第17話 王城の影──揺れ始める均衡
森での戦闘を終え、
ユウマたちはロイドを連れて王城へ戻った。
夕暮れの空は赤く染まり、
まるで森で見た“赤い光”の余韻が残っているようだった。
ガルド教官がロイドを支えながら言う。
「ロイド、歩けるか?」
「はい……大丈夫です。
あの女性が……治してくれましたから」
エレナが眉をひそめる。
「本当に……何者なのかしら」
ユウマは答えられなかった。
(あの女性……
俺の名前を知っていた。
“守る”と言った。
そして……魔物を一撃で倒した)
普通の人間ではない。
だが、敵ではない。
それだけは確信していた。
王城の門をくぐると、
騎士たちが駆け寄ってきた。
「ロイド! 無事だったのか!」
「よかった……!」
ロイドは弱々しく笑った。
「ご心配をおかけしました……」
ガルドが騎士たちに指示を出す。
「ロイドを医務室へ運べ!
詳しい話は後で聞く!」
騎士たちはロイドを連れて行った。
エレナがユウマに向き直る。
「ユウマ……
あなた、大丈夫?」
ユウマは頷いた。
「ええ。
ただ……少し考えることが多くて」
ガルドが腕を組む。
「そりゃそうだ。
あんな化け物を一撃で倒す女なんて、普通じゃねぇ」
エレナも同意する。
「ユウマを守るって言ってたわね。
どうしてあなたを……?」
ユウマは首を振った。
「分かりません。
でも……
あの人は敵じゃない。
それだけは確かです」
ガルドはため息をついた。
「まぁ、今はロイドが無事だっただけで十分だ。
あとは情報局に報告するだけだな」
ユウマは頷いた。
「ミレイユ局長に報告しましょう」
情報局の部屋に入ると、
ミレイユが机の上の書類を片付けていた。
「戻ったのね。
ロイドは?」
ガルドが答える。
「無事だ。
森で倒れていたところを見つけた」
ミレイユはユウマを見る。
「あなたの報告を聞かせて」
ユウマは森での出来事を順に説明した。
・ロイドは誰かに助けられた
・その“誰か”は女性
・赤い光を纏っていた
・魔物を一撃で倒した
・ユウマの名前を知っていた
・「ユウマを守る」と言った
ミレイユは黙って聞いていたが、
最後の部分で眉をひそめた。
「……ユウマを守る、ね」
エレナが言う。
「局長、何か知っているんですか?」
ミレイユは首を振った。
「いいえ。
ただ……気になるわね」
ガルドが言う。
「局長、あの女は敵じゃねぇ。
ロイドを助けたし、ユウマを守った」
ミレイユはユウマに視線を向けた。
「ユウマ。
あなたは……その女性に“見覚え”は?」
ユウマは即答した。
「ありません。
でも……
どこか懐かしい感じがしました」
ミレイユは目を細めた。
「懐かしい……?」
ユウマは頷いた。
「ええ。
初めて会ったはずなのに……
なぜか“知っている”ような感覚がありました」
ミレイユはしばらく考え込んだ。
「……ユウマ。
あなたは今後、王城内での行動に気をつけなさい」
ユウマは驚いた。
「どうしてですか?」
ミレイユは静かに言った。
「あなたを“守る”と言った女性がいるということは……
あなたを“狙う”者もいるということよ」
エレナが息を呑む。
「狙う者……?」
ミレイユは頷いた。
「王国の内部に……
あなたを排除したい者がいる可能性がある」
ガルドが叫ぶ。
「なんだと!?」
ミレイユは続けた。
「ユウマ。
あなたは事件を追っている。
それが誰かにとって都合が悪いのかもしれない」
ユウマは拳を握った。
(俺を……狙う者がいる……?
だからあの女性は……俺を守った?)
ミレイユは言った。
「ユウマ。
あなたはしばらく私の監視下に置くわ。
安全のためよ」
ユウマは頷いた。
「分かりました」
エレナが言う。
「私もユウマを守るわ。
何があっても」
ガルドも笑った。
「俺もだ。
お前を狙う奴がいるなら、ぶっ飛ばしてやる」
ユウマは二人に感謝した。
(俺は……一人じゃない)
だが同時に、
胸の奥に不安が広がっていく。
(俺を守ると言った女性……
あの人は何者なんだ?
どうして俺を知っている?
そして……
俺を狙う者とは誰だ?)
王城の空気は、
確実に変わり始めていた。
ユウマはまだ知らない。
この日を境に、
王国の“闇”が本格的に動き出すことを。




