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第9話 王国の圧力──探偵への警告

魔物暴走事件が収束した後、

ユウマは王城の医務室で軽い手当てを受けていた。


「ユウマくん……本当に大丈夫?」


アリサが心配そうに覗き込む。


「俺は戦ってないからね。

 みんなの方がよっぽど大変だったよ」


アリサは小さく首を振った。


「でも……ユウマくんがいなかったら、

 レンくんたち……危なかったよ」


ユウマは苦笑した。


(……戦場で推理するなんて、普通じゃないよな)


そこへ、ガルド教官が入ってきた。


「ユウマ、少し話がある」


「教官?」


ガルドは珍しく真剣な顔をしていた。


「……お前、気をつけろ」


「え?」


「今日の件で、王国の上層部は“お前を危険視”し始めている」


アリサが息を呑む。


「危険視……?」


ガルドは低い声で続けた。


「魔物の弱点を見抜き、

 支配魔法の痕跡を見抜き、

 宝物庫の事件ではレイハルトの矛盾を指摘した」


ユウマは眉をひそめた。


「それが……危険なんですか?」


「危険だ。

 王国は“都合の悪い真実”を嫌う。

 特に……お前のような観察力を持つ者はな」


アリサが震える声で言う。


「ユウマくん……」


ガルドは続けた。


「レイハルトはお前を敵視している。

 宰相グラディウスも同じだ。

 そして……ラザルドはお前を“鍵”と呼んだ」


ユウマは思い出した。


(……鍵。

 俺は何の鍵なんだ?)


ガルドはユウマの肩に手を置いた。


「お前は戦えない。

 だからこそ……狙われやすい」


ユウマは静かに頷いた。


「……分かりました」


ガルドは少しだけ笑った。


「だが安心しろ。

 俺とエレナはお前の味方だ」


アリサも強く頷く。


「私も……絶対にユウマくんを守る」


ユウマは二人に礼を言った。


(……俺は一人じゃない)


その日の夕方。

ユウマは王城の中庭で一人、考え込んでいた。


(魔物暴走……

 宝物庫の盗難……

 召喚儀式の矛盾……

 全部が繋がっている気がする)


その時――

背後から冷たい声がした。


「……霧島ユウマ」


振り返ると、

騎士団長レイハルトが立っていた。


「団長……」


レイハルトはゆっくりと歩み寄る。


「貴様……

 余計なことをしすぎだ」


ユウマは目を細めた。


「余計なこと……ですか?」


「魔物の弱点を見抜き、

 宝物庫の事件に首を突っ込み、

 ラザルドに疑いを向けた」


レイハルトの声は低く、鋭い。


「スキルなしの分際で、

 王国の内情に踏み込むな」


ユウマは一歩も引かなかった。


「俺は……

 “見えたもの”を言っただけです」


レイハルトの目が細くなる。


「見えたもの……か。

 ならば忠告しておく」


レイハルトはユウマの胸元を掴んだ。


「――これ以上、探るな」


ユウマは息を呑んだ。


(……この人、本気だ)


レイハルトは続けた。


「王国の闇に踏み込めば……

 貴様は消される」


その言葉は、脅しではなく“事実”だった。


ユウマは静かに言った。


「でも……

 俺は見てしまったんです。

 魔物の赤い目も、

 宝物庫の転移魔法陣も、

 召喚陣の焦げ跡も」


レイハルトの手が震えた。


「……貴様……」


ユウマは続けた。


「見たものを見なかったことにはできません」


レイハルトはユウマを突き放した。


「……愚か者め」


その時――


「レイハルト団長!」


エレナが駆け込んできた。


「ユウマに手を出すな!」


レイハルトは冷たく言った。


「エレナ……

 貴様も余計なことをするな」


エレナは剣に手をかけた。


「私は……

 この少年の“目”を信じています」


レイハルトは舌打ちし、背を向けた。


「……勝手にしろ。

 だが覚えておけ、ユウマ」


レイハルトは振り返らずに言った。


「――この国は、真実を嫌う」


そして去っていった。


エレナがユウマに駆け寄る。


「大丈夫?」


「うん……ありがとう」


エレナは真剣な目で言った。


「ユウマ……

 あなたは今、王国の“危険な領域”に踏み込んでいる」


ユウマは頷いた。


「分かってます。

 でも……

 俺は見たものを無視できない」


エレナは微笑んだ。


「……あなたは本当に変わってるわね」


ユウマは苦笑した。


「よく言われます」


エレナは空を見上げた。


「ユウマ……

 あなたの“目”が、この国を変えるかもしれない」


ユウマは静かに答えた。


「変えるつもりはないですよ。

 ただ……

 “真実を知りたい”だけです」


エレナはその言葉に、

どこか救われたような表情を浮かべた。


(真実……

 それが、この世界の何を暴くのか)


ユウマは胸の奥に、

小さな決意の火が灯るのを感じた。


(俺は探偵だ。

 なら――

 この世界の“嘘”を暴く)


その夜、

王城のどこかで、

誰かが呟いた。


「……動き始めたか、“鍵”よ」


ユウマはまだ知らない。


自分が“鍵”と呼ばれる理由も、

王国の闇の深さも、

そして――

クラス転移の真相も。


だが確実に、

物語は動き始めていた。

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