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第6話 宝物庫盗難事件──王国の嘘の匂い

王城の奥深く。

重厚な扉が並ぶ廊下を、ユウマはガルド教官と共に歩いていた。


「ここが……宝物庫か」


巨大な鉄扉。

複雑な魔法陣。

そして、周囲には緊張した面持ちの騎士たち。


ガルドが低く唸る。


「宝物庫の警備は王城でも最も厳重だ。

 それが破られたとなれば……ただ事じゃねぇ」


ユウマは扉を見つめた。


(……扉の傷が浅い。

 外から無理やりこじ開けた跡じゃない)


ガルドが騎士に命じる。


「扉を開けろ!」


魔法陣が光り、重い扉がゆっくりと開く。


中は薄暗く、

棚には宝石や魔道具が並んでいる――はずだった。


だが、中央の台座だけがぽっかりと空いていた。


「……盗まれたのは、“魔導宝珠アークスフィア”です」


騎士の報告に、ガルドが目を見開く。


「アークスフィアだと!?

 あれは王国の秘宝だぞ!」


ユウマは台座に近づいた。


(……埃の積もり方が不自然だ)


台座の周囲だけ、埃が薄い。

つまり、最近触られたということだ。


(でも……足跡がない)


ユウマは床を見渡した。


(宝物庫の床は“魔力反応石”……

 魔力を持つ者が歩くと光るはずだ)


だが、床は暗いままだ。


「ガルド教官、ここ……誰も歩いてません」


「は? そんなわけあるか!

 宝珠を盗むには台座まで来なきゃならん!」


「でも、足跡がないんです。

 魔力反応も……ゼロ」


ガルドは眉をひそめた。


「じゃあ、どうやって盗んだってんだ?」


ユウマは台座の裏側を覗き込んだ。


(……あった)


小さな金属片。

そして、焦げた跡。


「教官、これ……“転移魔法陣の残骸”です」


ガルドが目を見開く。


「転移魔法陣!?

 宝物庫の中で転移を使ったってのか!?」


「はい。

 外から侵入せず、

 “宝珠だけを転移させた”んです」


ガルドは頭を抱えた。


「そんな高度な魔法、使える奴なんて……

 宮廷魔術師くらいしかいねぇぞ……」


ユウマは静かに言った。


「つまり――

 内部犯行 です」


騎士たちがざわつく。


「内部……だと……?」


「まさか、王城の誰かが……?」


ガルドはユウマに向き直る。


「ユウマ、お前……どうしてそう思う?」


「転移魔法陣は、外部から設置できません。

 宝物庫の結界が邪魔をします。

 内部の者が、結界を一時的に解除したんです」


ガルドは唸った。


「……確かに、そうだな」


ユウマはさらに続けた。


「それに……

 扉の鍵穴に“魔力の焦げ跡”が残ってます」


ガルドが鍵穴を覗く。


「……本当だ」


「これは“鍵を開けた”跡じゃなくて、

 “鍵を無効化した”跡です。

 王城の鍵を無効化できる魔法は……

 宮廷魔術師ラザルドだけです」


ガルドの表情が険しくなる。


「ラザルド……

 あいつ、召喚儀式の責任者でもあるな」


ユウマは頷いた。


(……やっぱり、召喚儀式には裏がある)


その時――


「何をしている?」


冷たい声が響いた。


振り返ると、

騎士団長レイハルトが立っていた。


鋭い眼光。

圧倒的な威圧感。


「スキルなしの者が宝物庫に入るなど、

 許されることではない」


ユウマは一歩も引かなかった。


「俺はガルド教官に呼ばれただけです。

 それに……

 事件の調査は必要でしょう?」


レイハルトの目が細くなる。


「貴様……

 自分が何を言っているのか分かっているのか?」


ガルドが前に出た。


「レイハルト、ユウマは役に立つ。

 昨日の事件も、こいつが解決したんだ」


「だからどうした。

 スキルなしは戦力外だ」


レイハルトの視線は、

まるで“虫を見るような目”だった。


ユウマは静かに言った。


「……あなた、嘘をついてますね」


レイハルトの表情が一瞬だけ揺れた。


「何?」


「あなた……

 宝物庫の扉を見る前から、

 “何が盗まれたか”知っていた」


ガルドが驚く。


「おいユウマ、それは……」


ユウマは続けた。


「扉が開く前、

 あなたは“アークスフィアが盗まれた”と

 一言も聞いていないのに……

 “宝珠”という言葉を使いました」


レイハルトの目が鋭くなる。


「……観察魔め」


「あなたは宝珠が盗まれたことを、

 “最初から知っていた”。

 つまり――

 あなたは事件の直前に宝物庫に来ていた」


騎士たちがざわつく。


「団長が……?」


「まさか……?」


レイハルトは冷たく笑った。


「……面白い推理だ。

 だが証拠はあるのか?」


ユウマは床を指差した。


「あなたの靴跡が、

 “宝物庫の前で止まっている”。

 でも、中には入っていない」


レイハルトの目が細くなる。


「……続けろ」


「つまり、あなたは扉の前まで来て、

 中を確認せずに引き返した。

 それは――

 中に入る必要がなかったから です」


ガルドが息を呑む。


「つまり……

 レイハルト、お前は……」


ユウマは静かに言った。


「あなたは“犯人”ではない。

 でも――

 犯人を知っている」


レイハルトの表情が凍りついた。


「……貴様」


ユウマは一歩踏み出した。


「あなたは犯人を庇っている。

 それが誰なのか……

 俺はもう分かっています」


ガルドが叫ぶ。


「ユウマ、誰だ!?」


ユウマは静かに答えた。


「――宮廷魔術師、ラザルドです」


レイハルトの拳が震えた。


「……貴様、どこまで見えている?」


ユウマは微笑んだ。


「全部ですよ。

 俺は“探偵”ですから」


こうして――

ユウマは王国の“最初の嘘”を暴いた。


だが、これはまだ序章にすぎない。


王国の闇は、

もっと深く、もっと黒い。


そして――

その闇は、ユウマたち“召喚者”に

直接繋がっていた。

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