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第27話 北塔の影──王家の記録庫へ

王城北塔へ向かう廊下は、

昼間とは違い、静まり返っていた。


松明の灯りが揺れ、

壁に長い影を落とす。


エレナが小声で言う。


「……誰もいないわね。

 普段なら警備がいるはずなのに」


ガルド教官も眉をひそめた。


「おかしいな。

 北塔は王家の記録庫がある場所だ。

 警備が薄いなんてありえねぇ」


レイハルト団長が前を歩きながら言う。


「警備を“意図的に外された”可能性がある。

 影が動いている証拠だ」


ユウマは胸の奥がざわつくのを感じた。


(影……

 もうここにいるのか?)


北塔の入口に到着すると、

巨大な扉が静かに佇んでいた。


扉には王家の紋章が刻まれ、

魔力の封印が淡く光っている。


エレナが息を呑む。


「これが……北塔の扉……」


ガルドが扉に手を触れた。


「魔力封印がかかってるな。

 普通の魔術師じゃ開けられねぇ」


レイハルト団長が前に出る。


「私が開ける」


団長が剣を抜き、

扉に向かって静かに呪文を唱えた。


「――王家の名において、封を解く」


扉の紋章が光り、

重い音を立てて開き始めた。


「ゴゴゴゴゴ……!」


ユウマは胸に手を当てた。


(……まただ。

 胸が……熱い)


エレナが心配そうに言う。


「ユウマ、大丈夫?」


ユウマは頷いた。


「ええ……

 でも、何かが……呼んでいる気がします」


ガルドが険しい顔で言う。


「遺物の時と同じか……

 気をつけろよ」


扉が完全に開くと、

中は薄暗い階段が続いていた。


レイハルト団長が言う。


「行くぞ。

 影が先に入っている可能性が高い」


ユウマたちは階段を降りていった。


階段を降り切ると、

広い円形の部屋に出た。


壁一面に古い書物が並び、

中央には巨大な石碑が立っている。


エレナが驚く。


「これが……王家の記録庫……」


ガルドも息を呑んだ。


「すげぇな……

 全部、古代の記録か?」


レイハルト団長が石碑に近づく。


「この石碑には……

 “円環文明”の記録が刻まれている」


ユウマは石碑を見つめた。


(円環文明……

 俺が“鍵”と呼ばれる理由……

 ここに何かがある)


その時――

部屋の奥から、

冷たい風が吹き抜けた。


エレナが剣を構える。


「……今の、何?」


ガルドも周囲を警戒する。


「誰かいるぞ……!」


レイハルト団長が低く言った。


「出てこい。

 隠れても無駄だ」


静寂。


だが次の瞬間――

部屋の奥の影が揺れた。


「……ユウマ……」


ユウマの心臓が跳ねた。


(この声……!)


黒いフードの影が姿を現した。


赤い瞳が、

ユウマだけを見つめている。


エレナが叫ぶ。


「影……!」


ガルドが剣を抜く。


「また出やがったか!」


影はゆっくりと歩み寄り、

低い声で呟いた。


「……ユウマ……

 “記録”に触れては……いけない……」


ユウマは一歩前に出た。


「どうして俺を狙うんだ?

 俺は何もしていない!」


影は首を振った。


「……お前は……

 “扉を開く者”……

 だから……危険……」


レイハルト団長が影に向き直る。


「扉とは何だ?

 ユウマを狙う理由を言え!」


影は答えなかった。


ただ、ユウマを見つめ続けた。


「……ユウマ……

 “光”に……近づくな……」


ユウマは息を呑んだ。


(光……

 あの女性のことか?)


影は続けた。


「……光は……

 お前を……滅ぼす……」


ユウマは叫んだ。


「嘘だ!

 あの人は俺を守ってくれた!」


影は低く笑った。


「……それが……罠……

 光は……お前を……利用する……」


エレナが怒りを露わにする。


「ユウマを利用する?

 そんなわけない!」


ガルドも叫ぶ。


「ユウマを守ったのは事実だろうが!」


影は首を振った。


「……光は……

 “魔王”……

 お前を……導くために……」


ユウマの心臓が跳ねた。


(魔王……?

 あの人が……?)


影は続けた。


「……ユウマ……

 “魔王に近づくな”……

 さもなくば……

 お前は……“世界を滅ぼす”……」


ユウマは言葉を失った。


(俺が……世界を……滅ぼす?)


エレナが叫ぶ。


「そんなの……信じない!」


レイハルト団長が剣を構える。


「影よ。

 お前の言葉は信用できん」


影は短剣を構えた。


「……なら……

 ユウマを……消す……」


ガルドが叫ぶ。


「来るぞ!!」


影が突進した。


その瞬間――

ユウマの胸が強く脈打った。


「……っ!」


赤い光がユウマの体から溢れた。


エレナが驚く。


「ユウマ!?

 あなた……!」


ガルドも叫ぶ。


「なんだ、この光……!」


影は光に弾かれ、

後退した。


「……光……

 また……お前か……」


ユウマは胸に手を当てた。


(この光……

 あの人の……?)


影は苦しそうに呟いた。


「……ユウマ……

 “光”に……染まるな……

 お前は……鍵……

 世界を……開く者……」


影の体が黒い霧に包まれ、

その姿は消えていった。


静寂。


エレナがユウマに駆け寄る。


「ユウマ、大丈夫!?

 今の光……何だったの?」


ユウマは震える声で言った。


「……分からない。

 でも……

 あの人の声が……聞こえた気がする」


ガルドが息を吐く。


「影は逃げたか……

 だが、言ってたな。

 “光は魔王”って」


エレナは首を振る。


「そんなの……信じない。

 あの女性はユウマを守ったのよ!」


レイハルト団長は静かに言った。


「真実は……記録庫にある」


ユウマは石碑を見つめた。


(光……

 影……

 魔王……

 鍵……

 扉……

 俺は……何者なんだ?)


レイハルト団長が言う。


「ユウマ。

 記録を読む覚悟はあるか?」


ユウマは頷いた。


「あります。

 俺は……真実を知りたい」


こうして――

ユウマたちは王家の記録庫の奥へ進む。


そこには、

“光”と“影”の正体、

そしてユウマの運命を左右する

“円環文明の真実”が眠っていた。

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