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第13話 森の奥──囚われの騎士

赤い光に導かれ、

ユウマたちは森の奥へと進んでいった。


森は深くなるほど静かになり、

風の音すら消えていく。


エレナが不安そうに呟いた。


「……まるで、森全体が息を潜めているみたい」


ガルド教官も剣に手をかけたまま言う。


「魔物の気配がねぇ。

 こんな森、普通じゃねぇぞ」


ユウマは地面に目を向けた。


(……足跡が増えている)


「教官、ここ……ロイドの足跡が二つあります」


ガルドが覗き込む。


「二つ……?」


「はい。

 一つはロイド本人のもの。

 もう一つは……“誰かに支えられた”跡です」


エレナが息を呑む。


「支えられた……?

 じゃあロイドは怪我をして……?」


ユウマは首を振った。


「違います。

 これは“歩かせてもらっている”足跡です」


ガルドが目を細める。


「歩かせてもらっている……?」


「はい。

 ロイドは自分の意思で歩いています。

 ただ、誰かが横で支えている」


エレナは驚いた。


「じゃあ……ロイドは敵に連れ去られたんじゃなくて、

 “誰かに助けられている”ってこと?」


ユウマは頷いた。


「その可能性が高いです」


ガルドは腕を組んだ。


「助けられてる……?

 じゃあロイドはどこへ向かってるんだ?」


ユウマは森の奥を見つめた。


「……この先です」


赤い光が、

まるで答えるように揺れた。


森の奥へ進むと、

突然、視界が開けた。


そこは小さな泉がある空間で、

木々の間から光が差し込んでいる。


エレナが驚きの声を上げた。


「……綺麗……」


ガルドも息を呑む。


「こんな場所が森の中に……?」


ユウマは泉のそばに目を向けた。


「……いた」


泉のそばに、

鎧を脱いだロイドが座り込んでいた。


顔色は悪いが、

意識はある。


エレナが駆け寄る。


「ロイド! 大丈夫!?」


ロイドはゆっくりと顔を上げた。


「……エレナ……?

 ガルド教官……?

 それに……ユウマ殿……」


ガルドが肩を貸す。


「無事か?」


ロイドは弱々しく頷いた。


「はい……

 私は……“助けられました”」


ユウマは静かに言った。


「やっぱり……誰かに支えられていたんですね」


ロイドは驚いたようにユウマを見た。


「どうして……?」


「足跡を見れば分かります」


ロイドは少し笑った。


「さすが……探偵殿ですね」


エレナが尋ねる。


「ロイド、あなたを助けたのは誰なの?」


ロイドは泉の奥を見つめた。


「……分かりません。

 顔は見えませんでした。

 ただ……

 “女性の声”がしました」


ユウマの心臓が跳ねた。


「女性……?」


ロイドは頷いた。


「はい。

 優しい声でした。

 『ここにいれば安全です』と……

 そう言って、私をここまで連れてきたのです」


ガルドが眉をひそめる。


「女性……?

 森の中にそんな奴がいるのか?」


ロイドは続けた。


「それに……

 その女性は“赤い光”を纏っていました」


エレナが息を呑む。


「赤い光……!」


ガルドがユウマを見る。


「ユウマ、お前……何か知ってるのか?」


ユウマは泉の奥を見つめた。


(赤い光……

 女性の声……

 ロイドを助けた……)


ユウマは静かに言った。


「……その女性は、

 “敵”ではありません」


エレナが驚く。


「どうしてそう言えるの?」


ユウマは泉の水面を見つめた。


「ロイドを助けた。

 傷も治している。

 そして……

 俺たちをここへ導いた」


ガルドが言う。


「じゃあ……味方ってことか?」


ユウマは首を振った。


「味方かどうかは分かりません。

 でも……

 “敵ではない”」


ロイドが言う。


「その女性は……

 最後にこう言いました」


ユウマは息を呑んだ。


「なんと言っていましたか?」


ロイドはゆっくりと答えた。


「『彼を……ユウマを……守らなければ』と」


エレナが驚愕する。


「ユウマを……守る……?」


ガルドも目を見開いた。


「おいユウマ、お前……

 なんでそんなこと言われてんだ?」


ユウマは答えられなかった。


(俺を……守る?

 どうして……?)


その時――

泉の奥から、

ふわりと赤い光が漂ってきた。


エレナが剣を構える。


「また……!」


ガルドも身構える。


「来るぞ!」


だがユウマは一歩前に出た。


「待ってください。

 この光は……敵じゃありません」


赤い光はユウマの前で止まり、

ゆっくりと揺れた。


まるで――

挨拶をするように。


ユウマは静かに言った。


「……あなたがロイドを助けたんですね」


光は、

肯定するように強く輝いた。


ガルドが驚く。


「ユウマ、お前……光と話してるのか?」


ユウマは頷いた。


「ええ。

 なんとなく……分かるんです」


エレナが言う。


「じゃあ……この光の主は……?」


ユウマは泉の奥を見つめた。


「……この光の主は、

 “俺たちを敵視していない”」


ガルドが息を呑む。


「じゃあ……誰なんだ?」


ユウマは静かに答えた。


「分かりません。

 でも……

 “会いに来る”つもりなんだと思います」


赤い光は、

まるで返事をするように揺れた。


そして――

森の奥へと消えていった。


ユウマは胸の奥に、

奇妙な感覚を覚えていた。


(この光の主……

 俺を知っている……?)


ロイドは言った。


「ユウマ殿……

 その女性は、あなたの名前を知っていました」


ユウマは息を呑んだ。


「……俺の名前を?」


ロイドは頷いた。


「はい。

 『ユウマを守らなければ』と……

 確かにそう言いました」


エレナがユウマの腕を掴む。


「ユウマ……

 あなた、狙われてるんじゃなくて……

 “守られてる”の?」


ユウマは答えられなかった。


ただ一つだけ確信があった。


(この光の主……

 俺を知っている。

 そして……

 俺に会いに来るつもりだ)


森の奥で、

何かが静かに動き始めていた。

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