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第3話 クラス転移──白光の向こう側

空が裂けた。


それは、雷でも爆発でもない。

ただ静かに、しかし確実に――

世界の皮膚が破れるように、空が開いた。


「な、なんだよこれ……!」


「空が……割れてる……?」


「嘘だろ……夢だよな……?」


クラスメイトたちの悲鳴が、校庭に響く。


ユウマはアリサの手を握ったまま、

空の裂け目を凝視していた。


(……これは、自然現象じゃない)


風向きが逆流している。

光がねじれている。

音が吸い込まれている。


どれも、地球の物理法則では説明できない。


アリサが震える声で言う。


「ユウマくん……怖い……」


「大丈夫。俺が見てる」


そう言った瞬間――


白光が降り注いだ。


視界が真っ白に染まり、

耳鳴りが世界を支配する。


ユウマはアリサの手を強く握りしめた。


(離すな……絶対に)


しかし光は容赦なく、

ユウマの意識を奪っていった。


……どれくらい時間が経っただろう。


ユウマは、

冷たい石の床の感触で目を覚ました。


「……ここは……?」


天井は高く、

壁には巨大な紋章が刻まれている。


見たこともない文字。

見たこともない装飾。

見たこともない建築様式。


(……異世界だな)


直感ではなく、観察による結論だった。


周囲にはクラスメイトたちが倒れている。


「みんな……無事か……?」


ユウマは立ち上がり、

アリサの姿を探した。


すぐに見つかった。

彼女は隣で眠っている。


「アリサ……」


肩を揺らすと、彼女はゆっくり目を開けた。


「……ユウマくん……ここ……どこ……?」


「分からない。でも……」


ユウマは周囲を見渡した。


(……これは“儀式場”だ)


床に描かれた魔法陣。

壁の紋章。

中央の祭壇。


どれも“儀式”を連想させる。


その時――


「おお……目覚めたか、異界の勇者たちよ!」


重厚な声が響いた。


振り返ると、

豪華な衣装をまとった男が立っていた。


その後ろには、

鎧を着た騎士たちが整列している。


「私はこの国の王、

 アルトリア王国国王、レオンハルト三世である!」


クラスメイトたちがざわつく。


「王……?」


「マジで異世界じゃん……」


「ゲームみたい……」


ユウマは王を観察した。


(……目が笑ってない)


口元は笑っているが、

目は冷たく、計算している。


(歓迎してるように見せて……

 俺たちを“戦力”として見てる目だ)


王は続けた。


「異界の勇者たちよ!

 我が国は今、魔王軍の脅威にさらされている!

 どうか力を貸してほしい!」


クラスメイトたちがざわつく中、

王の隣に立つ男が前に出た。


銀髪の騎士。

鋭い眼光。

完璧な姿勢。


「私は王国騎士団長、

 レイハルト・グランツだ。

 これより諸君の“スキル鑑定”を行う」


(……スキル鑑定?)


ユウマは眉をひそめた。


レイハルトは魔法陣の前に立ち、

クラスメイトたちを一人ずつ呼び出す。


「風間レン」


レンが前に出ると、

魔法陣が光り、文字が浮かび上がった。


『勇者スキル《ブレイブハート》』


「おおおおおおお!!」


「レン、勇者かよ!」


「すげぇ……!」


レンは誇らしげに笑った。


次々とクラスメイトが鑑定されていく。


剣技ソードマスター

水魔法アクアランス

弓術アローレイン

解析アナライズ

魅了チャーム

怪力パワーリフト


みんな何かしらのスキルを持っていた。


そして――


「霧島ユウマ」


ユウマの番が来た。


魔法陣が光る。


文字が浮かび上がる。


『――スキルなし――』


空気が凍った。


「え……?」


「ユウマ……スキルないの……?」


「マジかよ……」


レイハルトが冷たい声で言う。


「スキルなし……か。

 戦力としては期待できんな」


王も眉をひそめた。


「……役立たず、ということか」


アリサが叫んだ。


「そんな……ユウマくんは……!」


ユウマはアリサを制した。


「いいよ、アリサ。

 俺は戦えないし、事実だ」


だが、ユウマは気づいていた。


(……魔法陣の光り方が、他と違った)


他の生徒の時は青白い光だった。

だが自分の時だけ、

一瞬だけ“赤い光”が混ざった。


(……何かがおかしい)


レイハルトが言う。


「スキルなしの者は、

 勇者パーティには不要だ。

 後方支援に回れ」


(……最初から俺を“外す”つもりだった?)


王の目。

レイハルトの態度。

魔法陣の反応。


全てが、

“計画された違和感” に見えた。


ユウマは静かに思った。


(……この召喚、何か裏がある)


その瞬間――


「お前、観察してただろ」


背後から声がした。


振り返ると、

鎧姿の女騎士が立っていた。


栗色の髪。

鋭い瞳。

凛とした佇まい。


「私はエレナ・フォルティア。

 ガルド教官の副官だ」


ユウマは息を呑んだ。


(この人……ただの騎士じゃない)


エレナは小声で言った。


「……あなた、気づいているわね。

 この召喚には“違和感”があるって」


ユウマは答えなかった。


だがエレナは微笑んだ。


「いい目をしている。

 あなたのような人間が……

 この国には必要よ」


その言葉は、

ユウマの胸に深く刺さった。


(……俺はスキルなし。

 でも――

 “観察”なら、誰にも負けない)


ユウマは静かに決意した。


(この世界の“嘘”を暴く)


こうして――

スキルゼロの名探偵の異世界生活が始まった。

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