19話 止まらない鼓動
次の日の朝。
校門の前には、前夜のステージを観た生徒たちがざわざわと集まっていた。
「昨日のあのライブ、ほんとヤバかったよな!」
「葵と蓮、ペアでトレンド入りしてるって!!」
そんな声が耳に入るたびに、葵の心臓はまたドキッと跳ねた。
(……トレンド入りって、嘘でしょ)
スマホを開くと、画面いっぱいに拡散されている二人のステージ写真。
笑顔、ダンス、目を合わせる瞬間――
すべてが、昨日の熱を蘇らせる。
「おはよ」
不意に背後から声がして、振り返るとそこに蓮が立っていた。
制服の第一ボタンを外して、少しだけ気怠そうな表情。
でも、その目が笑っているのがわかる。
「昨日のこと、もうネットでバズってるよ」
「うん……見た」
「……なんか、すげぇな。俺たち」
その言い方が、妙にくすぐったくて、葵は思わず視線をそらした。
(やめてよ……朝からそんな顔しないでよ……)
蓮はそんな葵の横に並び、歩き出す。
足音が重なるたびに、昨日の夜の“約束”が頭の中で蘇る。
――相棒として進む。
ライバルじゃなく、一緒に前を向く。
それだけで、今までとはまるで違う景色に見えた。
風の匂いも、通学路も、全部がちょっと特別になっていく。
「なぁ」
蓮がふいに立ち止まる。
「今度、ちゃんと練習しようぜ。二人で。次のステージ……もっとすごいの見せよう」
その言葉に、心の奥がぎゅっと高鳴る。
昨日のあの光を、もっと遠くへ――そう思える瞬間だった。
「……うん。負けないよ。相棒でも、勝負は勝負だから」
「ははっ、そこが葵だよな」
笑い合うふたりの距離は、確かに昨日より少しだけ近い。
止まらない鼓動は、夢の始まりのサインだった。




