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第29話 光の聖域へ──動き出す影と王国

王家の記録庫で“鍵”の真実を知った翌朝。

ユウマはまだ胸の奥に残る赤い光の余韻を感じていた。


(あの光……

 俺の中に流れ込んだ“何か”……

 あれは一体……)


エレナが心配そうに覗き込む。


「ユウマ、顔色が悪いわ。

 本当に大丈夫?」


ユウマは微笑んだ。


「大丈夫です。

 ただ……少し考えることが多くて」


ガルド教官が腕を組む。


「そりゃそうだ。

 “光の王”だの“影の王”だの……

 普通の学生が背負う話じゃねぇ」


エレナが言う。


「でも……ユウマは選ばれたのよ。

 光にも、影にも」


ユウマは胸に手を当てた。


(光の女性……

 あの人は俺を“愛している”と言った。

 でも影は“近づくな”と言った……

 どっちが正しいんだ?)


その時――

扉がノックされた。


「失礼する」


ミレイユ局長が入ってきた。


「ユウマ。

 準備はできている?」


ユウマは姿勢を正した。


「はい。

 “光の聖域”へ向かうんですよね?」


ミレイユは頷いた。


「ええ。

 光の聖域は王都から北へ三日の場所にある。

 “光の王”に関する記録が残っているはずよ」


エレナが言う。


「光の王……

 あの女性のことですよね?」


ミレイユは少しだけ目を伏せた。


「可能性は高いわ。

 ただ……王国としては“光の王”の存在を

 公式には認めていない」


ガルドが眉をひそめる。


「つまり……

 王国はこの件を隠してるってことか?」


ミレイユは静かに言った。


「王国は“光の王”を恐れているの。

 だから……

 あなたたちの出発を妨害する可能性がある」


ユウマは息を呑んだ。


(王国が……俺たちを妨害?)


ミレイユは続けた。


「特に……宰相グラディウス。

 彼は“影”と繋がっている可能性がある」


エレナが驚く。


「宰相が……影と……?」


ガルドが拳を握る。


「クソッ……

 やっぱり王国の中に黒幕がいるのか」


ミレイユはユウマを見つめた。


「ユウマ。

 あなたは“鍵”。

 王国にとっても、影にとっても、

 そして光にとっても特別な存在」


ユウマは静かに言った。


「……だから狙われるんですね」


ミレイユは頷いた。


「ええ。

 だからこそ、あなたは光の聖域へ行く必要がある。

 “光の王”の真実を知るために」


ユウマは拳を握った。


(あの人のことを……知りたい)


ミレイユは地図を広げた。


「ただし――

 王国はあなたたちを“正式な任務”として扱わない。

 つまり……」


ガルドが言う。


「非公式の遠征ってことか」


ミレイユは頷いた。


「そう。

 王国の妨害を避けるため、

 あなたたちは“密かに”出発する必要がある」


エレナが言う。


「でも……影はどうするの?

 また襲ってくるかもしれない」


ミレイユは静かに言った。


「影は……

 すでに動いているわ」


ユウマは息を呑んだ。


「動いている……?」


ミレイユは窓の外を見つめた。


「昨夜、王都の外で“黒い霧”が目撃された。

 影の気配よ」


ガルドが険しい顔になる。


「つまり……

 影は俺たちの出発を察してるってことか」


ミレイユは頷いた。


「ええ。

 影はあなたを追う。

 そして……

 “光の王”に近づくのを阻止しようとする」


ユウマは胸がざわついた。


(影は……

 俺が光の女性に会うのを恐れている?

 どうして……?)


エレナがユウマの手を握る。


「ユウマ……

 怖い?」


ユウマは微笑んだ。


「少しだけ。

 でも……

 あの人に会いたい気持ちの方が強いです」


エレナは少しだけ寂しそうに笑った。


「……そっか」


ミレイユは言う。


「出発は今夜。

 王国の目を避けるため、

 裏門から出るわ」


ガルドが頷く。


「了解だ。

 ユウマ、準備しとけよ」


ユウマは深く息を吸った。


(光の聖域……

 あの人の真実……

 俺は必ず辿り着く)


その夜。


王城の裏門は静かだった。


エレナが周囲を確認する。


「……誰もいないわ。

 今なら出られる」


ガルドが荷物を背負い直す。


「よし、行くぞ」


ユウマは裏門をくぐろうとした。


その瞬間――

冷たい風が吹き抜けた。


「……っ!」


エレナが剣を構える。


「この気配……!」


ガルドも叫ぶ。


「影だ!!」


黒い霧が地面から立ち上り、

フードを被った影が姿を現した。


「……ユウマ……

 行かせない……」


ユウマは影を見つめた。


「どうして……

 俺を止めるんだ!」


影は低く呟いた。


「……光に……会うな……

 光は……お前を……滅ぼす……」


ユウマは叫んだ。


「嘘だ!!

 あの人は俺を守ってくれた!!」


影は首を振った。


「……それが……罠……

 光は……“魔王”……

 お前を……利用する……」


エレナが怒鳴る。


「ユウマを利用するわけない!!」


ガルドも叫ぶ。


「ユウマを守ったのは事実だろうが!!」


影は短剣を構えた。


「……ユウマ……

 お前を……消す……

 それが……世界のため……」


ユウマは一歩前に出た。


「俺は……行く。

 光の聖域へ。

 あの人に会って……真実を聞く!」


影は叫んだ。


「……なら……

 ここで……終わらせる……!」


黒い霧が広がり、

影が突進してくる。


エレナが叫ぶ。


「ユウマ、下がって!!」


ガルドも剣を構える。


「来るぞ!!」


だが――

ユウマの胸が強く脈打った。


「……っ!」


赤い光がユウマの体から溢れた。


影が後退する。


「……光……

 また……お前か……!」


ユウマは胸に手を当てた。


(あの人が……

 俺を守ってくれている……)


影は苦しそうに呟いた。


「……ユウマ……

 光に……染まるな……

 お前は……鍵……

 世界を……開く者……」


黒い霧が影を包み、

その姿は消えた。


静寂。


エレナがユウマに駆け寄る。


「ユウマ……

 本当に大丈夫?」


ユウマは頷いた。


「ええ。

 でも……影は本気で俺を止めようとしている」


ガルドが言う。


「なら、急ぐぞ。

 影が本格的に動く前に、光の聖域へ向かうんだ」


ユウマは深く息を吸った。


(光の聖域……

 あの人の真実……

 俺は必ず辿り着く)


こうして――

ユウマたちは王都を離れ、

“光の聖域”へ向けて旅立った。


その先で待つのは、

光の王の真実か、

影の罠か。


そして――

ユウマの運命を決める“出会い”だった。

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