第23話 情報局の密命──揺れる王国の中心で
影との戦闘が終わり、
王城の廊下は騒然としたままだった。
騎士たちが負傷者を運び、
魔術師たちが壁の黒い痕跡を調べている。
エレナがユウマの腕を掴んだ。
「ユウマ……
本当に大丈夫なの?」
ユウマは頷いた。
「ええ。
でも……影はまだ終わっていません」
ガルド教官が険しい顔で言う。
「影が何者かは分からねぇが……
お前を狙ってるのは確かだ。
気を抜くなよ」
ユウマは深呼吸した。
(影……
そして“光”の女性……
俺は何に巻き込まれている?)
その時――
「霧島ユウマ殿、情報局長がお呼びです」
騎士が駆け寄ってきた。
エレナが驚く。
「ミレイユ局長が?
こんな夜中に……?」
ガルドが眉をひそめる。
「よほど急ぎの用件だな」
ユウマは頷いた。
「行きます」
情報局の部屋に入ると、
ミレイユ局長は机の上に広げた地図を見つめていた。
その表情は、いつも以上に険しい。
「来たわね、ユウマ」
ユウマは姿勢を正した。
「呼び出しと聞きました。
何かあったんですか?」
ミレイユは地図から目を離し、
ユウマを見つめた。
「ええ。
“影”が動いたと報告を受けたわ」
エレナが言う。
「影……
ユウマを襲った存在です」
ミレイユは頷いた。
「その影が……
王城の“東棟”だけでなく、
“宝物庫”にも現れた形跡がある」
ガルドが驚く。
「宝物庫だと!?
あそこは厳重な結界があるはずだ!」
ミレイユは静かに言った。
「その結界が……破られていたの」
ユウマは息を呑んだ。
(影が……結界を破った?
そんなことができるのか?)
ミレイユは続けた。
「影は……
“何かを探している”」
ユウマは思わず口を開いた。
「俺……ですか?」
ミレイユは首を振った。
「それもあるでしょうけど……
影が宝物庫で探していたのは、
“あなたではない”」
エレナが眉をひそめる。
「じゃあ……何を?」
ミレイユは地図の一点を指差した。
「“古代の魔道具”よ」
ガルドが息を呑む。
「まさか……
影は古代の遺物を狙ってるのか?」
ミレイユは頷いた。
「ええ。
そして……
その魔道具は“ユウマと関係がある”」
ユウマは驚いた。
「俺と……?」
ミレイユはユウマを見つめた。
「ユウマ。
あなたは“鍵”と呼ばれているそうね」
ユウマは息を呑んだ。
(影も……
あの女性も……
俺を“鍵”と呼んだ)
ミレイユは続けた。
「その“鍵”という言葉……
古代文明の文献にも出てくるの」
ガルドが驚く。
「古代文明……?」
ミレイユは頷いた。
「ええ。
“円環文明”と呼ばれる、
数千年前に滅んだ文明よ」
エレナが息を呑む。
「円環文明……
伝説の……?」
ミレイユはユウマに向き直った。
「ユウマ。
あなたは……
“円環文明の遺物を起動できる存在”かもしれない」
ユウマは言葉を失った。
(俺が……?
古代文明の遺物を……?)
ミレイユは静かに言った。
「だから影はあなたを狙う。
そして……
“光”の女性はあなたを守る」
ユウマは胸がざわついた。
(光の女性……
あの人は……
俺を守るために現れた)
ミレイユは続けた。
「ユウマ。
あなたに新しい任務を与えます」
ユウマは姿勢を正した。
「任務……?」
ミレイユは地図の一点を指差した。
「王城の地下にある“封印庫”へ行きなさい。
そこに……
“円環文明の遺物”が保管されている」
ガルドが驚く。
「封印庫だと!?
あそこは王族と局長しか入れねぇ場所だぞ!」
ミレイユは頷いた。
「ええ。
でも今は非常事態。
ユウマには……
“遺物に触れてもらう必要がある”」
エレナが息を呑む。
「触れる……?
危険じゃないんですか?」
ミレイユは静かに言った。
「危険よ。
でも……
ユウマなら“反応する”可能性がある」
ユウマは拳を握った。
(俺が……
遺物に触れる……)
ミレイユはユウマを見つめた。
「ユウマ。
あなたは逃げる?
それとも……
真実に近づく?」
ユウマは迷わず答えた。
「行きます。
俺は……真実を知りたい」
ミレイユは微笑んだ。
「そう言うと思ったわ」
ガルドがユウマの肩を叩く。
「よし、行くぞユウマ。
俺たちもついていく」
エレナも頷く。
「もちろんよ。
あなたを一人で行かせるわけないでしょ」
ユウマは二人に微笑んだ。
(俺は……一人じゃない)
ミレイユは最後に言った。
「ユウマ。
気をつけて。
“影”は必ず動くわ」
ユウマは頷いた。
「分かっています」
こうして――
ユウマは王城地下の“封印庫”へ向かうことになった。
そこには、
影が探す“何か”があり、
ユウマの運命を左右する“真実”が眠っている。
そして――
その先で、
“光”の女性と再び出会うことになる。




