第36話 召喚儀式の影
今日から3話投稿します
光の聖域を出たあと、
ユウマたちは神殿の外にある静かな広場に移動した。
霧は薄れ、空気は澄んでいる。
だが、胸の奥のざわつきは消えなかった。
(影の王ノクスの証言……
王国の嘘……
カリナの沈黙……
全部つながり始めている)
エレナが不安そうに言う。
「ユウマ……
本当に王国が嘘をついてるの?」
ユウマは静かに頷いた。
「嘘をついている“可能性が高い”。
まだ断定はしません。
でも――
召喚儀式の説明には、明らかな矛盾があります」
ガルド教官が腕を組む。
「矛盾……?」
ユウマは地面に小枝で簡単な図を描いた。
「まず、王国はこう言いました。
“魔王が復活したから、勇者を召喚した”
でも――
その“魔王”は、実際にはカリナだった」
エレナが息を呑む。
「つまり……
王国は“光の王”を魔王に仕立て上げた……?」
「そうです。
そしてもう一つ、大きな矛盾があります」
ユウマは枝を置き、二人を見た。
「召喚儀式は“勇者を呼ぶための儀式”と言われていました。
でも――
俺たち全員が召喚された」
ガルドが眉をひそめる。
「たしかに……
勇者だけじゃなく、クラス全員だったな」
エレナも言う。
「しかも……
ユウマは“スキルなし”だったのに……
どうして召喚されたの?」
ユウマは静かに答えた。
「そこが一番の矛盾です」
カリナが口を開いた。
「ユウマ……
あなたは“勇者召喚”の対象ではありませんでした」
エレナが驚く。
「じゃあ……
どうしてユウマは召喚されたの?」
カリナは静かに言った。
「召喚儀式は……
本来“鍵”を呼ぶための儀式だったのです」
ユウマの心臓が跳ねた。
(鍵……
つまり俺を呼ぶための儀式……?)
ガルドが言う。
「じゃあ勇者召喚ってのは……
建前だったってことか?」
カリナは頷いた。
「ええ。
王国は“勇者召喚”という名目で、
本当は“鍵”を探していたのです」
エレナが震える声で言う。
「じゃあ……
ユウマは最初から狙われてた……?」
ユウマは静かに言った。
「狙われていたというより、
“利用される予定だった”んだと思います」
ガルドが拳を握る。
「クソッ……
そんなことのためにユウマを……!」
ユウマは続けた。
「でも、ここで一つ疑問があります」
エレナが首を傾げる。
「疑問……?」
「王国は“鍵”を探していた。
でも――
俺が鍵だと知ったのは、遺物に触れた時だった」
ガルドが言う。
「たしかに……
召喚された直後は、ユウマのことを“スキルなし”としか見てなかった」
ユウマは頷いた。
「つまり――
王国は“鍵を呼ぶ儀式”をしたのに、
“鍵が誰か”を知らなかった」
エレナが息を呑む。
「……それって……
おかしくない?」
ユウマは静かに言った。
「おかしいです。
だから――
召喚儀式には“もう一つの目的”があったはずです」
カリナがユウマを見つめる。
「ユウマ……
あなたは何に気づいたのですか?」
ユウマは深く息を吸った。
「召喚儀式は――
“鍵を呼ぶため”ではなく、
“鍵を探すため”の儀式だったんです」
エレナが驚く。
「探す……?」
「そう。
王国は“鍵が誰か分からないまま”、
クラス全員を召喚した。
その中に鍵がいるかどうかを、
後から調べるつもりだった」
ガルドが息を呑む。
「つまり……
ユウマは“候補の一人”だったってことか……」
ユウマは頷いた。
「そして――
遺物に触れた時、
俺が“鍵”だと確定した」
エレナが震える声で言う。
「じゃあ……
ユウマが遺物に触れたのは……
偶然じゃなかった……?」
ユウマは静かに言った。
「偶然じゃない。
“誘導された”んです」
ガルドが目を見開く。
「誘導……?」
「王国は“鍵が反応する遺物”を知っていた。
だから俺を封印庫に近づけた。
俺が鍵かどうかを確かめるために」
エレナは唇を噛んだ。
「そんな……
そんなの……ひどい……!」
カリナは静かに言った。
「ユウマ……
あなたの推理は正しい。
王国はあなたを“試した”のです」
ユウマは拳を握った。
(王国は俺を利用するために召喚し、
遺物で“鍵かどうか”を確かめた……
そして――
鍵だと分かった瞬間、影が動き出した)
ユウマは言った。
「次に調べるべきは――
“召喚儀式の術式そのもの”です」
ガルドが頷く。
「王国に戻る必要があるってことか」
エレナが不安そうに言う。
「でも……
王国はユウマを狙ってるんだよ……?」
ユウマは静かに答えた。
「だからこそ、行く価値がある。
王国が隠している“本当の目的”を暴くために」
カリナはユウマの手をそっと取った。
「ユウマ……
あなたが望むなら、私はどこへでも同行します」
ユウマは頷いた。
「お願いします。
王国の嘘を暴くために、
あなたの力が必要です」
エレナは複雑な表情で二人を見つめた。
(ユウマ……
あなたは本当に……
前世とは違う道を歩いてる)
ユウマは深く息を吸った。
(次に暴くべきは――
“召喚儀式の術式”
そして“王国の黒幕”)
光の聖域を後にし、
ユウマたちは王国へ戻る決意を固めた。
真実は、
もうすぐそこにある。




