第28話 王家の記録──魔王と鍵の真実
北塔の記録庫は、
静寂に包まれていた。
影が消えたあとも、
空気は重く、冷たい。
ユウマは石碑の前に立ち、
深く息を吸った。
(ここに……真実がある)
レイハルト団長が言う。
「ユウマ。
この石碑は“円環文明”の記録だ。
王家に伝わる最古の文献でもある」
エレナが石碑を見つめる。
「でも……古代文字よね?
読めるの?」
ガルドが肩をすくめる。
「普通は読めねぇ。
だが……」
レイハルト団長はユウマを見た。
「ユウマなら、読めるかもしれん」
ユウマは驚いた。
「俺が……?」
ミレイユ局長の言葉が脳裏をよぎる。
――あなたは“鍵”。
遺物に反応したのは偶然じゃない。
ユウマは石碑に手を触れた。
その瞬間――
石碑の文字が赤く光り始めた。
「……っ!」
エレナが叫ぶ。
「ユウマ!?
また光が……!」
ガルドも驚く。
「遺物の時と同じ反応だ……!」
レイハルト団長は静かに言った。
「やはり……ユウマが“鍵”か」
光はユウマの視界に流れ込み、
古代文字が“意味”を持ち始めた。
(読める……?
いや……理解できる……!)
ユウマは震える声で読み上げた。
「“円環文明の記録──
この世界には二つの力がある。
一つは光。
一つは影。”」
エレナが息を呑む。
「光と……影……」
ユウマは続けた。
「“光は世界を守り、
影は世界を裁く。
だが、どちらも世界の均衡を保つために存在する。”」
ガルドが眉をひそめる。
「影が……世界を裁く……?」
ユウマはさらに読み進めた。
「“光の王は、赤き瞳を持つ。
影の王は、黒き霧を纏う。”」
エレナが震える声で言う。
「赤い瞳……
あの女性……?」
ガルドも呟く。
「じゃあ……あの女は“光の王”ってことか?」
レイハルト団長は静かに頷いた。
「可能性は高い」
ユウマは胸がざわついた。
(あの人が……光の王……?
魔王じゃなくて……?)
ユウマは続きを読んだ。
「“光の王は、世界を守るために存在する。
だが、光は強すぎれば世界を焼き、
影は深すぎれば世界を呑む。”」
エレナが呟く。
「光も……影も……
どちらも危険ってこと……?」
ユウマはさらに読み進めた。
「“光と影の均衡を保つため、
世界は一人の“鍵”を選ぶ。
鍵は扉を開き、
光と影を導く者。”」
ガルドが息を呑む。
「鍵……
ユウマ、お前のことだ……!」
ユウマの心臓が跳ねた。
(俺が……光と影を導く……?
そんな……)
エレナがユウマの手を握る。
「ユウマ……
あなたは……選ばれたのよ」
ユウマは震える声で言った。
「でも……俺はただの学生で……
そんな力なんて……」
レイハルト団長が静かに言う。
「ユウマ。
選ばれる者は、いつも“普通の者”だ。
特別な力があるから選ばれるのではない。
“必要だから”選ばれるのだ」
ユウマは言葉を失った。
(俺が……必要……?
誰に……?)
その時――
石碑の文字がさらに強く輝いた。
ユウマは続きを読んだ。
「“鍵は光に愛され、
影に恐れられる。
光は鍵を守り、
影は鍵を消そうとする。”」
エレナが息を呑む。
「光に……愛され……?」
ガルドが驚く。
「じゃあ……あの女がユウマを守るのは……
“愛してる”って言ったのは……
本当だったのか……?」
ユウマの胸が熱くなる。
(あの人は……
本当に俺を……)
レイハルト団長が言う。
「影がユウマを狙う理由も明らかだ。
影にとって鍵は“脅威”だからだ」
ユウマは拳を握った。
(俺が……影にとって脅威……
だから狙われる……)
エレナがユウマを見つめる。
「ユウマ……
あなたはどうしたいの?」
ユウマは石碑を見つめた。
光と影。
鍵。
扉。
愛。
恐れ。
(俺は……どうしたい?)
ユウマは深く息を吸った。
「……俺は、逃げません。
光が何者でも……
影が何者でも……
俺は真実を知りたい」
エレナは微笑んだ。
「ユウマらしいわ」
ガルドも笑った。
「よし、決まりだな」
レイハルト団長は静かに言った。
「ユウマ。
これからお前は“光”と“影”の中心に立つ。
覚悟しておけ」
ユウマは頷いた。
「はい」
その瞬間――
石碑が強く輝き、
ユウマの胸に赤い光が流れ込んだ。
「……っ!」
エレナが叫ぶ。
「ユウマ!!」
ガルドも叫ぶ。
「また光か!!」
だがユウマは倒れなかった。
むしろ――
体が軽くなった。
(……力が……流れ込んでくる……?)
レイハルト団長が驚く。
「これは……
“鍵の覚醒”……!」
ユウマは胸に手を当てた。
(俺は……
何かを手に入れた……)
石碑の光が消えると、
部屋は再び静寂に包まれた。
エレナがユウマに駆け寄る。
「ユウマ……
本当に大丈夫?」
ユウマは微笑んだ。
「ええ。
大丈夫です」
ガルドが言う。
「影はまた来るぞ。
次はもっと激しい戦いになる」
レイハルト団長は静かに言った。
「ユウマ。
光の女性に会いたいか?」
ユウマは迷わず答えた。
「……はい。
会って……話がしたい」
レイハルト団長は頷いた。
「なら、次の目的地は決まったな」
ユウマは息を呑んだ。
(次の目的地……?)
レイハルト団長は言った。
「“光の聖域”だ」
ユウマの運命は、
さらに大きく動き始めていた。




