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第14話 森のざわめき──迫る気配

ロイドを保護したあと、

ユウマたちは泉のそばで一度休憩を取っていた。


ロイドはまだ顔色が悪いが、

意識ははっきりしている。


ガルド教官が言う。


「ロイド、お前を助けた“女性”について、

 もう少し詳しく聞かせてくれ」


ロイドはゆっくりと頷いた。


「……はい。

 顔は見えませんでした。

 ただ……声は優しくて……

 どこか悲しそうでした」


エレナが眉をひそめる。


「悲しそう……?」


「はい。

 まるで……

 “誰かを失った人”のような声でした」


ユウマは胸の奥がざわつくのを感じた。


(悲しそうな声……

 ロイドを助けた理由は何だ?)


ロイドは続けた。


「それに……

 その女性は、私の傷を治してくれました」


エレナが驚く。


「治した……?

 治癒魔法を使ったの?」


ロイドは首を振った。


「魔法というより……

 “光”でした。

 赤い光が私の体を包んで……

 気づいたら痛みが消えていたんです」


ガルドが腕を組む。


「赤い光で治癒……

 そんな魔法、聞いたことがねぇ」


ユウマは静かに言った。


「……その女性は、

 ロイドを傷つけるつもりはなかったんですね」


ロイドは頷いた。


「はい。

 むしろ……守ってくれたように感じました」


エレナがユウマを見る。


「ユウマ……

 あなた、何か思い当たることがあるの?」


ユウマは首を振った。


「いえ……

 ただ、気になることが多すぎます」


その時――

森の奥から、

風が吹き抜けた。


だがその風は、

ただの風ではなかった。


木々がざわめき、

葉が震え、

空気が一瞬で冷たくなる。


ガルドが剣を構える。


「……来るぞ」


エレナも身構える。


「魔物……?」


ユウマは違和感を覚えた。


(魔物の気配じゃない……

 もっと静かで……

 もっと強い)


森の奥から、

ふわりと赤い光が漂ってきた。


ロイドが震える声で言う。


「……この光です。

 私を助けたのは……この光でした」


エレナが息を呑む。


「じゃあ……

 この光の主が、ロイドを……?」


ガルドがユウマを見る。


「ユウマ、お前はどう思う?」


ユウマは赤い光を見つめた。


「……この光は、俺たちを“誘っている”」


ガルドが眉をひそめる。


「誘ってる……?」


「はい。

 敵意はありません。

 むしろ……“会いに来い”と言っているように感じます」


エレナが不安そうに言う。


「でも……危険じゃないの?」


ユウマは静かに答えた。


「危険かどうかは分かりません。

 でも……

 この光の主は、ロイドを助けた。

 それだけは事実です」


ガルドは剣を収めた。


「なら、行くしかねぇな」


ロイドが言う。


「私はここで待っています。

 もう歩けませんので……」


エレナが頷く。


「ロイド、ここは安全よ。

 さっきの光が守ってくれた場所なんだから」


ロイドは微笑んだ。


「はい……

 お気をつけて」


ユウマたちは赤い光の後を追い、

森のさらに奥へと進んだ。


森は深くなるほど、

空気が変わっていった。


風が止み、

鳥の声も消え、

ただ静寂だけが広がる。


エレナが小声で言う。


「……怖いくらい静かね」


ガルドも周囲を警戒しながら言う。


「魔物の気配がねぇ。

 まるで……

 “何かが全部追い払ってる”みたいだ」


ユウマは赤い光を見つめた。


(この光……

 俺たちを導いている)


光は一定の距離を保ちながら、

森の奥へと進んでいく。


しばらく歩くと、

突然、地面が揺れた。


「っ……!」


エレナが踏ん張る。


「地震……?」


ガルドが首を振る。


「違う……

 “魔力の揺れ”だ」


ユウマは地面に手を触れた。


(……強い魔力が近づいている)


赤い光が急に強く輝いた。


「……!」


ユウマは思わず目を細めた。


光は、

まるで“警告”するように揺れている。


エレナが言う。


「ユウマ……

 この先に何かいるの?」


ユウマは頷いた。


「はい。

 強い魔力です。

 でも……敵意は感じません」


ガルドが剣を握りしめる。


「どっちにしろ、覚悟はしておけ」


ユウマは深呼吸した。


(この先に……

 ロイドを助けた“女性”がいる)


赤い光が森の奥へと進む。


ユウマたちはその後を追った。


そして――

森の奥に、

ぽっかりと開けた空間が現れた。


そこは、

まるで“誰かが意図的に作った”かのように

円形に木々が開いている。


エレナが息を呑む。


「……ここ……」


ガルドも驚いた。


「魔力の気配が……濃い」


ユウマは前へ進んだ。


(ここだ……

 この場所に……

 “彼女”がいる)


赤い光が、

ユウマの目の前で止まった。


そして――

ゆっくりと形を変え始めた。


エレナが叫ぶ。


「ユウマ、下がって!」


ガルドも剣を構える。


「来るぞ!」


だがユウマは動かなかった。


(この光……

 俺を傷つける気はない)


光は人の形を作り、

輪郭がはっきりしていく。


そして――


女性の姿が現れた。


長い髪。

白い肌。

赤い光を纏った、

静かな佇まい。


ユウマは息を呑んだ。


(……この人が……

 ロイドを助けた女性……)


女性はゆっくりと顔を上げた。


その瞳は――

深い赤色に輝いていた。


エレナが震える声で言う。


「……人間じゃ……ない……?」


ガルドが剣を構える。


「お前は……何者だ!」


女性は静かに口を開いた。


「……あなたが……ユウマですね」


ユウマの心臓が跳ねた。


(俺の名前を……知っている)


女性は一歩前へ進み、

柔らかく微笑んだ。


「初めまして。

 私は――」


その声は、

ロイドが言っていた通り、

優しく、どこか悲しげだった。


「――あなたを助けに来ました」


森の空気が震えた。


ユウマは確信した。


(この人が……

 ロイドを助けた“女性”)


そして――

この出会いが、

物語を大きく動かすことになる。

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