15話光の中へ
ステージの幕が、ゆっくりと開き始めた。
一歩踏み出すたび、足元から伝わる震えと、観客席からのざわめきが混ざり合って、心臓の鼓動がどんどん速くなる。
葵は深呼吸をひとつ。
目の前に広がるのは、真っ白なスポットライトと、満員の客席。
その光の中へ飛び込む瞬間――何度リハーサルしても、慣れることなんてできなかった。
「葵、大丈夫?」
控えの位置で声をかけてきたのは、仲間の美羽。
彼女の声が、心の奥の不安を少しだけとかしてくれる。
「うん、大丈夫……絶対、負けない」
唇をぎゅっと噛みしめ、拳を握る。
ステージの反対側には、蓮の姿があった。
ライトに照らされた横顔は、信じられないほど綺麗で――
かつて、憧れていた“推し”そのものだった。
だけど今は違う。
彼はライバル。
同じステージに立つ、越えるべき相手。
(私、負けないから)
司会の声が響く。
「次のステージは――この学園の二大スターによる、スペシャルパフォーマンスです!!」
歓声が爆発した。
客席からのライトが揺れ、スマホの画面が星のように瞬く。
その光の中へ、葵は一歩踏み出す。
――その瞬間、心の奥で“何か”がはじけた。
音楽が流れ出し、舞台の上に熱が満ちていく。
葵の視界には、蓮の背中があった。
いつも見上げていたその背中を、今度こそ――追い越す。
「いくよ、蓮!」
「来いよ、葵!」
ふたりの声が交わると、スポットライトがさらに強く輝いた。
まるで夜空に、朝が差し込むように――




