11話 リベンジの予感
数日後。
街のざわめきは、まだあの夜の熱を引きずっていた。
SNSでは、瑞希と律のステージが話題の中心になっている。
「このふたり、マジで最高すぎた!」
「ライバル同士のあの目線、鳥肌だった……」
「次の対決、早く見たい!!」
ファンたちの熱は冷めるどころか、ますます高まっていた。
瑞希はカフェの窓際に座り、スマホを見つめながら苦笑した。
「……すごいことになってんな、これ」
タイムラインは自分たちの写真と動画で埋め尽くされている。
「“ライバル”って言葉、便利だな……」
ふと呟いた声には、少しだけ照れくささが混じっていた。
◆
「よう、話題の人」
不意に声をかけられて、瑞希は顔を上げた。
そこに立っていたのは――律だった。
ラフなパーカー姿。いつもより柔らかい笑顔。
「……なんでいるの」
「いや、たまたま通っただけ」
嘘っぽい言い方に、瑞希は目を細めた。
「……絶対、偶然じゃないでしょ」
「さぁ、どうだかな」
律は瑞希の向かいに勝手に座り、コーヒーを一口。
「にしても……すげぇよな、俺たち」
「なにが」
「だって、もう次の大会のエントリー募集始まってるんだぜ」
瑞希の手が、止まった。
「……え、もう?」
「“決戦リベンジマッチ”だとさ。主催も完全に煽ってきてる」
スマホを見せられると、大会の告知ページには
《伝説の一夜、再び。今度こそ決着を――》
と大きく書かれていた。
◆
瑞希はしばらく無言で画面を見つめていたが、やがて――
「……やるよ」
と、まっすぐ言った。
律がニッと笑う。
「だろうな。俺もだ」
その笑顔に、瑞希の胸の奥がじんわりと熱くなる。
「次は、あんたに負けないから」
「ハッ、こっちのセリフ」
テーブル越しに、視線がぶつかる。
あの夜と同じ――いや、それ以上に熱い何かが、ふたりの間に走った。
◆
外の街は夕焼けに染まっている。
戦いは終わっていない。
むしろここからが、本当の勝負だ。
“推しがライバル”なんて、もう他人事じゃない。
瑞希にとって律は、ただの敵でも、ただの憧れでもなく――
心の奥を揺らす存在になっていた。




