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第5話 勇者パーティとの溝──王国の影

翌朝。

ユウマは王城の一室で目を覚ました。


石造りの天井。

重厚な木製の扉。

窓から差し込む光は、どこか冷たい。


(……異世界で迎える二日目か)


昨日の事件――

早乙女ミキの“呪い偽装事件”は、

ユウマの推理で解決した。


だが、クラスメイトたちの反応は複雑だった。


「ユウマ、すげぇな!」

「探偵みたい!」

「でも……スキルなしなんだよな……」


称賛と、距離感。

その両方が混ざっていた。


(まぁ、仕方ないか)


ユウマは身支度を整え、訓練場へ向かった。


訓練場では、すでに勇者パーティが集まっていた。


風間レンが剣を振り、

佐伯ユウトが木人形を斬り、

水無瀬カナが水の槍を放ち、

立花ユイが矢を連射している。


「おはよう、ユウマくん」


アリサが駆け寄ってきた。


「今日も見学?」


「まぁね。俺は戦えないし」


アリサは少し寂しそうに笑った。


「……ユウマくんが戦えたら、きっと強いのに」


「観察と推理じゃ、魔物は倒せないよ」


そう言いながらも、

ユウマは訓練場を観察していた。


(レンの剣筋は昨日より安定してる。

 ユウトは力任せだけど、精度は高い。

 カナは魔力の流れが綺麗。

 ユイは……昨日より癖が強くなってるな)


そんな時だった。


「おい、ユウマ」


レンが声をかけてきた。


「昨日の件……ありがとな。

 ミキのこと、助けてくれて」


「別に。俺はただ見ただけだよ」


レンは笑った。


「でもよ……スキルなしってのは、やっぱキツいよな」


ユウマは苦笑した。


「まぁ、そうだね」


「俺たちは戦えるけど……

 ユウマは後方支援だろ?

 なんか……悪いよな」


「気にするなよ。

 俺は俺のやり方でやるから」


レンは少し安心したように頷いた。


だが――

その会話を、

遠くから冷たい目で見ている者がいた。


騎士団長レイハルトだ。


(……あの目は、完全に“戦力外”を見る目だな)


ユウマは内心でため息をついた。


訓練が終わると、

ガルド教官がユウマを呼んだ。


「ユウマ、ちょっと来い」


「はい?」


ガルドは訓練場の隅にユウマを連れていき、

声を潜めて言った。


「お前……昨日の事件、どうやって見抜いた?」


「観察ですよ。

 粉の量、足跡、痣の形……

 全部が“呪い”にしては不自然でした」


ガルドは腕を組んだ。


「……やっぱりな。

 お前、ただのスキルなしじゃねぇ」


「スキルはありませんよ」


「いや、そうじゃねぇ。

 “戦闘以外の才能”ってやつだ」


ユウマは少し驚いた。


(この世界にも、そういう考え方があるのか)


ガルドは続けた。


「実はな……

 王国では最近、妙な事件が増えてる」


「妙な事件?」


「ああ。

 魔物が突然暴れたり、

 貴族の屋敷で盗難が起きたり、

 魔道具が暴走したり……」


(……事件だらけじゃないか)


ガルドはユウマを見つめた。


「お前の力……そういう事件に役立つかもしれん」


「俺の力……?」


「観察と推理だ。

 この国には、そういう“目”が必要だ」


ユウマは息を呑んだ。


(……この世界でも、俺の力は通用するのか?)


その時――


「教官! 大変です!」


騎士が駆け込んできた。


「王城の宝物庫で……盗難が発生しました!」


「盗難だと!?」


ガルドが叫ぶ。


ユウマは思わず言った。


「……また事件か」


騎士は続けた。


「しかも……

 犯人は“内部の者”の可能性が高いと!」


ガルドはユウマを見た。


「ユウマ……来るか?」


ユウマは迷わなかった。


「行きます」


アリサが駆け寄ってきた。


「ユウマくん!? 危ないよ!」


「大丈夫。

 俺は戦わない。

 ただ……見に行くだけだよ」


アリサは不安そうにユウマの手を握った。


「……気をつけてね」


ユウマは微笑んだ。


「ありがとう」


そして――

ユウマはガルドと共に宝物庫へ向かった。


(……異世界でも、事件は起きる)


(なら――

 俺は“探偵”として、この世界を見てやる)


王城の奥へ進むにつれ、

空気が重くなっていく。


そして――

宝物庫の前に着いた瞬間、

ユウマは気づいた。


(……この事件、ただの盗難じゃない)


扉の傷。

警備の配置。

魔法陣の痕跡。


全てが――

“内部犯行”を示していた。


ユウマは静かに呟いた。


「……これは、王国の闇の入り口だ」


こうして、

ユウマの“本格的な異世界事件”が始まった。

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