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推しがライバルなんだが!!?  作者: 櫻木サヱ


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13話 雨の夜、傘の中

練習を終えるころには、すっかり外は夜になっていた。

スタジオの窓越しに見える街の灯りが、雨に滲んでキラキラと輝いている。

「うわ……ガチ降りじゃん」

瑞希が呟くと、律が無言で傘を差し出した。


「……一本しかねぇけど、どうする?」

「え、ちょっ、まさか――」

「帰れねぇだろ、濡れて」

そう言って当然のように傘を広げる律。


瑞希の胸がドクンと鳴った。

(ちょっと……近いじゃん……!)


仕方なく肩を寄せると、律の体温がすぐそこにある。

雨の音が、やけに静かに感じた。



「……なあ」

律がぽつりと呟いた。

「お前、あの夜……ステージの時、俺のことどう見てた?」


「は? いきなりなに」

「気になっただけ」

律は前を見たまま、少しだけ口元をゆるめる。


瑞希は視線を落とし、小さく息を吐いた。

「……めっちゃ、ムカついてた」

「は?」

「だってさ、カッコよすぎたんだもん」


律が一瞬、足を止めた。

「……お前、今さらそういうこと言うなよ」

「へっ?」


傘の中の空気が、ふいに熱を帯びる。

瑞希の頬がじんわりと赤く染まり、律もわずかに目をそらした。

(やば……心臓、うるさい……)



コンビニの前で一度、立ち止まる。

「送ってく」

律が当然のように言う。


「い、いいよ!家近いし!」

「夜道だし、雨だし」

「……ありがと」


素直にお礼を言うと、律は「おう」と短く返した。

それだけなのに、胸の奥がじんと温かくなる。



家の前に着いたとき、雨は少しだけ弱まっていた。

瑞希はドアの前で立ち止まり、傘を律に返す。

「……ありがと、律」

「別に」


それだけのやり取りなのに、なぜか名残惜しい。

夜の雨音がふたりの沈黙を優しく包んでいた。


律が小さく笑った。

「次の勝負も――負けねぇからな」

「こっちこそ!」


瑞希も笑い返す。

その瞬間、ふたりの心の距離は、ほんの少し近づいていた。


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