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第12話 森の入口──残された痕跡

王城西塔での調査を終えたユウマたちは、

そのまま城外の森へ向かった。


朝の光が差し込む森は、

本来なら鳥の声や風の音が響くはずだった。


だが――


「……静かすぎるな」


ガルド教官が剣に手をかけた。


エレナも周囲を警戒しながら言う。


「魔物の気配が……ほとんどないわ」


ユウマは森の空気を吸い込んだ。


(……重い。

 まるで何かが“押しつぶしている”みたいだ)


森の入口には、

騎士たちが簡易の警戒線を張っていた。


「ガルド教官、霧島殿。

 ここから先は危険です」


警備の騎士が言う。


「昨夜から、森の奥で“奇妙な光”が見えたとの報告がありまして……」


ユウマは眉をひそめた。


「奇妙な光……?」


「はい。

 赤い光が、森の奥で揺れていたそうです」


ガルドがユウマを見る。


「赤い光……

 ロイドの失踪現場と同じだな」


ユウマは頷いた。


「行きましょう。

 ロイドはまだ生きています」


エレナが言う。


「どうしてそう言い切れるの?」


ユウマは森の奥を見つめた。


「……直感です。

 でも、間違っていないと思います」


ガルドは笑った。


「お前の直感は当てになる。

 行くぞ」


三人は森の中へ足を踏み入れた。


森の中は薄暗く、

木々の間から差し込む光が揺れている。


ユウマは地面を観察しながら歩いた。


(……足跡がある)


「教官、ここ……ロイドの足跡です」


ガルドが覗き込む。


「本当だ。

 だが、歩幅が不自然だな」


ユウマは頷いた。


「はい。

 普通の歩き方じゃない。

 “引きずられた”ような跡です」


エレナが息を呑む。


「じゃあ……ロイドは誰かに連れて行かれたの?」


「その可能性が高いです」


ユウマは足跡を追いながら、

森の奥へ進んだ。


しばらくすると――

地面に何かが落ちているのが見えた。


「これは……」


エレナが拾い上げた。


「ロイドの……手袋?」


ガルドが言う。


「血はついていないな」


ユウマは手袋を観察した。


(……指の部分が少し裂けている)


「教官、これは“抵抗した跡”です」


ガルドが目を細める。


「ロイドは戦ったのか?」


「はい。

 でも……相手はロイドよりも“上”です」


エレナが不安そうに言う。


「魔物……?」


ユウマは首を振った。


「違います。

 魔物ならもっと荒い傷になります。

 これは……“人間の手”です」


ガルドが驚く。


「人間……?」


「はい。

 ロイドは“人間に襲われた”可能性が高いです」


エレナが震える声で言う。


「じゃあ……犯人は王国の内部の人間……?」


ユウマは静かに言った。


「まだ断定はできません。

 でも、ロイドは“森の奥へ連れて行かれた”」


その時――

森の奥から、

ふわりと赤い光が漂ってきた。


エレナが剣を構える。


「なに……?」


ガルドも身構える。


「魔力か……?」


ユウマは光を見つめた。


(……昨日の塔で見た光と同じだ)


赤い光は、

ユウマの前で止まり、

ゆっくりと揺れた。


「……誘導している?」


ユウマは呟いた。


ガルドが驚く。


「誘導……?」


「はい。

 この光は“俺たちを導いている”」


エレナが言う。


「罠じゃないの?」


ユウマは首を振った。


「罠なら、もっと攻撃的な魔力になります。

 これは……“案内”です」


ガルドは剣を収めた。


「なら、ついていくしかねぇな」


赤い光は森の奥へ進んでいく。


ユウマたちはその後を追った。


しばらく進むと、

森の中にぽっかりと開けた場所があった。


中央には――

ロイドの鎧の一部が落ちていた。


エレナが駆け寄る。


「ロイドの……胸当て!」


ガルドが言う。


「血は……ついていないな」


ユウマは胸当てを手に取り、

裏側を確認した。


(……魔力の痕跡がある)


「教官、ここ……魔力で“外された”跡です」


ガルドが驚く。


「魔力で鎧を外した……?」


「はい。

 ロイドは“殺されていません”。

 鎧だけ外されて、どこかへ連れて行かれた」


エレナが安堵の息を吐く。


「よかった……」


ユウマは森の奥を見つめた。


(ロイドは生きている。

 そして……

 この赤い光は、俺たちを“ロイドの元へ”導いている)


その時――

赤い光が強く輝いた。


「……っ!」


ユウマは思わず目を細めた。


光は、森のさらに奥を指し示すように揺れた。


ガルドが言う。


「ユウマ、どうする?」


ユウマは深く息を吸った。


「行きます。

 ロイドは……この先にいます」


エレナが頷く。


「私たちも一緒よ」


三人は森の奥へと進んだ。


赤い光は、

まるで“道しるべ”のように揺れている。


(ロイド……

 そして……

 この光の主は誰だ?)


ユウマは胸の奥に、

微かな不安と期待を抱きながら歩き続けた。


森の奥で待つものが、

“魔物”なのか

“人間”なのか

それとも――


ユウマはまだ知らない。


だが確かに、

物語は大きく動き始めていた。

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