はタブレットを操り、才能を眺める。
魔剣を作るのだから、当然、魔法の才能は必要になる。よし、とりあえず、全属性LvMAXまで取得してみるか。ちなみに俺が向かう異世界にある属性は火、水、風、土、雷、木、闇、光、無、精神、時の全部で十一属性である。結構なポイントを消費するが、ポイントはかなりあるので問題は無い。属性だけでは魔法は使えないので次は魔法の才能を限界まで取る。すると、タブレットの画面に新しい才能が表示された。
【付与魔法 Lv.1 3ポイント】
付与魔法とは、なんて鍛冶向けな魔法だろう。もちろん、限界まで取得だ。
属性に、魔法に、付与魔法、これで魔法の才能は問題ないだろう。となると次は剣の才能だ。一流の鍛冶師は武器も扱えなきゃダメっていうし、実際少年跳躍で連載していた竜探索物の鍛冶師さんも凄腕の剣士だったし、ここは俺もそれに習いある程度武器を扱える才能は必要だろう。
ということで、タブレットを操作し、片手剣、両手剣、細剣、刺剣、刀の才能を限界まで取得し、槍、斧、弓、投擲の才能をLv1分だけ取得する。槍や斧も作るつもりだが本業は剣だ。だから、他の武器はそこまで扱えなくても構わない。
とりあえず、武器を扱うための才能はこれくらいでいいだろう。あっ、待てよ。ちょっと確認しておくことがあった。
「あの、すいません、武器とか貨幣とかってポイントで手に入ったり、いただけたりするんですか?」
「申し訳ありません。そちらは現地調達でお願いいたします」
執事さんはすまなそうに眉根を寄せ、深く頭を下げた。
「ああ、そういうことならいいんです。確認のためだったんで、気にしないで下さい」
謝罪されるほどのことでもないので、そう言って俺は執事さんの頭を上げさせた。手に入らないのなら、それに合った対応をすればいいだけの話だ。
俺はタブレットの画面を押し、格闘術の才能を限界まで取得した。向こうに着いたら徒手空拳だというのなら、それでできる才能を手に入れればいい。まあ、魔法も使えるから問題ないと思うが念のためだ。格闘術の才能を取ると、新たに剣術という才能が追加されていたので、これも限界まで取得した。
よし、武器の使用についてはこれくらいでいいだろう。次は生活関係の才能だ。まずは、一番重要な言語関係の翻訳という才能を限界まで取り、次に鑑定という才能を同じく限界まで取る。
翻訳は文字通り、相手の言葉が理解できおまけに文字も大丈夫というコミュニケーションには必須のものだ。
鑑定はアイテムの名前や性能などがわかるらしい。しかも、生き物にも可能だという。使ってみないことにはわからないが、いわゆるステータス的なものが見れるのだろう。
翻訳と鑑定、生活に関してはこの二つがあればいいかなと思っていたが、画面の隅にサバイバルというのがあったので限界まで取得することにした。魔物が跋扈し、文明レベルが低い以上、こちらの世界のような生活は期待できないだろう。それならば、サバイバルの才能は取っておいてそんは無いだろう。
生活関係はこの程度でいいだろう。それじゃあ、メインの鍛冶関係の才能を取得するとしよう。
ある程度めぼしはついているので、タブレットから必要な才能を選択する。鍛冶、服飾、細工、魔具、彫刻、絵画、大工、農業、牧畜をそれぞれ限界まで取得する。自分で取っておいてなんだが、武器を作るための鍛冶と魔法を用いた道具を作成する魔具以外は必要ない気はするが、もしかしたら、魔獣の爪や牙や皮なんかも細工する必要があるかもしれないと思い金属以外も扱えるようにした。彫刻や絵画はゲームに出てくるような、実用視よりも見た目重視の武器を作成する際に使えそうだと思い取得してみた。格好良いだけの武器というのもある意味ロマンがある。農業に牧畜は鍛冶をやりながらスローライフ生活も悪くないと思い取ってみた。
さて、才能の方はこんなもので良いだろうか。後は能力と能力値を取得するとするか。いや、ちょっと待てよ、鍛冶をやるということは将来弟子を取ることがあるかもしれない。それに火を扱うからやけどや、刃物だって扱うから切り傷になることもあるだろう。となると、教えるための才能と薬を作る才能がいるな。教師と薬師の才能も限界まで取得しておこう。
「よし、才能の方はこんなものかな」
才能は終わり、次は能力の取得だ。
病気にかかりたくないし、向こうの世界独自の病原菌もいるかもしれないのでウィルス耐性は必須だ、ついでに毒耐性、洗脳耐性、呪い耐性も取得しておく。二度目の人生はできることなら老衰で死にたいからな。
器用、運動性能上昇、両利き、記憶力増強、理解力増強も、年齢-10、老化遅延も取得しておく。
能力値に器用や敏捷があるのに、器用や運動性能上昇を取ることに意味があるのかと思うかもしれないが、執事さんに聞いてみた所微妙に違うらしい。能力の器用は手先の器用さで、能力値の器用は主に武具の扱いに関係したりしているらしい。弓を撃ち的に当てるのは能力値の器用が関係するらしい。もっとも、能力値の器用を上げると多少は手先なども器用になるから全く無関係ではないらしい。
運動性能上昇も器用と似たような所がある。敏捷を上げれば当然足は速くなる。だが、それだけだ。けれど、運動性能上昇は宙返り等の以前までできなかったものができるようになるのだ。運動が全くできなかった俺にはありがたい能力だ。
両利きは両手が利き腕になり、記憶力増強は記憶力の向上、理解力増強は理解力の向上、年齢ー10は十歳若返り、老化遅延は老化が遅くなる。全て名前どおりだ。年齢に関してはせっかく異世界に行くのだから、心機一転するためと今度の人生は少しでも長生きしようと思っただけだ。
「能力もこんな所かな。んっ?」
最後に能力値にポイントを振り分けようと思っていたが、視界の隅に気になる能力があった。そこには【天才 100ポイント】、【超人 100ポイント】とあった。
詳細を見てみても詳しいことはわからない。まあいいや、ポイントもあまっているし、隠しみたいでレアっぽいから取ってみるか。
天才と超人を取得し、ポイントのあまりはきっかり二百となった。そのポイントをほぼ七等分になるよう調整し、振り分けた。RPGでもなんでもわりかし平均的に育てるタイプなので、こういうポイントはバランスよく振り分けるのが俺のジャスティスだ。
「ポイントの振り分けが終了したようですね。お疲れ様です。それではこちらをどうぞ」
執事さんは頭を下げ、恭しい所作で皮でできた背嚢を渡してくれた。
「これは何ですか?」
「取得しました才能に関する本が入っております。基礎的な内容ですがご参照下さい」
あくまでも才能だから、知識は無いからな。感覚的な部分以外の理論的な部分は読んで補えということか。ありがたく受け取っておくか。
「ありがとうございます、読んで見ます」
「いえいえ、これもポイントの内ですから気にしないで下さい。これで転生の準備は全て終了となりましたので、これから転生の方をさせていただきます」
そう執事さんが言った途端、俺の視界は揺れ、立っていられなくなり、意識を失った。
そして、目を覚ますと俺は森の中にいた。