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第24話 封印庫の扉──眠りし遺物

王城の地下へ続く階段は、

冷たい空気が漂っていた。


松明の灯りが揺れ、

石造りの壁に影が伸びる。


ガルド教官が前を歩きながら言う。


「ここは普段、王族と情報局の一部しか入れねぇ場所だ。

 ユウマ、お前がここに来るのは異例中の異例だぞ」


エレナも緊張した声で言う。


「封印庫って……

 本当に“危険なもの”が眠ってる場所なのよね?」


ユウマは頷いた。


「ミレイユ局長が言っていました。

 “円環文明の遺物”があるって」


ガルドが振り返る。


「円環文明……

 伝説の古代文明だな。

 魔法の源流とも言われてるが……

 実在したかどうかも怪しい話だ」


エレナが言う。


「でも……影が狙ってるのよね。

 なら、何かあるはず」


ユウマは胸の奥がざわつくのを感じていた。


(影が探していたもの……

 そして俺が“鍵”と呼ばれる理由……

 その答えが、この先にある)


階段を降り切ると、

巨大な扉が姿を現した。


高さは三メートル以上。

黒い金属で作られ、

中央には円形の紋章が刻まれている。


エレナが息を呑む。


「……これが封印庫……」


ガルドが扉に手を触れた。


「この扉は魔力で封印されてる。

 普通の人間じゃ開けられねぇ」


その時――

扉の前に立っていた魔術師がユウマに近づいた。


「霧島ユウマ殿。

 局長の命令により、封印を一時解除します」


魔術師が呪文を唱えると、

扉の紋章が赤く光り始めた。


「……っ!」


ユウマの胸が熱くなる。


(この光……

 どこかで……)


エレナが心配そうに言う。


「ユウマ?

 大丈夫?」


ユウマは胸に手を当てた。


「……なんだろう……

 胸が……熱い……」


ガルドが眉をひそめる。


「魔力酔いか?」


ユウマは首を振った。


「違います。

 これは……“呼ばれている”感じです」


魔術師が言う。


「封印が……反応している……?

 まさか……」


扉の紋章がさらに強く輝き、

重い音を立てて開き始めた。


「ゴゴゴゴゴ……!」


エレナが驚く。


「扉が……勝手に……!」


ガルドも目を見開いた。


「おいおい……

 封印が自動で開くなんて聞いたことねぇぞ!」


魔術師は震える声で言った。


「封印庫が……

 “ユウマ殿に反応している”……?」


ユウマは息を呑んだ。


(俺に……反応している?

 どうして……?)


扉が完全に開くと、

中は広い空間になっていた。


中央に――

黒い石の台座があり、

その上に“球体のようなもの”が置かれている。


エレナが呟く。


「……これが……遺物……?」


ガルドが近づく。


「ただの石に見えるが……

 妙な気配を感じるな」


ユウマは台座に近づいた。


球体は黒く、

表面に細かい紋様が刻まれている。


(……見たこともない模様だ)


その時――

胸の奥が強く脈打った。


「……っ!」


エレナが駆け寄る。


「ユウマ!?

 どうしたの!」


ユウマは台座から目を離せなかった。


(この遺物……

 俺を……呼んでいる……)


ガルドが言う。


「ユウマ、無理すんな。

 触る必要は――」


だがユウマは台座に手を伸ばしていた。


自分の意思ではない。

何かに導かれるように。


エレナが叫ぶ。


「ユウマ、待って!!」


ガルドも叫ぶ。


「触るな!!」


だが――

ユウマの指先が遺物に触れた瞬間。


赤い光が爆発した。


「……っ!!」


ユウマの視界が真っ白になる。


耳鳴りが響き、

体が浮くような感覚。


(……なんだ……これ……)


赤い光がユウマの体を包み込む。


エレナの声が遠くで聞こえる。


「ユウマ!!

 ユウマぁ!!」


ガルドの叫びも聞こえる。


「離れろ!!

 魔力が暴走してる!!」


だがユウマには届かない。


光の中で、

誰かの声が聞こえた。


――ユウマ……


(……この声……)


――ユウマ……

 あなたは……“鍵”……


(鍵……

 また……その言葉……)


――あなたは……

 “扉を開く者”……


(扉……?

 何の……?)


――ユウマ……

 あなたは……

 “私たちの希望”……


(希望……?

 誰の……?)


光がさらに強くなる。


ユウマは叫んだ。


「誰だ……!

 誰なんだ!!」


その時――

光の中に“女性の姿”が現れた。


長い髪。

白い肌。

赤い瞳。


(……あの人……)


森で出会った女性。

王城で影から守ってくれた女性。


彼女が、

光の中でユウマを見つめていた。


――ユウマ……


ユウマは手を伸ばした。


「あなたは……

 一体……誰なんですか……!」


女性は悲しそうに微笑んだ。


――まだ……言えません……

 でも……


女性はユウマの頬に触れた。


――あなたは……

 “私の大切な人”……


ユウマの心臓が跳ねた。


(大切な……?

 俺が……?)


女性は続けた。


――ユウマ……

 どうか……生きて……


光が弾けた。


ユウマの意識は、

そこで途切れた。


ユウマが倒れた瞬間、

エレナが駆け寄った。


「ユウマ!!

 ユウマ、しっかりして!!」


ガルドが叫ぶ。


「医療班を呼べ!!

 急げ!!」


魔術師たちが駆け込んでくる。


「遺物が……反応した!?

 こんなこと……ありえない……!」


エレナはユウマの手を握りしめた。


「ユウマ……

 お願い……目を開けて……」


だがユウマは目を閉じたまま動かない。


ガルドが呟く。


「ユウマ……

 一体何が起きたんだ……?」


封印庫の奥で、

黒い遺物が微かに赤く光っていた。


まるで――

ユウマの目覚めを待っているかのように。

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