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拠点整備二日目 珍客

「――何だ、これ」

 サクラ用の武器を作り終え、付与魔法の説明も教授したので鍛冶場から出ると、二つの人影が倒れていた。

 仰向けに倒れ込み、小刻みに体が震えている。二人とも背中に羽が生えているので、人間ではないのだろう。

 おそらく、魔力中毒にかかり死体のように寝転がっているのだろうが、種族も知りたいし、鑑定を使ってみるか。



【ステータス】

種族:エルダークイーンビー

性別:女

名前:

年齢:15

職業:女王

体調:魔力中毒

属性:風、土、木(適合率高)

才能:魔法Lv2、裁縫LvMAX、指揮Lv2

能力:女王の器

熟練度:



【ステータス】

種族:エルダークイーンパピヨン

性別:女

名前:

年齢:15

職業:女王

体調:魔力中毒

属性:風、土、木(適合率高)

才能:魔法Lv2、製糸LvMAX、指揮Lv2

能力:女王の器、製糸生成

熟練度:



 どうやら、蜂と蝶の亜人らしい。なんでここにいるのかは知らないが、とりあえず回復させるか。この状態じゃ話にもならないし、ステータスを見た限りじゃあまり強そうにも見えない。念のためある程度の制限をつけて回復させてもらうけどね。

「ロークシーズ」

 魔力耐性魔法を二人にかける。ただし、効力は弱めなので本調子で動くことはできないだろう。

「さて、事情聴取と行きますか」


 話を聞くことにしたので、俺たちが寝ているログハウスに二人を運んだ。

 テーブルと椅子は最初に作っていたので、そこに座らせ、回復を待つ。俺の隣にサクラが座り、対面に二人という座席だ。

 大して時間はかからずに二人は目が覚め、突然景色が変わったことに驚いているようだった。顔色は悪く、気だるそうだ。これなら激しい動きはできないだろう。

「……あのここはどこでしょうか?」

「確か、私達見たこともない果物の前にいた気がするんですが」 

 最初に口を開いたのは、エルダークイーンビーのビーさんだ。ちなみに名前がないので俺の中で勝手にビーさんと呼んでいる。エルダークイーンビーじゃ、長すぎる。名前の通り蜂の亜人なんだろう。頭からは二本の触覚が生えているし、髪こそ長い金髪で、サクラと同じで長くて大きな袋に頭と手足が通る穴を空けただけのような粗雑な服から覗く肢体には、蜂を思わせる黄色や黒の毛が被っている。背中にはガラスでできているかのような、透明な羽が生えている。けれど、顔の作りは人間で、緑色に輝く切れ長の瞳や整った鼻梁などどこからどう見ても美人さんなところや、指の数に手足の形は人間と変わらないので、特に歪だったり、気持ち悪かったりもしない。

 そしてそれは、エルダークイーンパピヨンのパピさんも変わらない。もちろん、パピさんというのは俺が勝手に付けたあだ名だ。

 ビーさんと同じように、頭からは二本の触覚が生え、服も似たような粗雑なもので体を被う毛が極彩色で、背中に生えた羽が蝶のようにきやびやかで幾何学模様が描かれている。美人で、赤色の長い髪に青色の瞳をしている。

「ええ、あなた方は私共の畑の前で倒れており、おせっかいながらこうして介抱させていただいたところです」

「それはご丁寧にどうも。――畑ということはアレはあなた方が育ているんですか?」

 ビーさんが唾液を嚥下し、真剣な表情で言った。いや、そんな顔をするほどのことじゃないと思うんだけど。

「ええ、まあ、そうです。ところで、あなた方はどうしてここに?」

「いや、美味しそうな匂いがしたんで来てみたんですが」

「後一歩のところでダウンしてしまいました」

「ハァー、そうですか」

 頭に手を当て照れたように笑ながら二人はそう言ったが、自体が飲み込めない俺としては空返事をするしかない。

 蜂と蝶、共に花の蜜を啜る昆虫だ。それが人並みになれば蜜の代わり果物を食べることもあるだろう。

「あの、果物を譲っていただけくことは可能ですか?」

 遠慮がちに目を伏せ、パピさんが聞いてきた。

 どうやら勝手に取ったり、武力なんかで手に入れる気はなさそうだ。まあ、俺がまだ何の返答もしていないからで、拒否したらどうなるかわからないが。

 もっとも、俺としては断る理由はないけれど。

「ええ、構いませんよ。ただ、代わりに欲しいモノがあるのですが」

「それはなんです?」

「糸をいただけますか」

 パピさんの能力にあった製糸生成、これで絹糸が作れるんじゃないかと思っていたんだよね。綿やら麻はあるけど、絹糸はなかったから、安定して手に入るなら願ってもないことだ。

「えっ、そんなものでいいんですか!」

 思ったよりも簡単な要望だったのか、拍子抜けという表情をパピさんはしていた。気持ちはわかる。果物が欲しいなんていうのは、俺も同感だからだ。

「わ、私も、ハチミツだったら、手に入りますよ!」

 慌てた調子で顔を真っ赤にして、ビーさんが言った。きっと自分だけもらえないと思って、急いで口にしたのだろう。仲間外れするつもりはなかったが、物を交換する以上どこかで区別は必要だったから、ハチミツが貰えるならそんなことはしなくていい。

「では、それでお願いします」

 こうして、俺は絹糸を安定して手に入れることができるようになり、学校で習った記憶から織機を作りそこからできた布地で服を作成することができるようになった。ただ、それを見た、ビーさんとパピさんにも同じく作れと迫られることになったけれど。

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