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星を見上げて

作者: 玲樹

 「ねえ、パパ。お空に光るお星様は何でできているの?」

 「あれはね。死んでしまった人たちがお空で私たちを見守っているんだよ」


 大好きだったパパが、その日の夜に突然亡くなった。でも、私は泣かなかった。葬式の時はママやほかにも知らない人たちも目に白いハンカチを当てていたけれど、私は、泣かなかった。

 だって、パパはあそこにいる。暗い夜を照らしてくれる。私たちを、見守ってくれる。

 私は満天の星をたたえた青白い夜空を見上げた。

 「そうだよね。パパ」

 そう訊ねたけれど、星は応える事もせずにただただ瞬いてこちらを見下ろしているだけ。私は不思議に思って、もう一度パパに向かって話しかけた。それでも、やはりパパの声は聞こえなかった。

 ――そうだ、遠すぎて聞こえないのかも

 そう思った私は、町の広場へ向かった。あそこには大きな矢倉がある。きっとあそこなら私の声が届くはず。私は矢倉のはしごに手を掛けた。

 危ないから子供は登ってはいけないと、いつもママに言われていたけれど、今日はパパに会いに行くんだから、特別なんだ。


 矢倉のてっぺんに来ると、視界が大きく広がった。町で一番高い矢倉の上では視界を邪魔するものは何も無い。そして、上を見上げれば星の瞬きがより近く見て取る事ができた。

 「パパ、来たよ。ここからなら声が届くでしょ?」

 しかし、見上げた空から返事が来る事は無かった。耳をどんなに澄ましても、冷たい夜風の声しか入ってこなかった。

 今になって初めて気づいた。

 「パパ?どこにいるの?」

 パパの姿が見えない。星を一つ一つ見てみても、それらは全て同じ形にしか見えないのだ。

 ――どれがパパの星なの?

 私は空を見上げたまま、思い切り目を凝らしてパパの星を探した。それはもう、夢中なって。そして、私は最後の足を踏んだ。私はこの暗がりの中、全く気づかなかった。

 矢倉には柵がなかった。そういえば昨日、パパが教えてくれた。広場の矢倉は危険だから取り壊されるのだと。そして、そこに大きな公園ができるのだと。



 私は目を開いた。いつの間にか閉じていたまぶたをゆっくりと持ち上げた。

 するとすぐ隣から声がした。

 「やあ」

 「パパ?」

 私のすぐ横で、パパが微笑んで頷いた。

 「パパっ!」

 私は思わずパパに抱きついた。パパは、胸の中で声を上げて泣く私を、そっと抱きしめる。


 「パパ、ずっと一緒だよね?」

 「ああ。ずっと一緒だ」


 空には満天の星が輝き、そしてその傍らで、小さな連星が静かに瞬いていた。


はじめまして、玲樹です。

インスピだと、星を掴むために梯子を積み上げる男が結局地面に落ちて星を掴んだ(星になった)という、なんとも皮肉な話にしようと始めたのですが、そんな無邪気で愚かな考えをいい大人がするだろうか?と思い至って急遽主人公を子供にすり替えました。

思いのほか、純悲劇です。

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