そんなことないわ
夕方のファストフード店。女子高生らしい2人が会話しているのが聞こえる。
「私ってほら、かわいくないから…」
「そんなことないわ」
「太ってるし…」
「そんなことないわ」
「頭だってよくないし…」
「そんなことないわ、私を見てよ、かわいくないし、太ってるし、頭も悪いわ」
「……そんなことないわ」
「ほんとにそう思う? 私に向かってかわいくないとか太ってるとか頭も悪いとか、よく言えるわね? ぜいたくだと思わないの? 『そんなことないわ』って言われたいだけなんでしょ? あなたの『かわいくなくて太ってて頭が悪い』という評価が基準だとしたら、私の評価は『バケモノみたいに不細工で巨大でうすのろばかまぬけ』よ?」
「そ…そんなことないわ…」
「じゃあ答えて。私とあなたとでは、どっちがかわいいと思う? 客観的に見て」
「お…同じくらい? ほら、かわいさにもいろんなタイプがあるし…」
「へえ。じゃあ私とあなたとでは、どっちが太ってると思う?」
「……ちょっとだけ、あなたのほうが太い…かも…」
「そうね。じゃああなたより太ってる私に向かって、『私は太ってる』って言う意味は何? 『私のほうが太ってるわよ』って言わせたいの? 『いえいえ私のほうが』って茶番がやりたいの?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「私はこないだの期末考査で下から4番だったけど、あなたは?」
「それは…もうちょっと上だけど…」
「要するに、自分より下の人間に向かって『私ってあなたよりこんなに上だけど、謙虚なのよ』って思わせたいの?」
「そんなことない。そんなつもりじゃないのに…ひどいこと言わないで…」
「じゃあどういうつもりなの。本気でわからないから教えてよ」
「……白鳥さんが…かわいいんだもん」
「うん?」
「スタイルもいいんだもん。頭もいいんだもん。だからだから、きっと高木くんも、白鳥さんみたいな人が好きなんだろうなって思って!」
「……」
「私なんかが期待しちゃだめって思うんだけど好きで! それで、それで、そうよ、『そんなことない』って言われたかったのよ! 悪い? ちょっとぐらい、自信つけてくれたっていいじゃないよお! わーん!」
「そっかそっか、なるほどねえわかったわ。意地悪言ってごめんね」
「ひっくひっく、ううん私こそ、愚痴っちゃってごめんね」
「いいのよ、私で良かったらいつでも相談にのるわ」
「ありがとう! じゃあさっそく相談にのってくれる?」
「もちろんよ! なんでも話して!」
「私にもさ、白鳥さんに勝てるところ、いっこぐらいあるよね…?」
「そんなとこないわ」
タイトルですでにオチバレしそう。




