表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しがライバルなんだが!!?  作者: 櫻木サヱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/26

20話 約束のステージ

夜の空は、まるでステージの幕が上がる瞬間を祝福するように、澄み渡っていた。

風は静かで、会場の外にはもう、観客の歓声が響いている。

その音が、鼓動と同じリズムで胸の奥を叩いていた。


――ここまで、長かった。


練習のたびにぶつかって、張り合って、競い合ってきた。

推しであり、同時にライバルだったその人と歩んだ道は、まっすぐなんかじゃない。

たくさんのすれ違いと、言えなかった言葉と、譲れない夢があった。


「……緊張してる?」

袖口からふと聞こえた声に、顔を上げる。

ステージ袖で、同じ衣装に身を包んだ**みなと**が、少しだけ笑っていた。

あの挑むような目つきはもうない。かわりに、同じ夢を見る者の目だ。


「当たり前でしょ。ずっとこの日のために、全部賭けてきたんだから」

「ふふっ……だよな。オレも」


彼の手が、そっと差し出された。

その一瞬、過去の記憶がフラッシュバックする。

最初のオーディションの日。

舞台裏で見た彼の背中に「絶対、追いついてやる」って決意したあの日。

勝ちたい。認められたい。ただの“推し”で終わりたくなかった。


震える手で、その手を握り返す。

握った手の中に、すべての時間と想いが詰まっていた。


「負けないからね」

「いいじゃん。いつもみたいにさ、全力でぶつかろうぜ」


ドラムのリズムが、遠くから鳴り始めた。

ステージに呼び込まれる時間は、あとわずか。

照明スタッフの合図で、まばゆい光がステージ上を染めていく。


――いよいよだ。


スポットライトの向こうに広がる客席。

見慣れた光景のはずなのに、今夜はまるで違って見えた。

歓声が波のように押し寄せて、空気を震わせる。

胸の奥にたまっていた不安が、すべて音に溶けて消えていく。


「……行こう、湊」

「おう。最後まで、走りきろう」


二人並んで一歩踏み出す。

ステージに足を踏み入れた瞬間、まぶしい光に包まれた。

心臓の鼓動が、観客の歓声と溶け合う。

あの日、交わした約束。

――いつか同じステージに立とう。

その夢が、今、現実になった。


湊の横顔が、スポットライトに照らされる。

負けたくない。でも、隣に並べたことが何よりも嬉しかった。

ライバルで、憧れで、今は——

かけがえのない仲間だ。


マイクを握る手に、力を込めた。

声を出す瞬間、すべての過去と未来が交差する。

この夜が、終わりじゃない。ここが、ふたりの物語の“はじまり”だと分かっていた。


「——行こう、約束のステージへ!」


歓声が爆発した。

まばゆい光と、心を貫く音と、止まらない高鳴り。

ふたりの視線が交わった瞬間、世界はステージの上に凝縮された。


これまでの涙も笑顔も、全部、この瞬間のためにあった。

そして、まだ見ぬ未来へと続いていく。

ライバルだったふたりが、今、同じ夢を歌う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ